日本よりひと足早い夫婦別姓
ドイツの核家族化は日本に先立つこと一〇〇年以上といわれています。都市部だけではなく、農村部でも親子関係はドライなので「家」意識は皆無といっていいぐらいです。財産分与についてもまず契約書ありきとされ、「スープの冷めない距離」が実現しています。
日本でも何年も棚上げされた格好の夫婦別姓であるが、ドイツでは、一九九三年の法改正で正式に別姓を名乗ることができるようになりました。それまでは、夫婦どちらか一方の姓での夫婦同姓を原則としながら、旧姓はその前に付けることができる(結合性)というドイツ流の「苦肉の策」をとっていました(ドイツ人女性で、やたらに長い名前の人がいるのにお気づきか?)が、ここにきて他の欧米諸国にようやく追い付いた形になりました。
家意識、夫婦別姓と合理性を求めるドイツ人気質が表れていますね。残念ながら日本はまだまだその域までに達していません。あと何十年かかる事やら。
離婚に金がかかるドイツ
先に述べた共同生活(事実婚)増加の理由が、もう一つあります。ドイツでの「離婚」は、制度的に複雑かつコストがかさみます。なにしろ、離婚するには、必ず弁護士を通さなければならず、当然費用は自費です。さらに、熟年離婚したら「内助の功」期間分の年金は相手にあげなくちゃいけないし、生活力のない相手だったら、経済的に自立するまで援助する義務があるので大変です。
要するに経済力のない妻(または夫)に「私はあなたと別れて弁護士になりたいから、学費を援助してね」といわれたら、せっせと仕送りをしなければならないということです。というわけで、結婚するとなったら「財産」目録を交換し、いろいろ契約書をとりかわすのは珍しいことではありません。そこで、そんなことの煩わしい若者が共同生活を選んでいるという状況です。
離婚にはお金も暇もかかるということを徹底的に知らしめるのにはドイツのような方法がいいのかも知れません。そうすれば結婚時に相手との生活をよく考えることでしょう。それは離婚率の低下に結びつくのでないでしょうか?しかし事実婚という形での増加を生んでいるところを見ると、つまるところ男と女の間には盛り上がれば一緒にいたいという万国共通の想いがあるようです。
ベルリンの壁が除かれて生まれたシングルマザーの苦悩
「離婚」は、かつての東ドイツ女性にとって、怖いものではありませんでした。なぜなら(社会主義の建て前上、男女平等社会だったため)経済力もあり、シングルマザーであるがゆえのさまざまな優遇(子供を保育所に優先的に入れられる、など)を受けられたからです。
ところが、一九九〇年に東西ドイツが統一されてからは、事情がまったく変わってしまいました。資本主義経済は、かつての東側ドイツ地域の離婚率激減という副産物をもたらしました。統一直後、旧東ドイツ地域の大勢のシングルマザーが、再就職活動を有利にするために「不妊手術」した(九一年に一二〇〇件という数字も)事は有名なお話です。国情が激変したために起こった極端な事象とは思うが、「離婚」や「出産」という選択肢と「経済的自立」との関係をあらためて考えさせられるトピックです。