怪しい乗客?そして青函トンネル通過
青森22:45→1:13函館
今夜の宿はこんな座席 |
怪しいといっても別に何か盗むとかそういうことではなく、動作が落ち着かないのだ。夜行列車で落ち着かない客の近くになることほど嫌なことはない。
やたらとコンビニのビニール袋をたくさん持っていて、これがいちいちガサガサと音を立てる。カバンの中の小分け袋にもこのビニール袋を使っているようで、もう何かにつけてガサガサである。車内が静かな夜行列車だけに、些細な音も気になるのだ。
しばらくすると歯ブラシを持って洗面所のほうへ行ったから、これでもう寝るのだな、と思っていると、戻ってくるなり缶ビールやらつまみやら弁当やらを出して飲食を始めた。わけがわからない。
しかしまあ、食料もつきればそのうちおとなしくなるだろうから、カリカリするのはやめて気にしないことにする。
これを抜ければ北海道だ(青函トンネル内) |
やがてトンネルが始まり、その何本目かのトンネルが青函トンネルである。もう何度も通っているから、夜でも線路の音が変わったことでそれとわかるし、入口にはそのことを知らせる照明もある。
0時15分頃、地上へ出た。ここはもう北海道だ。もちろん暗いばかりで何も見えない。
しばらくすると、駅で停まった。ホームの柱に「きこない」とある。木古内駅で運転停車らしい。ホームの反対側には、貨物列車がじっと息をひそめている。
すると、寝台特急「北斗星」4号がすれ違って行った。そういえば今朝、新白河駅の手前でも同じ北斗星4号とすれ違った。今のは、その24時間後に札幌を発車した列車なわけだから、どれほど長い旅なのかがわかるだろう。
夜行列車明けの倦怠感、そして札幌へ
函館1:23→6:07札幌
深夜の駅で機関車を付け替え(函館) |
ホームへ出てみた。やはり空気はヒンヤリしていて、青森と同じくらいの気温のようだ。
やがて向こうからブルーに塗られた2両のディーゼル機関車がそろそろと近付いてきて、ピュイッ、という汽笛一声、客車に連結された。こんな調子で夜行列車が一晩中やってくるから、函館駅は眠れない。
向きを変えた列車は、1時23分、札幌へ向けて再び走り出した。
やがていつの間にか眠った。もっともこれは夜行列車だから、眠るにこしたことはない。隣のガサガサ男も、とうに眠りこけている。
目が覚めるとどこかの海辺を走っていた。まだ暗く、しかも霧に包まれてほとんど見通しはきかないが、伊達紋別のあたりだったかもしれない。
再びうとうとしながら列車は走り、東室蘭駅の手前で日の出を迎えた。夏の北海道は日の出が早い。相変わらず靄がかかっていて太陽の輪郭はぼやけていた。
眠っているのか起きているのか、頭の中もぼやけているうちに、苫小牧、南千歳と過ぎ、だんだんと市街地に入る。特徴ある家々の屋根の形を見ると、北海道に来たのだ、という感慨が湧いてくる。
上野~札幌1,100kmの旅、完遂!
定刻の6時07分、急行列車は、あっさりと札幌駅に到着した。1,100kmの旅の終わり、札幌に到着 |
ディーゼルエンジンの排気ガスの匂いがこもるホームに降りる。おかしいようだが、私はいつもこの匂いで札幌を実感する。夜行列車明けの気怠い体を、朝の空気が引き締めてくれる。
しばし感慨深げに急行「はまなす」のブルーの車体を眺めていると、突然声をかけられた。見知らぬ男性である。聞けば、何でも盛岡からずっと同じ列車だったそうだ。
どうして気付いたのかと聞くと、「ずいぶん熱心に写真を撮ってらっしゃいましたから」と言う。こちらはまったく気付いていなかったが、どうやら色んなところで写真を撮りながらウロウロしていたのが、目に付いていたらしい。
彼は同じく「北海道&東日本パス」を持っていた。これから稚内まで行くという。稚内に着くのは夕方の17時頃だ。お互いにこの先の旅の無事を祈りながら別れた。
さあ、こちらもゆっくりしてはいられない。
何しろ切符はまだ3日分残っている。
1,100kmの旅は終わっても、線路はまだ先へ先へと続いていた。
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■上野~札幌1,100km鈍行急行乗継ぎ旅・前編
■「上野~札幌1,100km鈍行急行乗継ぎ旅」全行程表