【前立腺がん】医師への情報の伝え方でその後の治療が変わる?
病気になれば誰しも、症状がなかなか改善しないと不安になるものです。たとえ前立腺がんのように治療がある程度長引くことを理解はしていても、本当にこの治療を続けてよいのだろうかと心配になったり、担当の医師は本当に自分の症状を正しく理解してくれているのだろうかと疑心暗鬼になることも。医師とのコミュニケーションを上手に取って、納得できる治療が受けられる方法を、All About 癌 ガイドの狭間先生に伺いました。
提供:ヤンセンファーマ株式会社
お話をうかがった方

大阪大学医学部卒。外科医をしながら薬局運営を行っている経験から、病院の外での患者さんの悩みや行動を目の当たりにしております。医学的な情報を分かりやすく解説し、医療と患者さんの橋渡しを行っていきたいと思っております。
「何をどう伝えればいい?」患者も医師も不安を感じている、診察時の会話

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「診察の際、医師に何を伝えていいのかわからない」「自分の症状をうまく伝えられない」と悩んでいる人は意外に多いものです。前立腺がんのように泌尿器科の病気の場合、「排尿や性機能のことを話題にするのはなんとなく恥ずかしい……」という気持ちにもなりがちです。また、そもそも排尿や性機能については極めて個人的な情報であるため、自分の状態が一般的な人と比べてどうなのか、という把握ができにくい場合もあるでしょう。
一方、医師の方でも、限られた診察時間の中で患者さん自身が感じている状態を正しく聞き出すためには、苦労を擁しているようです。
狭間さん(以下敬称略)「たとえば、『最近、調子はどうですか』と大きな質問を投げかけるだけでは、患者さんからすれば、医師が知りたいことが何なのかはわかりません。そこで、『最近はこういう患者さんが増えていますが、あなたはどうですか』『その他、おしっこのことで気になることはありませんか?』などと、ある程度答えを絞り込めるような質問をすることで、判断のポイントとなる事項を知ることができます。しかし、それが患者さんの状態のすべてを表しているとは限らないので、何度か診察と投薬を重ねながら、徐々に把握していくということになります」
また、医師との信頼関係がうまく築けていないと、さらに時間がかかってしまうと狭間さんは言います。
狭間「やはり、患者さんは医師を信頼してくれないとなかなかきちんとお話してくださいません。患者さんはいま、インターネットなどを介して多くの情報に接しています。そしてその情報は玉石混交であり、ともすれば目の前の医師よりももっと、良い医師がいるのではないかと疑心暗鬼になってしまうことが少なくありません」
医師、患者双方が正しく情報を共有できていないことでお互いが不安になり、その結果診断が長引き、それがまたお互いを不安にさせる……という悪循環になってしまうこともあるのです。
医師に情報を上手に伝えれば、「自分に合った」治療が受けられる
コミュニケーションがうまくいかないことは不安を増大させるだけでなく、実際の治療内容に影響を及ぼすこともあります。
ヤンセンファーマが泌尿器科医師120人を対象に行ったアンケート調査(※)では、「医師と患者間でよりコミュニケーションがとれていたら治療が変わっていたと感じた経験がある」と回答した医師が半数以上になった、との結果があります。
前立腺がんは進行が比較的ゆるやかながんということもあって、病気と付き合いながら生活を続けることがほとんどです。男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて発生し進行する前立腺がんには手術や放射線治療などさまざまな治療方法がありますが、なかでも薬物療法が有効とされ、多くの方が投薬により男性ホルモンを抑制する治療を受けています。しかしこの“ホルモン療法”は、続けているうちに徐々に効果が薄れてきてしまいます。
その際、抗がん剤、女性ホルモン剤、ステロイドなど数ある治療法のうち、次の選択肢として何を選ぶのか、それをいつから開始するのか、ということについては、医師が患者の現在の体調を正しく理解できていないと、よりよい判断ができません。
また、“ホルモン療法”で使われる薬には、急な発汗やのぼせといった女性の更年期障害に似た症状や体重増加などの副作用が出ることが認められているほか、しびれや吐き気、食欲不振、頭痛、勃起力の低下などを感じる人もいます。しかし、これらの症状が薬のせいなのか別の原因なのかの判断は、患者本人には難しいものです。そのため、すべてを医師に報告している人はあまり多くはないのではないでしょうか。
※ヤンセンファーマ株式会社「前立腺がんの薬物治療における医師-患者間のギャップ調査」
調査期間:2015年10月21日(水)~10月23日(金)
調査対象者:10名以上の前立腺がん患者(一次ホルモン療法以降の患者を含む)を診療している泌尿器科医師および、前立腺がん患者(一次ホルモン療法以降)

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狭間「診察に同行されたご家族の方がふともらした『何となく元気がない』とか『いつもと調子が少し違うような気がする』という言葉が、患者さんの状態を知るきっかけになることもあります。
がんの進行をくい止めると言うことももちろん大切ですが、そのために毎日の生活の質(QOL)が下がってしまっては、前向きに治療に向かい合うことができなくなります。
現在受けている治療の効果が今ひとつだった、あるいはちょっと気になる別の症状が出てきたので、処方されている薬を一時中断してしまった、といったようなことも伝えていただくと、薬の種類や量を見直すなど、毎日の生活を楽しみながら治療を進める方法を一緒に探ることができます」
狭間さんいわく、「前向きの文句」は、実は医師の知りたい情報のひとつでもあるそうです。怒られるのでは、と思って控えてしまう人もいるかもしれませんが、ぜひ、憶さず伝えていきたいものです。
『腺ノート』への記録や振り返りを通じて、本人も家族も症状を把握
ではいったい、どのようなことを、どんな風に伝えればよいのでしょうか。
狭間さんのおすすめは、毎日の体調の変化を表やグラフとして残すことだそうです。
狭間「食欲や体重などの情報は、全身状態の把握に役立ちます。また、痛みの程度や尿の回数などを記録しておくと、薬の効果について確認することができます。これらは、医師が次回の処方の内容を調整するときに役立つだけでなく、患者本人や家族が自分の症状を振り返るためにも有効です。
毎日つけようと思うことが負担になってしまう人は、まずは週1回でもかまいません。数字や状況の移り変わりが変化として見られると、気にするべき症状とそうでないことがよりよくわかるようになります」
計測した数字は、『腺ノート』のような専用のツールがあると、記録しやすくなります。

『腺ノート』は、食事量や便の様子に加え、痛みやしびれ、だるさといったその日の体調を4段階~5段階評価のチェック方式で手軽に記録できるようになっています。薬の記録のページでは処方されている薬とタイミングを登録しておくことができ、チェックすることで飲み忘れを防ぐことも。さらに、PSA、AST、ALTなどの検査値を記録しておくこともできます。
入力はパソコンやスマートフォンから簡単に行え(※)、記録はすべてクリックひとつでグラフ化できるので、受診日にグラフ画面などを印刷したものを医師に見せれば、前回の受診日からの変化が一目瞭然。短時間で、より正確に医師に体調を伝えることができます。
また、前回の受診日以降の心身の状態をマークで記録できるほか、日々気になることを記す覧があるのも嬉しいポイントです。医師に伝えようと思うことをあらかじめまとめておくことで、効率よく診察を受けられます。
(※)手書きの記録用紙もあります
適切な治療を受ければ、それまでと変わらない生活が送れることも
もし、治療途中で選択に迷ってしまった時や、違う医師の意見を聞いてみたいと思った時には「セカンドオピニオン」を受けることもできますが、その際にも『腺ノート』は役に立ちます。それまでの症状や治療による体調の変化が一目でわかるので、初めて会う医師にも、自分の状態を正確にわかってもらえるからです。
近年、前立腺がんの患者数は増加傾向にありますが、前立腺がんは予後が良く、適切な治療を行うことができれば、寿命を全うされる方も少なくありません。
医師と上手にコミュニケーションをとって、納得して治療を受けることができれば、長い治療期間をできるだけストレスなく過ごすことも可能となるでしょう。
前立腺がんとうまく付き合っていくために、『腺ノート』をぜひ活用してみてはいかがでしょうか。