ストレス社会の象徴? 心の病にもつながる胃の病気

“機能性ディスペプシア(FD)” という疾患をご存知ですか? 胃のもたれ、みぞおちの痛みなどが長く続く症状は、もしかするとその兆候かもしれません。治療が長引けば、心までむしばむ可能性も指摘されるこの病気について、All About『胃腸科・内科の病気』ガイドの今村甲彦さんに聞いてみました。

提供:株式会社 明治

お話をうかがった方

今村 甲彦

All About『胃腸科・内科の病気』ガイド:今村 甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。

原因がわからない胃の不快感…。それって “機能性ディスペプシア” かも!

胃の痛みを感じる女性

胃がむかむかする、みぞおちが痛い……。そんな症状はありませんか?


「胃の不調を訴えて病院で検査しても、胃には異常がないと診断された人も少なくはないでしょう」と、今村さん。確かに「胃のもたれ、みぞおちの痛みなどで診察を受けたけれど、原因が特定できなかった」という声は、一度ならずとも聞いた覚えがあります。

今村さん(以下敬称略)「以前は適切な病名がなかったため、このような場合、“神経性胃炎” や “ストレス性胃炎” などの診断がされていました。さらに大した病気ではないという認識が強く、軽視されがちだったように思います。それが近年、世界的にもこの病気の研究が進み、日本でも2013年に “機能性ディスペプシア(FD)” という正式な診断名が認められました。比較的、新しい疾患の概念と言えますね」

“機能性ディスペプシア”……? あまり耳慣れない病名ですが、実は日本では、健康診断を受診した人の11~17%にFDが見つかると言われているとか。そんなFDは、今村さんによれば、大きくふたつのタイプに分けられるそうです。

今村「ひとつは “食後愁訴症候群(PDS)” と呼ばれるもので、食後の胃のもたれ、早期満腹感といった症状があります。もうひとつは “心窩部痛症候群(EPS)” と呼ばれ、症状はみぞおちあたりの痛み、焼ける感じなどですね」

では、この病気にかかる原因は何なのでしょうか? 今村さんによると、「原因のひとつとして考えられるのはストレス」なのだそうです。

今村「ストレスにより、自律神経のバランスが崩れることでFDの症状が引き起こされます。現代はまさにストレス社会。人間関係や金銭面、仕事など、ひと昔前に比べ、ストレスとなる要因も格段に増加しています。また、FDに限ったことではありませんが、体調が悪いと抱える不安は大きくなるもの。病気に対して、将来に対して、あるいは家族に心配をかけることに対してなど、さまざまな不安があることでしょう。それがまたストレスとなり、さらに病気を悪化させてしまうことも。逆に不安の原因を解明することで、病気が軽減することもよくあります」

機能性ディスペプシア(FD)について、もっと詳しく >>

チェックリスト

もしかして、私もFD? そう思う方は、こちらでチェック! ひとつでも当てはまるなら、医療機関への相談も検討してください。

症状を改善する方法は? 治療法は確立されている?

ストレスが一因の病気 “機能性ディスペプシア(FD)” を診断されたことで、さらにストレスが高まる……。そんな悪循環は、ぜひとも避けたいところです。

今村「今まで “ストレスからくる胃の不調” として、医療サイドでも軽く見られていたというのも事実。でも、研究が進み、“異常がない” という診断から病気に認定されたことで、治療の幅が広がるだろうと期待されます。患者さんも、安心して治療を受けられるようになるでしょう」

まさしく、ストレスフルな現代社会の象徴とも言えそうなFD。この症状を改善するには、何をすればよいのでしょうか? 今村さんによると、「まずはこの病気について理解することが必要」なのだとか。

今村「FDは悪い病気ではありませんので、過度に心配しなくても大丈夫です。症状を改善するには、ストレスの軽減や、生活習慣の見直しが大切。簡単ではないですが、ストレスの原因をできるだけ遠ざけることのほか、規則正しい生活を心がけてください。それでも改善しない場合は症状に合わせた薬を使用しますが、いずれにしても医師と相談しながら治療法を決めていくほうがよいでしょう」

胃炎や胃潰瘍が気になるなら… >>

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生活習慣の見直しは、自律神経の乱れを改善するために必要。十分な睡眠や適度な運動、食べ過ぎと飲み過ぎを控えるといったことは、ぜひ実践してください。

最新の研究でわかった! 乳酸菌のチカラによる症状改善効果

ストレスの原因を遠ざけ、規則正しい生活を送る……。この2点なら、自分の心がけひとつでかなり改善できそうですね。そして最近の研究によると、乳酸菌のひとつである “ラクトバチルスガッセリー OLL2716(以下、乳酸菌OLL2716株)” の摂取が、“機能性ディスペプシア(FD)” の症状改善に効果があると認められたそうです。

その根拠となったのが、20〜64歳のFD患者106名を対象とした試験(※)。無作為に2グループに分け、一方には “乳酸菌OLL2716株” を含むヨーグルトを、もう一方には含まないヨーグルト(プラセボ)を1日1回(85g)、12週間摂取してもらうというものです。

このとき、FDの4症状(早期満腹感、食後の胃もたれ感、みぞおちの痛み、みぞおちの灼熱感)すべてがなくなる率(除去率)を4週間ごとに見たところ、摂取期間が長いほど除去率が高まったのだとか。12週間後には、“乳酸菌OLL2716株” を含むヨーグルト群の除去率は35.2%と、プラセボ群の約2倍という結果になりました。

FD主要4症状の除去率の経時変化

ベースライン期間ならびに試験食品摂取4週間後、8週間後、12週間後に、FDの症状のひどさについてアンケート調査を実施。各時点において、FD主要4症状すべての消失を経験した被験者のパーセンテージを除去率としています。群間比較はWilcoxonの準岩検定により実施。(出典:Digestion 2017;96:92-102)

※ピロリ菌に感染しておらず、治療を受けていない人を対象とした試験です。

今村「昔は、胃が無菌であることは常識とされていましたが、今では胃にも複数の細菌がいることが明らかになってきました。腸内細菌と病気は、近年、医学的にも非常に注目されている分野。この研究結果も、非常に興味深いものですね。腸内細菌を整えることは、病気の予防にも効果が期待できると思います。手軽に取り入れられる病気の予防法として、ヨーグルトなどで善玉菌の乳酸菌を摂取することは有効だと考えられるのではないでしょうか」

その他の試験結果も、症状改善の傾向が! >>

日常に取り入れやすいヨーグルトで、健やかな毎日を

ヨーグルトを食べる女性


「 “機能性ディスペプシア(FD” は、適切な治療を行うことで症状の軽減が期待できます」と、今村さん。

今村「原因不明の胃の不調は、FDかもしれません。不安なことがあるなら、まずは近くの医療機関に相談してみてはいかがでしょうか」

そこでFDと診断された場合は、適切な治療を受けた上で、生活習慣の見直しなどを行いましょう。また、日常に取り入れやすい “乳酸菌OLL2716株” を含むヨーグルトを食べることなどもおすすめします。あなたの辛い症状が、少しでも早く改善されますように。

もっと知りたい! 乳酸菌OLL2716株のチカラ >>