かわいい我が子に今しかできない旅をさせよ! 好奇心を育む「ふるさとホームステイ」とは

「ふるさとホームステイ」をご存知でしょうか? 小学生~高校生を対象とした農山漁村での宿泊体験のことで、受け入れ体制の整備も各地で広がってきています。今回は、宮崎県「北きりしま」の大自然の中で、子どもたちが初めての農泊を体験! その様子をレポートします。

提供:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局

お話をうかがった方

河崎 環

All About「子育て」ガイド:河崎 環

コラムニスト・ライター。国内外の教育・家族問題に詳しく、世界の子育て文化や教育、時事、カルチャーまで多彩な執筆を続けており、エッセイや子育て相談にも定評がある。

子どもの経験値をグッと上げる「ふるさとホームステイ」

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「ふるさとホームステイ」は、自然に囲まれた環境での宿泊体験を通して、子どもたちの学ぶ意欲や自立心、生きる力を育むことを目的としていて、内閣官房・文部科学省・総務省・農林水産省・環境省の5省が連携して推し進めている取り組みです。2024年度までに取り組み人数を倍増し、小学生65万人、中学生75万人、高校生30万人が取り組むことを目指しています。

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(左上)宮崎県西部での農業・自然体験『北きりしま田舎物語』/(右上)長崎県北西部での農村・漁村体験『松浦党の里ほんなもん体験』/(左下)岐阜県郡上市での自然体験『郡上・山と川の学校 冒険KID'S』/(右下)滋賀県日野市での農村生活体験『近江日野田舎体験』

「『いつでも何でもある』都会と違い、『いつでも何でもあるわけではない』自然環境で生活することで、子どもたちは大人への依頼心を捨て、自発的に考えて行動するようになります」

そう話すのは、All About子育てガイドの河崎環さん。自発的になることで、子どもたちの「自己」に輪郭が生まれると話します。

河崎さん「少子化や社会の多様性などが広がり、一人ひとりの個性や『自分が何者か』が問われる時代。すでに教育もその方向へと舵が切られ、知識以上に『自分がどう感じたか』を発信する力が子どもたちに求められています。自然の中で自発性を育み、他者との触れ合いによって自己発見できるふるさとホームステイは、これからを生きる子どもたちの成長に大きく貢献するでしょう」

実際にどんな体験ができる? 宮崎県の農家民泊体験に密着!

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受け入れ先の夏木政和さん・ひとみさんご夫婦


宮崎県と鹿児島県の県境に位置する北きりしま。田園や山岳風景が美しいこのエリアで、さまざまなスタイルの農家民泊を行っているのが、「北きりしま田舎物語」です。

今回は、北きりしま田舎物語で農泊を提供している「夢追い人のくらやみ道場」に、中学2年生の碧(あおい)くんと、その弟で小学5年生の逞(たく)くん、そして、同じく小学5年生の彩芭(いろは)ちゃんと、中学1年生の夕莉(ゆり)ちゃんの4人が訪れました。

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左上から時計回りに筥崎碧(はこざきあおい)くん、筥崎逞(はこざきたく)くん、後藤彩芭(いろは)さん、細田夕莉(ゆり)さん

ホストの夏木政和さんが運営する「夢追い人のくらやみ道場」では、北きりしまの豊富な自然環境を活かしたさまざまなプログラムを提供しています。

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まず1日目は、都会ではなかなかお目にかかれない五右衛門風呂の火焚き体験からスタート。それが終わると、山を散策しながらしいたけの収穫体験をして、そのしいたけをたっぷり使った夕ご飯をいただきます。その後は、お待ちかねの「暗やみ体験」。静かな山里の夜を散策しながら、鹿ウォッチングや満点の星空を満喫します。

朝の空気が気持ちいい、山の散策から始まる2日目。北きりしまの絶景を楽しんだら、「夢追い人のくらやみ道場」に併設された釣り堀で、ニジマス釣りに挑戦します。そして、夏木さんお手製の本格ピザ窯を使ったピザ焼き体験! 自分たちで釣ったニジマスと、自分たちで作ったピザを並べて、自給自足感あふれる自然のランチをいただきます。

「やったことがないので釣りが楽しみ!」「みんなと仲良くできるか不安……」

それぞれの想いを胸に、4人はどんな2日間を過ごすのでしょうか?

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まずは円になって自己紹介。「初めましての後はもう家族」と温かく迎える夏木さん。

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初対面の夏木さんご夫婦にみんな少し緊張気味……。


魚釣りやピザ焼きに興奮! はじめてだらけの2日間

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会ったばかりの4人は最初こそ緊張気味でしたが、時間の経過とともに、自然と距離が縮まった様子。特に夕食では、鹿やイノシシなどの野生の動物をグリルするといった貴重な体験もでき、子どもたちのテンションもアップ! 「鹿を食べるのは初めてだけど、おいしかった!」「しいたけが大きくてびっくりした」……慣れない環境でさまざまな「初めて」を共有することで、特別な絆が生まれたようでした。

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家族でキャンプをするという逞くんは火おこしが得意

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政和さんが数日前に仕留めた鹿をグリル。新鮮な鹿肉のおいしさにみんなびっくり!


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原木栽培のしいたけ。根元から上手に採るには少しコツが必要

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ひとみさんに教えてもらいながら作る「しいたけ南蛮」は肉厚で絶品


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釣りたてのニジマスは想像以上に元気……!

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慣れた手つきでニジマスを捌く政和さん。弱めの炭火でじっくり焼くことで骨まで食べられる仕上がりになるそう


「初めての魚釣りが楽しかった! 魚って、あんなに抵抗するんだなって、びっくりしました」

2日間の農泊体験が終わり、興奮気味にそう語ってくれたのは夕莉ちゃん。

また、地元は遊ぶ場所が少なく「都会に憧れていた」という彩芭ちゃんは、

「自然にはおもしろい遊びがたくさんあって、都会じゃなくてもいいやって思えました。家に帰ったら、お母さんと一緒にピザ作りをやってみたい」

と、笑顔を見せてくれました。また、「最初は知らない女の子と仲良くできるか不安だった」と話すのは、碧くんと逞くんです。

「一緒に時間を過ごすにつれて、『こういう子なんだ』ってお互い理解し合えたと思う。これからも友達として連絡をとっていきたいです」

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女子部屋の寝支度をする夕莉ちゃんと彩芭ちゃん。普段と違う環境でのお泊まりにワクワク

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こたつを囲んでみんなでババ抜き。1日目が終わるころにはすっかり緊張もほどけた様子


今回、お子さんを農泊体験に参加させた彩芭ちゃんのお父さんからは、こんな言葉をお寄せいただきました。

「正直なところ、娘を1人で参加させるのは不安でした。でもそんな心配をよそに、娘はすぐに周りに溶け込んだ様子で、ひと回り成長したように感じます。子どもは、親が思っているよりもたくましい。これをご覧になっている方も、ぜひ、この体験から得られる子どもの成長を楽しまれてはいかがでしょうか」

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ふるさとホームステイは、家族全員にとって忘れられない体験に

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子どものふるさとホームステイには、親にもメリットがあると河崎さんは話します。

河崎さん「ふるさとホームステイは、日々煮詰まりがちな親子関係に新鮮な風を吹き込み、家族全員にとっていい刺激になります。加えて、帰ってきた子どもたちがキラキラとした表情で語るふるさとホームステイの話からは、親もまた、子どものフィルターを通して自然環境を身近に感じることができるでしょう」

モノ消費よりコト消費が重視され、アクティブラーニングの視点が取り入れられつつある現代において、ふるさとホームステイで得る経験は大きな力になるはずです。

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河崎さん「例えば、ただ山を歩くだけでも、子どもにとっては発見の連続です。『ここは足場が悪いな』『友達、ちゃんとついてきているかな』……主体的に頭を動かし、心で感じる体験は、ただ能動的に先生の話を聞くだけの学校の授業では得られません。また、テレビやインターネットなどで聞きかじったのではないリアルな自然体験は、子どもたちに大きな驚きをもたらすだけでなく、『自分以外の何かを大切にしよう』という貢献意識の育成にもつながるのではないでしょうか」

現在、学校や地域での取り組みが主流となっている「ふるさとホームステイ」ですが、家族やグループ単位での参加を受け入れている地域もあります。受け入れ地域や団体によって、体験できることは実にさまざま。その内容は『子供の農山漁村体験支援サイト』でチェックすることができます。

「かわいい子には旅をさせよ」。ふるさとホームステイを通じて、子どもたちの生きる力を育んでみませんか。

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「ふるさとホームステイ」に密着!動画をチェック↓↓