小海線のハイブリッド気動車に乗ってみた
小淵沢駅に停車中のキハE200 |
ステンレスの車体にブルーの塗装、ドアの部分はイエロー。ブルーの部分には、「HYBRID TRAIN」という大きな文字が浮かびます。まあ、デザイン的には……な車両ではありますが、これが世界で初めて実用化された車両なのだ、と思うと、感慨深いものはあります。車両の先頭付近では、記念撮影をする人多数。やはり、みなさん注目の車両のようです。
お天気もよい休日。このキハE200には「こうみ」という愛称がつけられていますが、この日はJR東日本の「駅からハイキング」参加者も乗車するため「駅からハイキングこうみ」号として、3両編成の列車に満員のお客を乗せて、小淵沢駅を発車です。
常識を覆す、すべるように発車する気動車
停車中はアイドリングストップで静か(小海駅) |
それもそのはずです。ディーゼルエンジンは停止していて蓄電池の電気で発進するわけですから。まったく電車と同じように、スーッとすべるような感じで発車。そしてクーッと加速。そのスムーズさに思わず、オーッ!と叫んでしまいました(もちろん心の中で)。
小海線は、日本で最も標高の高いところを走る路線としても知られています。始発駅の小淵沢でも、すでに海抜881メートル。例えば東京の西にある高尾山の標高は599メートルですから、いかに高いところなのかおわかりになるでしょうか。
しかも、小淵沢の次の甲斐小泉駅の標高は1,044メートル。なんと1駅で200メートル近く登るのです。そのために、列車はいったん西へ向かって走り、大きくカーブを描いて高度をかせいでから、東へと向かいます。この区間の眺めは実にダイナミック。そしてこの勾配を登りながらエンジンが始動、おお頑張ってるな、という感じです。
停車中は人々の話し声と鳥のさえずりだけが!
JR最高所の駅・野辺山駅で小休止 |
そして列車は一つ目の停車駅、甲斐小泉駅に到着。先にご紹介した通り、駅での停車中はエンジンが停止するので、ドアが開くと、車内の話し声と外からの鳥のさえずりが聞こえるのみ、と言っても過言ではありません。駅と駅の間でエンジンが動作しなければ、ほとんど音もなく発車してほとんど音もなく停止するということもあり得るわけですね。
最新の設計がなされたキハE200の車内 |
列車は快調に八ヶ岳の山麓を駆け上がり、JR最高地点近くの踏切を過ぎると、JR最高所の駅・野辺山駅に到着します。ハイキングの乗客がここでほとんど降り、車内は一気にガラガラに。そのおかげで、今回乗車した列車は、途中の中込(なかごみ)駅止まりでしたが、ここからは思う存分ハイブリッド車両を堪能できたのでした。
なぜ小海線にハイブリッド車両なのか?
高原野菜の畑と山々を望みながら(野辺山~信濃川上間) |
それは、清里・野辺山などの有名観光地を走る路線で、かつ八ヶ岳山麓の高原を走る路線であるために、新しい技術と「環境に優しい」という点を多くの乗客にアピールできること、そしてハイブリッドの利点が活かせる急勾配のある路線であること、というのが大きな理由でしょう。
小海線は首都圏から「青春18きっぷ」だけで日帰りも可能な路線です。特に空気が澄みわたる冬は、八ヶ岳の眺めもひときわ美しくなる季節。ぜひ乗りに行ってみてはいかがでしょうか。
[関連サイト]
■ハイブリッド車両「こうみ」情報(JR東日本・長野支社)
ハイブリッド車両が使用される列車の時刻などを掲載。なお、ハイブリッド車両は12月以降も継続的に運転される予定です。
■世界初の環境に優しい『モータ・アシスト式ハイブリッド車両』の開発に成功!(PDFファイル)
JR北海道が開発、現在試験走行中の次世代車両。JR東日本のキハE200とは仕組みが違っています。
■鉄音アワー98号発車!ハイブリッド気動車キハE200形の音を営業運転開始前にスクープ配信!!(ブログ記事)
アニメ「鉄子の旅」の主題歌を歌うテクノバンド「SUPER BELL"Z」によるブログ。この記事内にある『「bellz098.mp3」をダウンロード』をクリックすると、「鉄音アワー」という番組の中でハイブリッド車両のいろいろな音が聞けます。特に、後半の従来の気動車とハイブリッド気動車の音の比較は必聴。