江戸時代に始まった温泉旅行の元祖「一夜湯治」
古くは鎌倉時代から、温泉が湧き出していたという記録が残る箱根。湯本、芦之湯、さらに堂ヶ島、宮ノ下、底倉、木賀。江戸時代初頭に塔ノ沢温泉が開かれ、これら7つの温泉場は「箱根七湯」と呼ばれるようになりました。かつては裕福な人のみが湯治を目的に江戸から3日もかけて訪れたそうですが、江戸後期ともなると、お伊勢参りなどで東海道を旅する人が東海道を逸れて一晩泊まりに来るようになったり、参勤交代で東海道を往復する大名が立ち寄るようになりました。こうした「一夜湯治」は、今の温泉旅行の原点といっても過言ではないでしょう。明治以降は保養地、観光地として外国人観光客にも注目されるようになり、宮ノ下に富士屋ホテルが外国人専用ホテルとして開業しました。大正・昭和にかけては、多くの文人墨客が古い温泉地の湯宿に逗留するようになります。そうした老舗旅館の多くが、往時の風情そのままに、今もなお愛され続けています。さらに温泉地は増え、現在は十七湯を数えるまでに。それぞれに泉質が異なるばかりでなく、周囲の自然環境も異なるので、同じ箱根でもまったく違った趣が楽しめます。