パイロット「AIRSTEP(以下、エアステップ)」各495円(税込)。芯径0.5mmのシャープペンシル。軸色は、左からパーキングブラック、アーバンホワイト、エアステップバイオレット、ダスクピンク、シーブルーと、限定色のケチャップレッド、マスタードイエロー
「Dr.Grip」とは全く違う学生向きシャープペンシルを考えた5年間
「企画の始まりは、もう5年くらい前になります。パイロットには『Dr.Grip(以下、ドクターグリップ)』という主力製品があり、ありがたいことに『パイロットのシャープペンシルといえばドクターグリップ』といったイメージを持っていただいているのですが、500円前後の価格帯にそれしかないのはもったいないということで、何か作れないかという話になったんです」と、「エアステップ」の開発を担当されたパイロットコーポレーション筆記具企画第一課の多賀丈恭さん。 確かに、「ドクターグリップ」シリーズは、素晴らしい製品ですし人気も高いけれど、振ると芯が出る「フレフレ機構」を搭載しているため、太軸で、どうしても重くなります。それが合わないという層は確実にいるでしょうし、製品のラインアップとしても、細軸で軽いシャープペンシルの定番が欲しいというのは、メーカーとしても当然考えるわけです。安価で細軸で軽い。ノックなしに長く書ける新機構搭載
「ただ、決まっているのは価格帯と細くて軽いということだけで、他は全くのゼロから企画が始まったので、選択肢が多過ぎて悩みました。ただ、ドクターグリップのフレフレ機構のように、持ち替えずに芯が出せる機構は入れたいと思っていました。そこで、製品化されていないストックの中から選んだのが、芯の先を紙に押し当てるだけで、ガイドパイプの長さ分は継続して筆記できる機構です」と多賀さん。通常、シャープペンシルは、ペン先のガイドパイプから数ミリだけ芯を出して筆記します。そして、出した分の芯が減ってパイプが紙に当たるようになると、ノックボタンなどを使って芯を出して、また書き続けるということになります。
しかし「エアステップ」の場合、芯が減ってパイプが紙に当たったら、芯の先を紙に押し当てるようにすると、パイプの先から芯が顔を出して、そのまま書き続けることができるのです。 パイプの先を押し付けると、パイプと芯が一緒にペンの中に沈み込むのですが、その際に、チャックの後ろに仕込まれたバネの力で芯は押し込む前の位置に戻り、一方でパイプは引っ込んだままなので、その分だけパイプの先に芯が現れるという仕掛け。
要するに、ペン先を紙に押し当てる動作だけで、最初にノックボタンで出したパイプと芯の長さ分は、ペンを持ち替えることなく書き続けられるということです。
芯折れを防ぐために、1回のノックで書ける距離は、芯が減るのに合わせてガイドパイプが沈み込む仕掛けのシャープペンシルと同じですが、パイプを引きずらなくてもよいというのが魅力。しかも、この機構を実現するためのバネが筆記時の筆圧をうまい具合に吸収して、ソフトな書き味を実現しているので、書いていて気持ちいいのです。
異素材を使うも、一体感のあるポップなカラーリング
書き心地はもちろん、このシャープペンシルの魅力は、そのデザインと色使いにもあります。例えば、レジン製の軸と尻軸のキャップ、エラストマー製のグリップの3つのパーツの色が見事に合わせてあることで生まれる一体感です。「軸の色合わせはデザイナーが徹底的にこだわった部分です。軸の部分も、樹脂にマット感を出すためにフィルムを1枚巻いているんです。その上で色合わせをしているので、本当に難しくて。しかも、限定カラーのマスタードイエローとケチャップレッドは、ハンバーガー屋のケチャップとマスタードのイメージを再現したくて、実際に使われているボトルまで買って色合わせしたんです」と多賀さんが笑います。
「エアステップ」のボディーカラーは、定番色のパーキングブラック、アーバンホワイト、エアステップバイオレット、ダスクピンク、シーブルーの5色に、限定色のマスタードイエローとケチャップレッドが加わった全7色。どの色もビビッド過ぎず、くすみというほどではなく、絶妙な明るさがあるのが特徴です。現代風なポップさが軽快な印象を与えて手に取りやすく、製品コピーの「毎日の書くを、アガる一歩に。」を実現しているように感じます。 そして、エラストマー製のグリップ部分が、筆者の指にはとてもフィットして握りやすく気に入っています。独特な波形のグリップなのですが、エラストマーの柔らかさと波打った形状が、滑り止めと指先への負担軽減の両方にうまく効いているような気がします。
細部まで考え抜かれた「アガる」シャープペンシル
ノックボタンを尻軸に置かず、同社の「フリクションボールノック」のように、クリップをスライドさせて芯を出すようにしているのも、一見奇をてらっているように思えます。しかし実は、ノックボタンまでの距離を短くして素早くノックできるようにすると同時に、尻軸にボタンが突き出すことでデザインの一体感が失われることを避けているのです。さらに、尻軸の消しゴムを使う時、クリップを押さえながら使うことで、力を入れても消しゴム部分が引っ込まないなど、機能やデザインと直結しているのです。 さらに初回生産分には、軸に貼って遊べるステッカーを付属したり、このペンのためのオリジナルキャラクターを作って、そのキャラで遊べるゲームまで公式Webサイトに用意したりするなど、「書く」ことが日常である学生などに向けて、トータルで気分を上げてもらおうというコンセプトの徹底ぶりが、このシャープペンシルをより魅力的にしていると思うのです。
これだけのアイデアと技術を詰め込んでいるからこそ、デザインに惹かれて手に取った筆者でも、書いてみると「あれ? なんかいいぞ」と思えたのでしょう。入手以来、とても気に入って、使い続けています。














