3人に1人!?50歳以上は気をつけたい「帯状疱疹」

【医師が解説】名前は聞いたことがあるけれど、くわしくは知らないという人が多い「帯状疱疹」。実は日本の成人のおよそ9割は帯状疱疹の原因となるウイルスをもっているという身近な病気なのです。今回は、帯状疱疹が発症する原因と、予防法を解説します。

提供:一般財団法人阪大微生物病研究会

執筆者

清益功浩

All About「医師 / 家庭の医学」ガイド:清益功浩

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

発疹だけじゃなく強い痛みも!「帯状疱疹」ってどんな病気?

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名前の割に症状や原因が知られていない「帯状疱疹」

帯状疱疹といえば、名前くらいは聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。そのわりに、どんな病気か詳しく知っている人はあまりいないような気がします。

帯状疱疹になると、まず皮膚に神経痛のような痛みが起こり、その部分に水ぶくれや赤い発疹が帯状に出てきます。通常、強い痛みや皮膚の症状は体の片側だけに帯状に現れ、3~4週間続きます。また、症状は上半身に出ることが多く、最も多くみられるのは胸から背中にかけて。顔や首など目立つところに症状が出ることもあります。

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皮膚に水ぶくれや赤い発疹が帯状にあらわれます

痛みは、しびれとして感じる程度から、ピリピリ、ズキズキ、チクチク、針で刺されたようなものから、焼けるような強い痛みまで、人によってさまざまです。皮膚の違和感やかゆみとして感じられる場合もあります。

帯状疱疹になると、痛みのために仕事や家事に集中できなかったり、よく眠れないなど日常生活に支障をきたしたりすることがあります。なかには、失明や難聴、顔面麻痺など重篤な合併症を引き起こしてしまうことも。また、皮膚の症状が治った後も長期間にわたって痛みが続く人もいます。

帯状疱疹になってしまったら…

  • 痛みがひどくて、体を動かすのがつらい
  • 痛みが気になって家事や仕事に集中できない
  • 痛みのせいで、ぐっすり眠れない
  • 顔や首の発疹が気になり、外出がおっくうになる

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痛みで日常生活に支障をきたすこともあります。

「弱っているとき」は気をつけたい!原因は水ぼうそうと同じウイルス

帯状疱疹の原因は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)です。最初にこのウイルスに感染すると、水ぼうそうとして発症します。ところが、このウイルスは水ぼうそうが治った後でも体外に排除されずに、体内の神経節と呼ばれる神経の集まった部分に潜んでいるのです。時間が経って、加齢や病気、疲労、ストレスなどにより、ウイルスに対する免疫力が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、神経節から神経を伝わって皮膚に出てきて帯状疱疹として発症します。

日本では「あまり症状が強く表れなかったため自覚がない」という人を含めると、成人のおよそ9割が水ぼうそうにかかったことがあるといわれています(引用:国立感染症研究所感染症疫学センター, IASR. 2018; 39(8): 129-130.)。その人たちは体内にこのウイルスをもっているため、帯状疱疹を発症する可能性があります。

帯状疱疹は加齢などによる免疫力の衰えが目立つ50歳代から増加します。その後60代、70代と徐々に発症率は増加していき、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になると推測されるデータもあります。

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対象・方法:2009~2015年に宮崎県の43施設で帯状疱疹と診断された34,877例について、年代別、性別等に層別し、帯状疱疹の患者数、及び宮崎県の人口を母数として発症率を算出した。
Shiraki K. et al. Open Forum Infect Dis. 2017; 4(1): ofx007.より作図

どんな生活を送ればいい?「免疫力」を落とさない心がけとは

帯状疱疹の治療には抗ウイルス薬などが使われます。また、痛みを抑えるために鎮痛薬を使用する場合もあります。治療が遅れると合併症を起こしてしまう可能性もあるため、体の片側だけに皮膚のピリピリとした痛みや違和感、発疹が出た場合は、なるべく早く皮膚科に行きましょう。

予防法として心がけたいのは、免疫力を低下させないこと。規則正しい生活とバランスの取れた食事を心がけましょう。睡眠時間の確保につとめ、疲れたと感じたら休むこと。適度な運動などでストレスを解消するのもおすすめです。

帯状疱疹の予防にはワクチン接種という選択肢も

水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を上げるワクチンの接種も予防効果があります。帯状疱疹の予防ワクチンは主に50歳以上の方が対象です。

※ 予防接種の対象者等は、医療機関にご確認ください。

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帯状疱疹には予防するワクチンがあります

予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありません。しかし、たとえかかったとしても、症状が軽くすむというデータもあります。

接種は皮膚科、もしくは内科などで受けることができますので、まずはかかりつけの医療機関で相談をしてみましょう。こちらから病院を探すこともできます。

高齢になって帯状疱疹にかかると、完治するまでの間外出を控えるなどして運動量が落ちてしまいます。そうすると筋肉量が減り、少し動いただけで痛みを感じたり、思うように動けなくなったりして、どんどん動かない生活になってしまうこともあります。50歳を越えたら元気なうちに予防接種をしておくことも選択肢のひとつです。

帯状疱疹のワクチンについて詳しく知りたい方はこちら>>

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