重要文化財に指定された「氷川丸」
横浜のシンボルのひとつ、氷川丸。戦前の日本で建造され、現存する唯一の大型貨客船で、1961(昭和36)年から山下公園に係留保存されています。2016年、造船技術や客船の内装を伝える貴重な産業遺産として高く評価され、国の重要文化財に指定されました。「北太平洋の女王」と称され、いくつもの歴史の荒波を乗りこえてきた、氷川丸について紹介します。戦前・戦中・戦後を駆け抜けた氷川丸の歴史
まずは、氷川丸の歴史について。横浜生まれの大型貨客船として、1930(昭和5)年に竣工。戦前はシアトル航路の貨客船として日本とアメリカの架け橋となり、秩父宮ご夫妻や喜劇王チャーリー・チャップリンなど、多くの著名人が乗船しました。戦時中は病院船として、戦後は復員船・引き揚げ船として活躍、その後は再びシアトル航路に復帰しました。1960(昭和35)年に引退するまで、太平洋を254回横断、約2万5000人が乗船したと記録されています。1961年からは、横浜開港100周年記念事業の一環として山下公園に係留され、現在に至るまで、横浜のシンボルのひとつとなっています。
2006年12月25日、惜しまれながら一時営業を終了、大規模な改装工事が行われました。戦前の写真や資料を参考に、船内は竣工当時の姿に近い形に復元され、「日本郵船氷川丸」として、78歳の誕生日にあたる2008年4月25日にリニューアルオープンを迎えたのです。
竣工当時の姿を再現した氷川丸
氷川丸の見どころは、昭和初期に頂点を極めたとされる「アール・デコ様式」を盛り込んだインテリア。客室が見学できる「船客エリア」、乗組員の仕事場が紹介されている「乗組員エリア」、氷川丸の歴史が学べる「展示エリア」となっています。レトロな雰囲気が感じられる船内を見学してみましょう。- Bデッキ:豪華な一等船客エリアを見学
- Aデッキ:優雅な船旅が感じられる部屋の数々
一等読書室:トップライトと横の窓から光が差し込む明るい部屋では、手紙を書いたり、本を読んだりして過ごしたのだとか。本棚(右)には、氷川丸船内図書として使用されていた本が残っています(2016年12月28日撮影)
展示室「シアトル航路の旅」:横浜を出航してシアトルに向かう優雅な船旅のようすを、実物資料とエピソードで紹介するコーナー。実際に使用されていたレトロな計器類や船からの案内(NOTICE)などが展示されています(2016年11月18日撮影)
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