●給料を持ってこなくなった夫
U氏がいくつめかの会社に就職したときのことです。「今度は長く続けてね」とT子さんはU氏に頭を下げてお願いしたそうです。今度の職場はU氏も水が合ったのでしょうか、毎日T子さんの作るお弁当を持って「行ってくる」と出かけて行くのだそうです。
「ああ、よかった。今度は長続きしそうだわ」
T子さんは少し安心して、U氏が勤め始めてからの日数を、心の中で指を折って数えていたそうです。待ちに待った、新しい職場での初めての給料日のこと。なんとU氏は給料を持って帰ってこなかったのです。
「どうしたの？今日はお給料日じゃなかったの？」
T子さんが不安そうに尋ねると、U氏はバツが悪そうな顔で言葉を濁しました。不信に思い問い詰めると、なんとU氏は新しい会社に入って、たったの2日出勤しただけで辞めてしまっていたのです。あとの日は、毎朝「行ってくる」といいながら、そのままパチンコ屋に直行していたのだとか。それで稼いだお金を持って帰ってくればまだしも、夕方から飲んで使ってしまったのだそうです。「同僚と飲んできた」と偽って。
「ああ、また…」あまりに悲しくなったT子さんは、その日から家を出てしまいました。U氏は「今度こそ、心を入れ替えるから。真面目に働くから戻ってきてくれ」と哀願するのだそうです。これまでT子さんは、「もう別れたい、こんな生活はイヤ」と思い続けながらも、「次こそは」と夫への期待が残っていました。しかし今回はT子さんの決心も固く、もう戻るつもりはないそうです。
不況によるリストラで職を失うのは致し方のないこと。そんな時こそ夫婦で力を合わせて苦労を乗り切ることでしょう。しかしこのような現代においても、このような男性は少なくはありません。決してお金がすべてとはいいません。そして愛情と比較するものでもないのかもしれません。でも夫の器量、価値を知る大きな手がかりであることには間違いないのです。
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