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さいはての鉄道旅行~釧網本線の旅1(2ページ目)

夏休みオススメの鉄道旅行は、北海道の旅。なかでも道東は、さいはての旅情が楽しめる。見どころの多い釧網本線の旅。今回は釧路湿原を中心に釧路から川湯温泉までだ。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

釧路川を越え、いよいよ釧路本線へ

釧網本線は緑豊かな大自然の中を進む。

釧路川の鉄橋を渡り、東釧路駅を出ると、列車は左にカーヴしながら、東へ向かう根室本線と分かれる。いよいよ釧網本線の旅が始まったわけだが、単線のか細い鉄路を行く一両だけの編成は、いかにもローカル線という風情だ。「本線」とは名ばかりである。

車窓の最初のビューポイントは、釧路湿原だ。先ほど渡った釧路川の上流部が左手に近づいてきて、次の停車駅遠矢(とおや)を出ると、草原の中に奇妙な形をしたコンクリートのオブジェのようなものが二つ見えてくる。釧路川の岩保木水門で新釧路川との分かれ目だ。そばには木製の古い水門もあり歴史的建造物となっている。これが、釧路湿原の入り口の目印ともいうべきものだろう。

列車は釧路湿原駅に停車する。右側にホームが一本あるだけの小さい駅だが、観光客でごった返している。この駅の近くに湿原が眺望できる細岡展望台があり、「ノロッコ号」で来た旅行者が一通りの観光を終えて網走方面へ向かうために、この列車に乗り込もうとしているのだ。大勢降りたものの、それ以上の人々が乗り込もうとして狭い入口は大混雑である。

釧路湿原駅を発車、茅沼へ向かう

細岡駅はログハウス風の小さな駅舎が印象的だ。
ようやく発車となる。次の細岡に停まった後、曲がりくねって流れている釧路川が線路際まで近づいてくる。川の蛇行は激しくしばらくするとまた遠ざかってしまう。再度近づいてくると、赤いカヌーを漕いでいるグループが列車に向かって手を振ってくれる。湿原のスケールが大きいので、車窓から全貌はつかめない。私としては、厚岸付近の根室本線から眺める別寒辺牛(べかんべうし)湿原の方が、規模が小さいためか、車窓からの眺めはいかにも湿原といった感じがして堪能できた。釧路湿原は下車して楽しんだ方がいいようだ。

塘路駅の駅名標。ライトグリーンはJR北海道のカラーだ。
塘路(とうろ)で対向列車とすれ違う。向こうも一両だけのディーゼルカーだ。駅を出ると、白樺並木の道に沿って走り、右手には塘路湖が見えてくる。左にも小さな沼地が目に入る。列車は山を避けるように左に曲がりながらのんびりと進む。原生林の中を抜けると、広々とした草原を行き、右手にはシラルトロ沼が見える。

茅沼駅脇の原野は冬になればタンチョウヅルが舞い降りる。
今度の停車駅茅沼(かやぬま)は「タンチョウの来る駅」として知られている。今は無人駅だが、かつて駅長さんが餌付けをおこなったのでタンチョウが目の前で見られるという。線路際には「日本で唯一ツルの来る駅」とか「暖かく見守ってください」などの看板があり、地元がタンチョウを大事にしている様子が分かる。もちろん夏場なのでタンチョウはいない。

五十石(ごじっこく)を経て、人家が増えてくると久しぶりの町・標茶(しべちゃ)だ。次のページからは、いよいよ日本離れした牧草地を走る。
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