現在主流となっているハロン1301の消火薬剤名は、ブロモトリフルオロメタン(1臭化3ふっ化メタン)といい、ハロゲン化物消火設備の「ハロゲン」とは、元素周期表の17族のフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(BR)、ヨウ素(I)の4元素の総称(消防用設備基準の解説には「ヨウ素(I)」は入っていません)で、これが消火剤に含まれています。
この「ハロゲン」で、火災の連鎖反応の抑制作用(負触媒作用)を利用して消火しようという設備です。ハロン1301は常温では気体になりますが、タンク内に圧縮して封入されると液体になります。これは、液化ガスといって高圧ガス取締法が適用されます。
『ハロゲン化物消火設備』『二酸化炭素消火設備』は、どちらも建築物を守る重要な消火設備ですが、驚くほど認知度が低く、実際の火災時にこれらの設備を使いこなして消火できた例は非常に少なく、ガス系消火設備が新聞を騒がせるのは誤操作による死亡事故の方が多いのではないかと思っています。
少し古い情報で申し訳ないのですが、東京消防庁が監修し、(財)東京防災指導協会が発行している平成12年版「火災の実態」にて、消防用設備の活用状況を見てみると、ハロゲン化物消火設備の設置されている箇所からの出火は3件ありました。このうち2件は火災が小規模のうちに、他の方法で消火されていましたが、1件は「使用・作動しなかった」のです。
-事例- 消火器を使用し、初期消火を行いましたが消し止められず、ハロゲン化物消火設備を起動させて消火に当たりました。しかし、火元責任者は起動ボタンを押せばすぐに放射されると思っており、なかなか放射されないことからやみくもにボタンを押した際、緊急停止スイッチまで押したために起動しませんでした。 |
この設備は、起動ボタンを押した際に、もしも中に人が残されていたとしても逃げることが出来るように、通常、約20秒の遅延装置が設けられています。誤って操作してしまった場合には緊急停止スイッチなどで停止してください。この設備は、音声か又はサイレンで警報が流れます。また、区画を作り上げ、より確実な消火をする為に、シャッターや防火ダンパーなどと連動していることから、シャッターの閉鎖する時間は放射をされないようになっています。
どちらも法令で安全対策が定められ、「避難」と「効率的な消火」をするために、すぐには放射されないようになっています。ハロゲン化物消火設備に限らず、ガス系消火設備は自動、手動にかかわらず『起動』の信号を受けると、いくつかの段階を経てから消火の対象になる場所(部屋)に消火剤を放射します。
いくつかの段階とは、効果的に消火するための下準備と、「放送」や「サイレン」によって設備の設置されている部屋の中にいる人々が安全に避難する時間を作るための時間を作る事です。消火のための下準備としては自動閉鎖装置が一般的です。この装置は、シャッターを閉めたり、その部屋の中で空気の循環をさせない(酸素の供給遮断)ようにダクトを閉じる「ダンパー」を作動させます。同時に、吸排気の空調機も停止させる回路も作動させて、火災の発生した場所(部屋など)を外部と遮断し、密閉した空間を作り上げます。これを区画といい、広さにあわせて計算された量の薬剤を放射するのです。
もしも、自動閉鎖装置をもうけないで『ハロゲン化物消火設備(ハロン1301)』を使用するのならば、開口部の面積 1平方メートル当たり、2.4Kgもの消火薬剤を必要とします。これに比べ、自動閉鎖装置により完全に区画をもうける事が出来れば、たったの0.32Kgの消火薬剤で、防護区画の体積 1立法メートルの消火が可能になるのです。