JRには「大都市近郊区間」という制度があります。これは、多数の路線が入り乱れている都市圏で、主として運賃計算を簡便にするために定められたもので、東京、大阪、福岡、新潟の4都市圏にあり、それぞれ「東京近郊区間」「大阪近郊区間」「福岡近郊区間」「新潟近郊区間」といいます。

東京近郊路線図(PDF形式)

まずは、この「大都市近郊区間」についての次の規則をご覧ください。

大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
(旅客営業規則第157条第2項)
これをわかりやすく言うと、

大都市近郊区間内の駅から大都市近郊区間内の駅へ行く切符を持っている乗客は、その大都市近郊区間から出なければどのルートを通ってもかまいません。
その他にもいくつかの条件を満たせば、130円で近郊区間にめいっぱい乗ることが可能なのです。さて、その旅はいったいどんな旅になるのか。今回は東京近郊区間の「大回り乗車」をガイドが体験してきました。

なお、今回ガイドが作成したルート図と乗り継ぎプランはこちらです。

旅の始まりは東京駅

東京駅丸の内南口
東京駅丸の内南口から入場する
ゴールデンウィーク最終日の5月7日(日)。昨日までは快晴続きだったのに、今日にかぎって雨が降ったり止んだりするあいにくの空模様である。

今回の出発駅となる東京駅へは、6時30分頃に到着。早目に着いたのは、いったん改札の外へ出て切符を買いなおす必要があるからだ。券売機にぴったり130円を投入、迷わず左上にある「130」のボタンを押す。

そしていよいよ午前6時59分、東京駅丸の内南口の自動改札機に130円の切符を放り込み、改札内へと入場する。これから577kmも乗ろうとしているとは、まさか自動改札機のプログラムも気付くまい。もっとも、切符にはしっかり入場時刻が記録されているのであるが。

これで15時間後の秋葉原到着まで改札口の外へは一歩も出ることができない。いや、別に出ても良いのだが、それではこの旅の目的が無意味になる。いや、もともとこの旅自体が無意味か。まあいい、取りあえず予定の行動をとることにしよう。

東京 7:16 → 7:31 新宿(中央線快速・705T・クハ201-1)

中央線電車
何と1番目の列車はクハ201-1(東京)
中央線のホームに、今回の旅の一番電車が入線。何気なくその車番を見ると「クハ201-1」。何と、このクハ201のうち1番目に製造された車両ではないか!この壮大な旅の一番列車にふさわしい偶然に、思わず感動を覚える。これに気を良くして、今回は乗車する車両の番号を全部メモしていくことにした。

新宿 7:42 → 8:06 武蔵浦和(埼京線快速・787F・りんかい線70-010)

埼京線
埼京線と相互直通するりんかい線の車両(新宿)
東京駅から15分で、一回目の乗り換え駅である新宿駅に到着。数え切れないほど利用して見慣れた駅の風景だが、577kmの旅の途中だと思うと、また違ったものに見えてくるから不思議だ。

ところで「埼京線」というのは路線の通称であって、正式名称ではない。山手線(大崎~池袋間)、赤羽線(池袋~赤羽間)、東北本線(赤羽~大宮間)の寄せ集め路線である。赤羽から先は、東北新幹線と同じ高架上を走る。時々新幹線と真横ですれ違うのだが、なかなかの迫力だ。浮間舟渡駅を通過すると、荒川の鉄橋を渡り埼玉県へ。

武蔵浦和 8:10 → 8:40 府中本町(武蔵野線普通・706E・クハ205-147)

武蔵野線
武蔵野線の車両(府中本町)
武蔵野線の電車内は、いつもスポーツ新聞や競馬新聞を広げている人が目につく。実は武蔵野線と南武線は別名「ギャンプル路線」の異名を持つほど、なぜかその沿線に競馬、競輪、競艇といった公営ギャンブル施設が多いのだ。川崎競馬、東京競馬、多摩川競艇、京王閣競輪、立川競輪、浦和競馬、中山競馬、船橋競馬、船橋オートレースなどなど、ここまで並ぶと壮観である。

もともと貨物列車専用線として計画された武蔵野線は、全線が高架とトンネルで踏切はない。現在も重要な貨物幹線で、旅客列車ダイヤの間隙を縫って、貨物列車が頻繁に行き交っている。

新秋津駅手前で、再び東京都に舞い戻る。

府中本町 8:47 → 9:30 川崎(南武線普通・852F・クハ205-135)

府中本町駅
府中本町駅・東京競馬場口
府中本町で南武線に乗り換える。しかしほとんどの人は改札を出、東京競馬場へと続く長い渡り廊下へと向かうようだった。

南武線は、都県境である多摩川に沿って、立川と川崎を結ぶ路線である。しかし府中本町駅を出てすぐに多摩川を渡ってしまうと、もうこの川を見ることはない。

東京郊外を北西から南東方向へと延びる線のため、都心から郊外を結ぶ私鉄と交差する箇所が多い。京王線、小田急線、東急田園都市線、東急東横線……そのせいか乗り換え客の出入りが多く、車内は常に落ち着かない。

南武線
線路に草むす南武線
南武線に乗ると、何となく家々の裏庭を通るような気分がするのはなぜだろうか。こういう天気の時はなおさらである。線路内に雑草が青々と生えているところも多く、どこかのローカル線を想起させるが、乗客の数は多い。

連続立体交差工事が進捗し、都道との交差部にPCランガー橋が出現した矢野口駅を過ぎると神奈川県。これからしばらくは神奈川県内を走る。

川崎 9:39 → 10:15 茅ケ崎(東海道本線普通・523M・クハ211-2002)

東海道本線
東海道本線の車両(茅ケ崎駅)
「ジリリリ……」という懐かしい発車ベルに送られて川崎駅を出発。しかし、今年の3月に「湘南電車」と呼ばれた113系電車が引退し、東海道本線の旅が味気ないものになってしまったのは残念だ。

すぐに上りの寝台特急〔富士・はやぶさ〕とすれ違った。同じ鉄道旅行でも、こちらは一日中東京の周りをぐるぐる回るだけで駅から出られないのだから、ずいぶん差がある。とはいえ、130円だから文句は言えまい。

今朝はかなりの早起きだったので、さすがに少し眠気がやってきた。しばらくウトウトして目を覚ますと大船であった。山の中から大きな観音様がこちらを見下ろしている。

茅ケ崎 10:27 → 11:24 橋本(相模線普通・1057F・クハ204-502)

相模線
乗るときはこのボタンを押してドアを開ける
茅ケ崎はサザンオールスターズの地元で、列車の発車ベルをサザンの曲にしようという機運もあるのだが、JR側が難色を示している、と何かで読んだ気がする。そんなことを思い出しながら、相模線のりばへと向かった。

相模線は、茅ケ崎駅の1・2番線から発車する。この相模線、ほんの15年ほど前までは非電化で、ローカル線そのものだった。しかし沿線の宅地化が進み、通勤路線として整備することになり、全線電化された上、専用の新型電車が投入されるなど、飛躍的な変化を遂げた。

しかし、その車両のドアにはボタンが付いている。そう、相模線ではドアは自分でボタンを押して開閉するのだ。この仕組みを知らないと、乗れなかったり降りられなかったりするので要注意。

大回り乗車の旅はまだまだ続きます。橋本駅からは次のページへ>>