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・妖精の犬?
・魅力ある毛色や気質について
犬種名の由来は、イギリスのシェットランド諸島
長い被毛を風になびかせて走る姿は、実に美しい。 |
自然環境がやや厳しいと言えるシェットランド諸島においては、樹木も丈の短いものが多く、また、動物も小型のものが目立つことで知られています。代表的なのは、シェットランド・ポニー。彼らは、ちょっと頑固で、働き者。それはまさに、“北の地”をイメージするような気質ですね。
ポニー同様、羊もイギリス本土に比べると小型サイズのものが多かったらしく、シェルティーが、他の牧羊犬に比べて小型であるのは、環境的に必然的なことだったのかもしれません。因みに、シェットランド諸島は、上質な羊毛を産出することでも知られており、ヴァイキングによって発展した土地柄なだけに漁業も盛ん。寒さから漁師を守るセーターなどは、その編み方と共に、世界に知られています。
妖精の犬?
犬種の歴史を紐解く時、主に当時の富裕層によって改良が進められた犬種と、一般庶民の生活から生まれた必要性によって改良がなされた犬種が多くあることに気づきます。後者は、まさに「働く犬」と言えるでしょう。シェルティーは、後者に属します。しかし、後者である場合、犬籍簿など繁殖の記録があまり残されていないことが多くあり、その分、歴史上の不明点も多々。それが、その犬種のファンとしては残念なところです。シェルティーの歴史を遡っていくと、まず行きあたるのが、“トゥーニー<Toonie>”(シェットランド諸島には、かつてトゥーンズと呼ばれた集落があった)、または、妖精を意味する“ピーリー・ドッグ<Peerie dog>”と呼ばれた犬達。どちらの呼び名にも“小さい”という意味があることから、小型であったことがうかがえます。彼らは、優秀な牧羊犬として活躍していました。
このトゥーニーには、スコットランドから渡ってきたブラック・アンド・タンのキング・チャールズ・スパニエルが大きく関係している、という話があります。実際に、古い絵に描かれたトゥーニーとされる犬は、やや胴も長く、耳も立っているようには見えず、スパニエルのような雰囲気も感じさせます。
北方スピッツ族の血と、スコティッシュ・コリーの血
このトゥーニーに混血されたのではないかと考えられているのが、捕鯨船の漁師によって連れて来られたグリーンランドのヤッキ・ドッグ<Yakki dog>、または、アイスランドのアイスランド・シープドッグ<Iceland sheepdog>(アイスランド・ドッグという名でも呼ばれる)。両者共に、北方スピッツ系の犬で、トゥーニーの容姿が、耳は立ち耳となり、体のサイズがそれまでより少し大きくなったのは、このためとされます。そして、もう一つ大きく関与しているのが、スコティッシュ・コリー。これは、ラフ・コリーの原型であり、当時はややボーダー・コリーに近い容姿をしていたと言われます。しかし、これで一点、困ったことがありました。それは、体のサイズが大きくなってしまったことです。島の人達が望むコンパクトなサイズになるよう、選択繁殖がなされましたが、現在でもサイズのばらつきが若干見られることがあるのは、その名残とも言えるでしょう。
“シェットランド・シープドッグ”としてのスタート
その後、ラフ・コリーの血が配された時代もあり、シェルティーとラフ・コリーの見た目が似ているのは、実は、同じ血が流れていることによります。言わば、親戚関係。犬種名にも、最初の頃には「シェットランド・コリー」という名が使われていましたが、これはコリー・クラブからの反発を受け、「シェットランド・シープドッグ」に改名しました。シェットランド諸島のラーウィック市に、初の犬種クラブが誕生したのは1908年。アメリカのAKCに初めて登録されたのは1911年であり、日本国内で初登録があったのは、1955年となっています。
日本では、20年以上前に、一時、大人気となった時代がありましたが、そのブームに乗り、乱繁殖の影が見られたことは、犬好きとしては悲しいところです。現在では、それも落ち着き、安定した人気を誇る犬種となっています。この犬種のよさがわかる人が飼いたくなる犬種、そんな感じでしょうか。
次のページでは、気質などのお話を。