鉄道/おすすめ鉄道旅行

鹿島鉄道の旅(茨城県)(2ページ目)

各地に点在する地方私鉄。地域密着の営業であるがために、遠くから来る観光客に媚びを売る必要もないため、古き良き時代の鉄道風景が今もなお息づいています。そんな地方私鉄を訪ねる旅をご一緒に。

執筆者:高橋 良算

何もない借宿前駅

時間が止まったような借宿前駅
石岡駅を出発するとしばらくの間は住宅街を走りますが、小川高校下駅を過ぎると、やがて右手に日本で2番目に広い湖、霞ヶ浦が見えてきます。もちろん車窓から見えるのはそのほんの一部ですが。

霞ヶ浦をかすめて浜駅を過ぎると、丘陵を横切るちょっとした峠越えにかかり、キハ602はその老体にむち打つように、エンジンをうならせてゆっくりゆっくり坂を登って行きます。

坂を下りきる手前にある借宿前(かりやどまえ)駅では、その佇まいが気になりちょっと途中下車。駅はホームとコンクリートの待合所があるだけの簡素なもので、もちろん無人。駅の周囲には数件の民家がありますが、人の姿は見あたりません。

幹線道路から離れているので、聞こえる音といえば鳥のさえずりと木々のざわめきくらい。本当に静かで、ここでは時の流れが全く違っているかのような不思議な気分になります。駅にある時刻表は、最近上書きされたように見えるのになぜか漢数字縦書きでした。

次の列車まで少し時間があるので駅の周囲を散策してみます。すると2頭の猟犬を引き連れたハンターの方と遭遇。何でも、昨日撃ったキジを探しにきたのだとか。草をかきわけ、どんどん沼?の中へ入っていく犬の姿を眺めていると、都心からわずか数十分のところにいることを忘れてしまいます。

ホームの待合所にはいつの間にか地元の方が2人。傾きかけた陽に照らされてオレンジがかった駅が、穏やかな風景の中にとけ込んでいます。やがて遠くからディーゼルカーの音がゆっくりと近づいてきました。

個性的な駅舎の鉾田駅で名物のたいやきを

個性的なファサードの鉾田駅舎
再度下り列車に乗り込み終点の鉾田駅に到着です。鉾田駅は関東の駅百選にも選定された個性的な駅舎。これは一見の価値があります。そしてもう一つ、この鉾田駅名物といえば、駅舎内の売店で売られている「たいやき」。小倉・もち入り・カスタード・スイートポテトの4種類があり、それぞれ1個100円。もちろんその場で焼いているものです。

やはりこういう名物が一つでもあるととても来た甲斐があるもの。そしてまた来よう、と思うのです。そして「鹿島鉄道一日フリーきっぷ」(大人1,100円、小人550円)所持者が5個以上買うと1個サービスしてくれます!なお、この売店の営業時間は9:30~17:30ですが、日曜はお休みですのでご注意ください。


霞ヶ浦に沈む夕日で感動のラスト

浜駅近く、霞ヶ浦湖畔からの夕日
アツアツのたいやきをほお張りながら、石岡行の上り列車に乗り込みます。そろそろ日も暮れかかってきましたが、もう一ヶ所、浜駅で途中下車しましょう。この駅で下車すれば霞ヶ浦の湖畔はすぐそこ。アサザという植物の群生地があり、夏から秋にかけてのシーズンには、黄色く小さい花が咲きほこるそうです。

この鹿島鉄道は大正11年に鹿島参宮鉄道という名前で開業しています。そのことからわかるように、鹿島神宮までの参拝客を運ぶのがおもな目的の鉄道で、当時は浜駅で船に乗り換えていたというのですから、時代は変わったものです。

さて、歩いて数分で霞ヶ浦湖畔に出ると、ちょうど夕日が遠くに沈んで行くところ。その荘厳な美しさに、寒さを忘れてしばし見とれてしまいました。鹿島鉄道の旅を締めくくるには最高のロケーションです。

短い時間でしたが、何とも充実した旅が満喫できる鹿島鉄道。皆さんもぜひ一度訪れてみてください。

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鹿島鉄道
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