Q:63歳で、できれば扶養内で働きたいのですが、106万円の壁や扶養の基準が分からなくなってしまいました
「現在63歳で、51人以上の企業でパート勤務しています。扶養内で働きたいのですが、『106万円の壁』や『扶養の基準』と老齢年金の扱いがよく分からなくなっています。老齢年金も収入に含まれるのでしょうか?また、時給が上がるため、どのくらいまでなら扶養内で社会保険に入らずに働けるのか知りたいです」(あんぱんさん)
扶養内で働ける収入はいくら?(画像:PIXTA)
A:扶養内で働けるかどうかは「106万円の壁」とは別に判断されます。63歳の場合、老齢年金は扶養判定の収入に含まれます
まず押さえておきたいのは、「106万円の壁」と「社会保険の扶養の基準」は、まったく別の制度だという点です。「106万円の壁」とは、社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するかどうかの基準のことです。あんぱんさんのように、従業員51人以上の企業で働いている場合、次の条件を全て満たすと社会保険に加入することになります。
- 週20時間以上働いている
- 月額賃金が8万8000円以上(年収換算で約106万円以上)
- 雇用期間が2カ月超見込まれる
- 学生ではない
この判定では、老齢年金を受け取っているかどうか、年金額がいくらかは関係ありません。あくまで「働き方」と「賃金」が基準です。
条件に当てはまると、給与から社会保険料が天引きされ、いわゆる「106万円の壁を超えた」状態になります。
社会保険に加入すると手取りは一時的に減りますが、将来の老齢年金では、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされます。また、病気やけがで働けなくなった場合の傷病手当金、障害年金や遺族年金といった保障も手厚くなります。保険料は会社と折半になる点も特徴です。ただしこの106万円の壁については、今後撤廃される予定となっています。
扶養の基準とは?
一方、「扶養の基準」とは、配偶者(夫)の健康保険の扶養に入れるかどうかの判定です。この場合、収入基準が重要になります。社会保険の扶養では、年間収入が原則130万円未満ですが、60歳以上の人や障害のある人は180万円未満が基準になります。さらに、同居している場合は、夫の年収の2分の1未満であることも求められます。
あんぱんさんは63歳ですので、扶養の収入上限は年収180万円未満となります。ここで注意したいのが、この年収には老齢年金も含まれるという点です。
自分で社会保険に加入すると扶養の話は関係なくなる
もしあんぱんさんが「106万円の壁」を超えて自分で社会保険に加入することになると、健康保険料は自分で負担することになります。そのため、夫の健康保険の扶養に入れるかどうかという判断自体が不要になります。また、勤務先によっては家族手当の支給条件が別途定められている場合もあります。収入が増えることで手当が支給停止になるケースもあるため、その点は事前に確認しておくと安心です。
どこを基準にするかで考え方が変わる
106万円の壁は働き方と賃金が基準で年金額は関係ありません。扶養の基準は年収で判断され、老齢年金も収入に含まれます。扶養内で働き続けたいのか、将来の保障を重視して社会保険に加入するのか、何を優先するかで選択は変わります。制度を正しく理解したうえで、無理のない働き方を検討してみてください。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)






