社員として、利用者と接する以上、最低でも「避難階段と避難経路」、「消火器の位置と使い方」、「応急手当の方法」は覚えてください。災害時には利用者を安全に避難をさせる義務があり、責任があるのです。学生時代は面倒くさかった避難訓練も、社員となった以上そんなことを言ってはいられません。法律で定められた規模の会社であれば、避難訓練の実施も義務づけられています。
「そういう機会がない。」というオーナーや責任者の方もたまにいますが、それはただの言い訳でしかありません。消防署に相談すれば、指導はもちろん、訓練実施の手伝いもしてくれます。会社で避難訓練が出来なければ防災館にいけばいいのです。会社として利用申請すれば、防災訓練を実施したと認められるのです。防災館では、消火器の使い方も教えてくれるし、消防設備の種類と効果も覚えられます。煙体験コーナーでは、煙の中でどのような行動をとればいいのかを疑似体験できますし、誘導灯の重要性に気付くことができます。興味がある方は、防火管理者の方に相談してみるのもいいし、家族とともに自分で行ってみるのもいいでしょう。
ここまで、火災だ災害だと言ってきましたが、そのような事態はそうそう発生するものではありません。しかし、ボヤ火災となるとどうでしょうか? 平成14年度に発生した全国の出火件数は63,575件。そのうち東京消防庁管内では、平成14年中の火災件数は6,672件、建物火災は3,839件発生しており、全焼197件、半焼179件、部分焼857件となっており、そのうちぼや火災が2,606件と建物火災全体の67.9%と大半を占めています。
東京消防庁管内 建物火災発生件数
灰皿の不始末や給湯室での火の消し忘れ、電子機器の故障が原因で出火、などはとても多く発生しており、このような時でも、きちんとした対応ができなければいけないのです。例えば、偶然会社に来社した取引先の社長や担当者がいる時に、このような事態が発生したらどうなるのでしょう。例えぼやでも、社内は一時騒然となります。危機管理の出来ていない会社ならば、大変な騒ぎになるのは目に見えています。
このような時、きちんとした説明ができなければどう思うでしょう? 応接室で待たされているときに、外が騒がしくなり、水だバケツだ消火器だ
などと騒いでいるのが聞こえたら、不安になるでしょう。ましてや、その状態で5分も放っておいた日には目も当てられません。取引中止なんていう話にもなりかねないでしょう。何の情報もないまま、待っている時間はとてつもなく長いもの。避難の必要があるのか、無いのか、消火はきちんとできたのかどうかなど、きちんと伝えることができる事も重要なのです。そのためには、1人1人が状況を把握し、上司に報告をする体制が出来ていなければ、なかなかスムーズにはいきません。
また、火災報知器が誤作動したときにも同様に注意が必要です。けたたましく鳴り響くベルの音に、驚かない人はいないでしょう。また、何が起きているのかとても不安にもなります。ただ、この誤作動は、いい勉強にもなります。
消防のお偉いさんも、「火災報知器の誤作動は悪い事とはいきれない。壊れて作動したのなら故障が発見できるし、誤作動の場合でも従業員にとっては訓練代わりの貴重な体験。怖いのは、しょっちゅう鳴って、慣れてしまうことと、ウルサいからと、その機能を停止させてしまうこと。」と、言っていました。きちんと対応できるようになりましょう。
これが、客商売だったらもっと大変でしょう。どの位の人数の人がいたのか把握しきれませんから、びっくりして帰ってしまった人に説明も出来ません。このような場合は、「煙が見えただけ」「ベルが鳴っただけ」でも、非常放送設備やマイクロフォンなどを使って、
調査中
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「誤報」か「ぼや」か、などの原因説明
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避難の必要があるのか、ないのかの説明
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お騒がせのお詫び
などを、状況説明しましょう。消せたからOK! 万事問題なし、と考えてしまわず起きてしまったことは隠さずに、きちんと説明をしなければいけません。
お客はとても正直で、危機管理が出来ていない デパートやスーパーという噂がたっただけでも、そのお店からは離れていってしまいます。悪い噂ほど、早く伝わるものです。「火がないところでも、煙はたつものサ」と、忌野
清志郎さんも歌っています。火(非)があるだけに、煙はそうそう消せません。
最後に、新入社員のみなさんへ一言。
先輩たちが築いてきた信用を落とさないためにも、利用者のためにも、あなたの会社で快適に過ごしてもらう事を喜びとするような社員となってください。
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