全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」を使って、 長く快適に暮らせる「長期優良住宅」を生涯の住まいに
日銀のマイナス金利政策の恩恵を受けて住宅ローンの低金利は続き、最長35年間、全期間固定金利の「フラット35」の金利も魅力的な水準に。さらに長期にわたる住宅ローンを払い終えた後でも、まだ数十年は快適に住めるという住宅も注目されています。その代表例が「長期優良住宅」。今回は「長く暮らせる家づくり」ガイドの大塚有美さんに、「長期優良住宅」のメリットなどについて話をうかがいました。 (フラット35には買取型と保証型の2種類がありますが、ここでは買取型について記載しています。)
提供:独立行政法人 住宅金融支援機構
お話をうかがった方

All About「長く暮らせる家づくり」ガイド:大塚 有美
大学卒業後、編集プロダクションに入社。料理や掃除など、生活に密着した雑誌、ムックの編集を手がけた後、一戸建て注文住宅の情報誌の編集部門へ転職。多数の建て主に接し、生活者、住む人の視点で、「いい家」とは何かを追求しながら編集業務を行う。10年間の勤務を経てフリーに。現在「住宅とその周辺」をテーマに雑誌などの原稿作成を中心に活動中。住む人、使う人の立場に立ってやさしく解説することを心がけている。
買い時との回答が大半のマイホーム市場。今後は金利上昇の懸念も

住宅ローンの低金利が続く中、「今はマイホームの買い時なのかどうか」といった質問に、大塚さんはこう答えるそうです。
大塚さん(以下敬称略)「会社の同僚が買ったとか、住宅ローンが低金利だからといった周囲の動向より、大切なのは本人や家族が『いま、本当に買いたいのか』という気持ちの部分。また、十分な頭金があるかどうかや、買ってから愛着を持てる家かどうかがとても重要なんです」
もちろん、そうした準備ができた人にとっては、「現在のような住宅ローンの低金利は頼もしい」と大塚さん。長期にわたって返済が続く住宅ローンの場合、金利が1%違うだけで総返済額も大きく変わります。ですから低金利が続く現在、この4月に住宅金融支援機構が発表した調査結果『平成29年度における住宅市場動向について』でも、一般消費者、ファイナンシャルプランナーともに「買い時」との回答が半数以上を占めるのも当然なのでしょう。
ただし、同調査で買い時と思う要因についての回答では、「マイナス金利政策による低金利」に加え、「今後は金利が高くなる見通し」という意見も上位。今は買い時だが、これから先は不透明と考えている人が多いことも分かります。
大塚「そうした考えの方にお勧めなのがフラット35のような全期間固定金利の住宅ローン。資金受取時に返済終了までの金利、返済額が確定するため、家計も管理しやすくなります。ずっと金利が変わらない安心感は大きな魅力でしょう」
高耐久性、耐震性、省エネ性など、長く快適に暮らせる物件が主流に

それでは物件選びで大切なことは何でしょうか。同調査では一般消費者による「住宅事業者選びで重視するポイント」は「建物の性能」がトップ。その中でも重視する点としては「高耐久性」72.3%で、これは前回調査67.0%より5ポイント以上アップしています。それから「耐震性」67.0%、「省エネルギー性」41.8%と続き、長持ちする住宅に関心が集まっているようです。
大塚「確かに35年の住宅ローンを返済し終えたら、マイホームにも寿命が来ていた……ではもったいない話です。ただ、私は単に長持ちするだけでなく『長く・快適に暮らせる住宅』を選んでほしいと考えています」
大塚さんによれば、「長く暮らすには住宅の基本性能、例えば高耐久性、省エネルギー性、耐震性などが、快適に暮らすには居住環境、メンテナンス、維持保全計画などが大切」なのだそう。
大塚「長く暮らすための要素と快適に暮らすための要素は、一部重なる部分と相反する部分があります。極論すれば、耐震性や断熱性の向上には窓を少なくする方法も考えられますが、それでは快適な住宅にはならないかもしれません。家そのものが長持ちするのはもちろん、住む人が長く暮らしたくなることも重要なのです」
こうした住宅の目安となるのが「長期優良住宅」なのだそう。では具体的に長期優良住宅は、どのような住宅なのでしょうか。
長持ち住宅の目安の一つ、所管行政庁認定の「長期優良住宅」とは
長期優良住宅はメンテナンスしながら長く使っていく、所管行政庁の認定を受けた質の高い住宅(※2)のことで、大きく分けて以下の4つの措置が講じられた住宅を指しています。
●長期に使用するための構造および設備を有していること
●居住環境などへの配慮を行っていること
●一定面積以上の住戸面積を有していること
●維持保全の期間、方法を定めていること
大塚「私も長く快適な家を求める方のご相談には、長期優良住宅を候補に挙げてきました。前述した物件選びの条件、高耐久性、省エネルギー性、耐震性、居住環境、メンテナンスの容易さなどは、すべて長期優良住宅の基準に含まれているのです」
その長期優良住宅の基準をいくつか紹介すると以下のようになります。
大塚「つまり長期優良住宅は『長く快適に暮らせる家』のわかりやすい基準とも言えるでしょう。しかも最近では住宅メーカーの標準仕様が、こうした基準を満たす性能であることも増えました。長期優良住宅が非常に選びやすくなっていると思います」
(※2)長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)の規定により認定の通知を受けた長期優良住宅建築等計画に基づき建築等が行われた住宅
(※3)住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)の規定による日本住宅性能表示基準
長期優良住宅の価格は?長い目で見れば割安になるケースも
とはいえ、こうした質の高い長期優良住宅は、それに満たない仕様の住宅と比べると価格が高めになる点は仕方ありません。
大塚「それは買う人の価値観次第ですが、長く快適に暮らせることを考えると、コスト面でも十分に検討に値すると私は思っています。例えば2,500万円の家を買って、30年後に建て替えが必要になるとしたら、取り壊しの費用に数百万円、建て替え費用に2,500万円がかかる計算。さらに建て替えのための引っ越しで手間やストレスが増えるでしょうし、何より大量の廃材は地球環境にも優しくありません。一方、長期優良住宅で60年間建て替えが必要ない場合、それらの費用や手間が軽減されるのです」
加えて省エネルギー性、メンテナンス性が良好なため、光熱費や補修費などを抑えることも期待できそうです。しかも長期優良住宅の場合、税の特例措置などによって購入時および購入後のメリットも。下の表は、長期優良住宅を建設して税の特例措置などを受けた場合の、一般住宅を建設したときと比べて、いくらお得になるのかを試算した表です。
大塚「長期優良住宅であれば、認定に厳しい基準があり、検査も行いますから、その点でも安心感がありますね。住宅の場合は、初期のコストだけで比較するのではなく、本当に質の高いものを選んでほしいと思います。そうすれば長く快適に暮らせますし、それが結果的に生涯コストの低減につながるはずです」
なお、長期優良住宅の認定を受けるには、一般的に第三者機関による技術的審査を経て所管行政庁に申請を行います。このためには審査手数料や申請手数料などが必要となります。
長期優良住宅は、住宅ローン「フラット35」でもお得に
長期優良住宅は、税の特例措置などだけでなく、住宅ローンもお得になります。「フラット35」には、省エネルギー性や耐震性などに優れた住宅について、一定期間金利を引き下げる「フラット35S」という制度があり、住宅の性能に応じて、当初10年間金利を引き下げる「金利Aプラン」と、当初5年間金利を引き下げる「金利Bプラン」があります。長期優良住宅は「金利Aプラン」に該当して、当初10年間、年0.3%金利が引き下げられます。下の表のとおり、例えば3,000万円の借入れであれば、通常のフラット35よりも約84万円お得になります。また、長期優良住宅の場合、資金の受取時に最長50年間の金利と返済額が確定する「フラット50」も利用できます。
大塚「私が、この4月のフラット35の制度改正で新たな特色として注目しているのは、長期優良住宅について、住宅ローンを引き継げる機能が加わったこと(アシューマブルローン)。暮らしている間にどうしても売却が必要になった場合、その住宅を購入する相手に住宅ローンを引き継ぐことができるのです。売る人は基本的に住宅ローンの残債を気にせずに済み、買った人は現在のような低金利で全期間固定金利の返済額で返していけるのですから、両者ともにメリットのある機能だと思います。それに長期優良住宅という品質の保証がある住宅なら、買い手も付きやすいのではないでしょうか」
フラット35の最新の金利情報、フラット35・フラット35Sの利用条件などはフラット35サイト(www.flat35.com)で確認を。