離婚後も会いたくなるのは?
結婚指輪をはめたとき。25年後、結婚指輪をはずすとき… |
けれども、離婚届を提出するのに、夫婦二人揃って役所に出向き、「二人きりで写真を撮ったことがなかったから」、とスピード写真で笑顔のポーズ。待ち時間に夫婦の思い出話に花が咲き、「いい夫婦だった」と二人してぼろぼろ泣いている。こんな円満な離婚の風景は現実にはまずないでしょう。泥沼離婚を経験した人なら、「だったら別れるなよ」とツッコミを入れたくなるシーンです。
離婚後1年が経過したクリスマス。プレゼントを持って太一(元夫・田村正和)のところへ華(元妻・黒木瞳)が現れます。華は旅館に住み込みで働きながら図書館司書の資格をとる勉強をしているけれど、現実の厳しさに直面してちょっと弱気になっていた、と言う。でも、あなたに会ったら元気が出た、と。会って元気になれるというのは、そこにはお互いに長年に渡って築いた、紙切れ一枚で簡単に消し去ることのできない(愛)情があるからではないでしょうか。
ひとりにならないとお互いの大切さに気づけない
一方、子どもたちもそれぞれの道を歩き出し、妻と別れ、一人になった太一は、自分で家事をするようになって、初めて心から華への感謝の気持ちを持つことができた、と。そして、もう一度やり直したいと華に『婚姻届』を渡す。華はそれを受け取り去って行く、というラストシーン。
いかにも華の答えから始まる続編を期待させるかのようなラストですが、ご覧になられた皆さんは、華は戻る・戻らない、どちらを選択すると思いますか? 自己実現をはかって離婚までした訳ですから、初志貫徹、苦労してでも資格を取って、その資格を生かした仕事を得てから太一のところへ戻るのか? 戻らないのか?
それとも、太一のところに戻って一緒に暮らしながら、資格の勉強をするのか。25年間、専業主婦をしてきて、人間いざとなれば何でもできるとはいえ、いきなり旅館の住み込み仕事というのは、幾らなんでも極端過ぎます。何十年温室で生きてきた元社長夫人には、きつい仕事・職場に違いないでしょう。
華も自分で働いて賃金を得てそれで食べて行くという生活の苦労を味わって、例え家庭を顧みない夫であっても、食べるにも着るにも住むにも困らない生活を与えてくれていたというありがたさに、その大切さに気づいたはずです。日常に埋もれていると、当たり前のことに感謝ができなくなってしまう。でも、離れてみると、それまで相手に対して気づかなかったことに気づけるのです。