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北太平洋の女王「氷川丸」が重要文化財に

山下公園に係留されている、日本郵船氷川丸。氷川丸は1930年にシアトル航路用に建造された貨客船で、1960年の引退後、1961年から横浜のシンボルとして係留されています。社会・経済史上における役割と造船・工芸技術上の価値を評価され、国の重要文化財に指定されました。竣工当時の面影を残すレトロな船内を見学してみましょう。

田辺 紫

執筆者:田辺 紫

横浜ガイド

重要文化財に指定された「氷川丸」

山下公園に係留されている「日本郵船氷川丸」(2016年8月17日撮影)

山下公園に係留されている「日本郵船氷川丸」(2016年8月17日撮影)

横浜のシンボルのひとつ、氷川丸。戦前の日本で建造され、現存する唯一の大型貨客船で、1961(昭和36)年から山下公園に係留保存されています。2016年、造船技術や客船の内装を伝える貴重な産業遺産として高く評価され、国の重要文化財に指定されました。「北太平洋の女王」と称され、いくつもの歴史の荒波を乗りこえてきた、氷川丸について紹介します。

戦前・戦中・戦後を駆け抜けた氷川丸の歴史

まずは、氷川丸の歴史について。横浜生まれの大型貨客船として、1930(昭和5)年に竣工。戦前はシアトル航路の貨客船として日本とアメリカの架け橋となり、秩父宮ご夫妻や喜劇王チャーリー・チャップリンなど、多くの著名人が乗船しました。

戦時中は病院船として、戦後は復員船・引き揚げ船として活躍、その後は再びシアトル航路に復帰しました。1960(昭和35)年に引退するまで、太平洋を254回横断、約2万5000人が乗船したと記録されています。1961年からは、横浜開港100周年記念事業の一環として山下公園に係留され、現在に至るまで、横浜のシンボルのひとつとなっています。
2008年4月25日、「日本郵船氷川丸」としてリニューアルオープン。セレモニーのようす(2008年4月撮影)

2008年4月25日、「日本郵船氷川丸」としてリニューアルオープン。セレモニーのようす(2008年4月撮影)


2006年12月25日、惜しまれながら一時営業を終了、大規模な改装工事が行われました。戦前の写真や資料を参考に、船内は竣工当時の姿に近い形に復元され、「日本郵船氷川丸」として、78歳の誕生日にあたる2008年4月25日にリニューアルオープンを迎えたのです。


竣工当時の姿を再現した氷川丸

氷川丸の見どころは、昭和初期に頂点を極めたとされる「アール・デコ様式」を盛り込んだインテリア。客室が見学できる「船客エリア」、乗組員の仕事場が紹介されている「乗組員エリア」、氷川丸の歴史が学べる「展示エリア」となっています。レトロな雰囲気が感じられる船内を見学してみましょう。

  • Bデッキ:豪華な一等船客エリアを見学
乗船(入場)口があるのがBデッキ。チケットを買って中に入ると、エントランスロビーになっています。

エントランスロビーでは、大画面映像と写真で氷川丸の歴史がダイジェストで見られます(2016年11月18日撮影)

エントランスロビーでは、大画面映像と写真で氷川丸の歴史がダイジェストで見られます(2016年11月18日撮影)


一等児童室:一等船客専用の遊戯室。天井下の壁面には、日本の子どもをモチーフにした絵が描かれています(2016年12月28日撮影)

一等児童室:一等船客専用の遊戯室。天井下の壁面には、日本の子どもをモチーフにした絵が描かれています(2016年12月28日撮影)


一等食堂:一等船客専用のダイニングサロン。船幅いっぱいのスペースをとった広々とした空間には、ディナーのようすが再現されています(2016年12月28日撮影)

一等食堂:一等船客専用のダイニングサロン。船幅いっぱいのスペースをとった広々とした空間には、ディナーのようすが再現されています(2016年12月28日撮影)

一等食堂の天窓に施されているアール・デコの装飾(2016年11月18日撮影)

一等食堂の天窓に施されているアール・デコの装飾(2016年11月18日撮影)


  • Aデッキ:優雅な船旅が感じられる部屋の数々
一等食堂から中央階段を上がり、Aデッキへと向かいましょう。

中央階段の手すりには「氷川丸」の名前を授かった、氷川神社(現さいたま市大宮区)の神紋「八雲」のデザインが施されています(2016年11月18日撮影)

中央階段の手すりには「氷川丸」の名前を授かった、氷川神社(現さいたま市大宮区)の神紋「八雲」のデザインが施されています(2016年11月18日撮影)


一等読書室:トップライトと横の窓から光が差し込む明るい部屋では、手紙を書いたり、本を読んだりして過ごしたのだとか。本棚(右)には、氷川丸船内図書として使用されていた本が残っています(2016年12月28日撮影)

一等読書室:トップライトと横の窓から光が差し込む明るい部屋では、手紙を書いたり、本を読んだりして過ごしたのだとか。本棚(右)には、氷川丸船内図書として使用されていた本が残っています(2016年12月28日撮影)


一等社交室:氷川丸のメインホール。グランドピアノが置かれ、優雅な時間が流れていたことがうかがえます(2016年12月28日撮影)

一等社交室:氷川丸のメインホール。グランドピアノが置かれ、優雅な時間が流れていたことがうかがえます(2016年12月28日撮影)

一等社交室の天井にもアール・デコの装飾が施されています(2016年12月28日撮影)

一等社交室の天井にもアール・デコの装飾が施されています(2016年12月28日撮影)


展示室「シアトル航路の旅」:横浜を出航してシアトルに向かう優雅な船旅のようすを、実物資料とエピソードで紹介するコーナー。実際に使用されていたレトロな計器類や船からの案内(NOTICE)などが展示されています(2016年11月18日撮影)

展示室「シアトル航路の旅」:横浜を出航してシアトルに向かう優雅な船旅のようすを、実物資料とエピソードで紹介するコーナー。実際に使用されていたレトロな計器類や船からの案内(NOTICE)などが展示されています(2016年11月18日撮影)


一等喫煙室:革張りのイス、格子柄のじゅうたんなど、モダンなデザインが印象的(2016年12月28日撮影)

一等喫煙室:革張りのイス、格子柄のじゅうたんなど、モダンなデザインが印象的(2016年12月28日撮影)

一等喫煙室にもアール・デコ様式のトップライトが(2016年12月28日撮影)

一等喫煙室にもアール・デコ様式のトップライトが(2016年12月28日撮影)

一等喫煙室の隅には、お酒が提供されたというカウンターもあります(2016年12月28日撮影)

一等喫煙室の隅には、お酒が提供されたというカウンターもあります(2016年12月28日撮影)

一等客室(1~3人部屋):洗面所やベッドなどがコンパクトに配置されています。毛布を折り紙のようにさまざまな形に折って、お客様をおもしてなししたそうです(2016年12月28日撮影)

一等客室(1~3人部屋):洗面所やベッドなどがコンパクトに配置されています。毛布を折り紙のようにさまざまな形に折って、お客様をおもしてなししたそうです(2016年12月28日撮影)


一等特別室(2室):喜劇王・チャップリン、秩父宮両陛下をはじめ、各国の貴賓や著名人が利用したスイートルーム。シャワーも完備されており、格調高いインテリアとなっています(2016年12月28日撮影)

一等特別室(2室):喜劇王・チャップリン、秩父宮両陛下をはじめ、各国の貴賓や著名人が利用したスイートルーム。シャワーも完備されており、格調高いインテリアとなっています(2016年12月28日撮影)

一等特別室はステンドグラスが印象的(2016年12月28日撮影)

一等特別室はステンドグラスが印象的(2016年12月28日撮影)


次ページでは、レトロな機器が並ぶ操舵室、機関室などを紹介

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