離婚/離婚の体験談

離婚の危機! 大家族の嫁の場合

今回は大家族のとある夫婦の離婚の危機について考えてみましょう。

岡野 あつこ

執筆者:岡野 あつこ

離婚ガイド

皆様、こんにちは! 夫婦問題カウンセラーの岡野あつこです。さて、今回は大家族のとある夫婦の離婚の危機について考えてみましょう。

■夫婦の状況は?

S美さん夫婦は、共に25歳の時に結婚。現在54歳です。S美さんが嫁いで来た時、夫の祖父母、夫の両親、身体の不自由な叔父、と全部で7人という大所帯でした。S美さん夫婦の子どもが4人次々と生まれて、一時は11人という賑やかさ。一番若い嫁であるS美さんは、それは大変な生活でした。朝は暗いうちから1番に起きて、11人分の炊事・洗濯で大わらわです。身体の不自由な叔父や祖父母の病院通いに付き合うことから、全てS美さんが頼りにされました。

この様な生活は嫁ぐ前から覚悟の上でしたが、想像するのと実際やるのとでは大違い。それでも頑張って大家族の嫁として切り盛りをしてきました。子どもたちが成人する頃、夫の祖父母や叔父が相次いで亡くなり、子どもたちも2人は独立し、6人家族になりました。



一家の家政婦も同然に働いて来て、夫婦で旅行も外食1つもしたことがなかったけれど、自分の時間も心の余裕も少しできて、これからは夫ともっと向き合い二人の時間を大切に生きていきたい。そう思い始めた矢先、夫の浮気を知りました。毎日午前様なのは、仕事のせいとばかり思っていたのが、実は浮気をしていたことが判ったのです。

S美さんは、まさか自分にそんなことが降りかかってこようとは、夢にも思っていませんでした。気が動転し、つい夫の前で怒りを爆発させてしまったのです。すると、夫は「出て行け」と言いました。「何で悪いこともしていない私が出て行かなければならないの? 」S美さんが言うと、夫は「おまえが出て行かないなら俺が出て行く」と、浮気相手のうちへ行ったきり、帰って来なくなりました。

幸い義父母はS美さんの味方になってくれました。そして「ほとぼり醒めたら帰って来るだろう」と、事を荒立てない方がいいと言いました。S美さんも大騒ぎしてしまったのは失敗だったと思い、おとなしく待てば夫はいつか必ず戻ってくる、と信じようとしたのです。

そうしているうちに5年も経ってしまったそうです。その間夫は、家には荷物を取りに寄るといった状態でした。さすがのS美さんももう修復の余地は無いと思ったのです。「離婚の方向で話を進めたいけれど、どうしたらいいですか? 」と相談に見えました。

■大家族の中にいても夫婦の関係を忘れずに

色々話をきいて夫の立場にたって考えてみると、大家族の家の中で居場所がなかったようです。祖父、父が元気で仕切っている家。妻はそんな家族の中で居場所を確保し、自分の役割を十二分に果たし一生懸命働いている。妻としては、そういう頑張りも全て夫を愛しているからであり、夫への愛情表現だったわけです。夫のために、元々は夫の家族だった人たち、そして夫と成した子どもたちを大事にしてきたのです。けれども、夫にはそんな妻の気持ちは全く判らず、他の家族に妻をとられてしまったような気持ちが強く、面白くないので外に女をつくってしまったのです。考えてみれば幼稚であさはかな発想ですが、男の人ってそういう単純なところがあったりするのです。

S美さんはS美さんで、どうして夫はもっと家庭や自分のことに目を向けてくれないのかと、思っていました。それでも、日常があまりにも忙しいので、そういう話し合いを夫と持ちたいと思っても、先延ばしにして来てしまいました。そのタイミングを失った結果が夫の浮気という痛い結果を招いてしまったのです。

とはいえ、浮気はした方が悪いに決まっています。夫にしたって、S美さんと向き合う努力をするべきでした。なんとかやりくりすれば介護の必要な家族がいたって、年に一遍くらい夫婦で旅行に行くことはできないことはなかったのです。妻に祖父母や父母や子どもの世話を全て任せきりにしてきて、そんな妻をねぎらうこともせず、残業だと嘘をついては浮気をしていた夫。

確かに大家族の中にいると、向き合う人間の数が多いので、一番大切にしなければならない相手を見失っても気付かないということがあります。だからこそ、夫婦の部屋で過ごす時間や会話を大切にしなければ、少しずつ気持ちがスレ違ってしまい、いつの日か取り返しがつかないところにたどり着いてしまうのです。

■素直な気持ちをぶつけてみよう

私はS美さんに、「本当に離婚でいいの? 愛情が少しでも残っているなら修復の努力はしてみないと後悔することにならないかしら? 」と尋ねました。すると、S美さんは泣き崩れて「夫を愛しているからこそ、憎いし苦しい。だから離婚しかないと考えたのです。愛情がなければ、このまま離婚しないで生活していくのはむしろた易いことなのです」と言いました。

S美さんは、まだ夫と何の話し合いもしていないと言うので、「浮気を責めるのではなく、自分の素直な気持ちを伝えてみてはどう? 」と、アドバイスしました。

一ヵ月後、再びS美さんがカウンセリングに訪れました。「先生のおっしゃった通り、浮気のことには触れず、離婚を考えたことも言わず、戻ってくれるのをずっと待っていた、と伝えました。すると、信じられないことに『今まで勝手なことばかりして悪かった。女とは別れる』と言って、それから週の半分くらいうちにいるようになったのです。わだかまりも解けてきて、会話も増えて。どうしてもっと早く素直に気持ちを伝えなかったのか…」。「よかったわ。でもこれもタイミングよ。5年も女と付き合えば潮時ということもある。タイミングがよかったのね」。

夫が愛人のところに5年もいて、もう離婚しかないと思っていたのに、素直な気持ちを伝えることで、こじれてしまった夫婦関係が少しずつ修復への道へと向かい始めたのです。私は「人間素直になるといいことがある」とよく口にしていますが、S美さんにしても劇的な人生の変化、夫婦関係によい変化が訪れました。男と女の関係は、意地を張っていていいことなんて1つもないのです。夫にしても、妻にしても! 皆様も意地を張らずパートナーの前では素直になってみてはいかがでしょうか?

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