啄木の故郷に、ふるさとの山を望む
盛岡17:04→18:58八戸
混んでくるとただの通勤電車だ(IGRいわて銀河鉄道) |
この車両はIGRいわて銀河鉄道の車両だが、さっきまで乗っていたJRの車両の塗装を変えただけである。2両編成のワンマン列車、というのも同じだ。
部活帰りの男子高校生たちに混じってまた最後尾のスペースに収まった。さっき買った駅弁が早速邪魔になっていて、彼らの一人が横目でそれを見る。
『汽車の窓 はるかに北にふるさとの山見え来れば 襟を正すも』
もうそろそろ車窓左側には、岩手山が見えてきてもよいのだが、あいにく新幹線の高架が視界を遮っている。どこまでも憎たらしい新幹線だ。
そして岩手山が見えぬうちに、渋民駅に着いてしまった。上野から旅を共にしてきた啄木ともここでお別れ、という気分になる。もっとも、啄木は北海道も彷徨っているから、この先もまた出会うことがあるかもしれない。
その渋民駅と、JR花輪線が分岐する好摩(こうま)駅の間あたりが、この旅の中間地点になる。もうだいぶ来たような気がするが、それでもまだ半分なのだ。
好摩駅を出た頃には、だいぶ空席ができていた。だが、岩手山を見るまでは座れない、とばかりにがんばっていたら、その先でようやく姿を見せてくれた。もうずいぶん小さくなっていたが、やはりよい山である。
岩手山がようやく姿を見せてくれた(好摩~岩手川口間) |
田んぼの片隅で野焼きをしている光景を何度か見た。今はそういう時期なのか、夕方だからなのかわからないが、その煙に列車が突っ込む度に、懐かしく香ばしい香りが車内に漂う。
青森県に入り、青い森鉄道にバトンタッチ(目時) |
ここからは青い森鉄道で、また別会社の路線だが、特に変わったことはない。この列車はそのまま八戸まで行く。
青森へ、最後の列車もロングシート
八戸19:12→20:43青森
夕焼けが空を赤く染める(八戸) |
西の空が真っ赤に染まり、長い一日が暮れようとしていた。
旅に出ている時に迎えるこの時間帯は、何ともいえず好きだ。ほっとするような、寂しいような、胸のすくような、そんな複雑な気持ちになる。
八戸は今のところ東北新幹線の終着駅だから、青森までは在来線の特急列車も走っている。ちょうど新幹線が到着したようで、連絡口は乗り換え客で混雑していた。
いよいよ東北本線最後の列車である。
最後の青森行もロングシート(八戸) |
結局、仙台から青森まではすべてロングシートということになる。乗車時間は7時間近い。乗り継ぎはあるものの、旅行者にとってこれではあんまりである。しかし、もういいかげん文句を言う気にもならないから、おとなしく乗る。今度は空いていて、すぐに座れた。
八戸を発車する頃にはすっかり暗くなり、外の景色は何も見えなくなった。景色が見えなければもう何もすることはない。本でも読もうかと思っているうちに眠ってしまった。
途中、三沢駅、浅虫温泉駅に停まったのを何となく覚えているだけで、青森までの2時間、ほとんど眠っていた。列車内ではあまり眠れない性質のはずなのだが、これはどうしたことだろう。だから読者の皆さんには申し訳ないけれど、その間何もレポートすることがない。
頭がボーッとした中、列車はゆっくりと青森駅に到着した。
上野から735.6km、10本の列車を乗り継いでやってきた青森の空気は、ヒンヤリとしていた。
青森から夜汽車に乗って、いざ北海道へ! >>