Q:現在64歳です。62歳から「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っています。65歳になると、老齢基礎年金に今の特別支給分がそのまま上乗せされるのでしょうか? 年金額は変わりますか?
「現在64歳です。62歳から特別支給の老齢厚生年金を受給しています。65歳になると、老齢基礎年金に今もらっている金額がそのまま上乗せされるのか、それとも年金額が変わるのかが気になります」(ちゃんさん)
65歳になると年金はどう変わる?(画像:PIXTA)
A:65歳になると年金は再計算されます。特別支給の老齢厚生年金分がそのまま上乗せされるわけではありませんが、結果的に近い金額になることが多いです
結論からいうと、65歳に到達すると、現在受け取っている「特別支給の老齢厚生年金」は終了し、新たに「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の受給が始まります。今の特別支給の老齢厚生年金が、そのまま老齢基礎年金に上乗せされる仕組みではありません。ただし、厚生年金の加入期間や報酬額に基づいて年金額が再計算されるため、結果として65歳前後で受け取る年金額が大きく変わらないケースも多いのが実情です。
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳へ段階的に引き上げられた際、受給者の生活に急な影響が出ないよう設けられた経過措置です。昭和60年の制度改正により導入されました。
この年金を受け取れるのは、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金に1年以上加入していた人で、性別ごとに定められた受給開始年齢に該当する人です。制度上、現在64歳、1961年生まれで62歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは女性に限られます。質問者の「ちゃん」さんが62歳から受給していることから、1961年生まれの女性で、厚生年金に一定期間加入していたと考えられます。
65歳になる前と後で、年金の中身はどう違う?
65歳になる前の特別支給の老齢厚生年金は、「報酬比例部分」と「定額部分」で構成されます。ただし、女性の場合、昭和29年4月2日以降生まれの人は定額部分がなく、報酬比例部分のみが支給されています。ちゃんさんが受け取っているのも、この報酬比例部分のみと考えられます。一方、65歳以降に受け取る老齢厚生年金は、報酬比例部分に加えて、「経過的加算」や条件を満たせば「加給年金額」が加算される仕組みです。
経過的加算とは、65歳前に支給されていた定額部分と老齢基礎年金との差額を調整するためのもので、当面の間、老齢厚生年金に上乗せされます。また、厚生年金の加入期間が20年以上あり、生計を維持している配偶者や子がいる場合には、加給年金が加算されることもあります。
厚生年金の加入期間の違いにも注意
特別支給の老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金の加入期間が1年以上なければ受け取れませんが、65歳以降の老齢厚生年金は、加入期間が1カ月以上あれば受給できます。そのため、特別支給の老齢厚生年金の対象外だった人でも、65歳からは老齢厚生年金を受け取れるケースがあります。ちゃんさんが65歳になると、それまでの厚生年金の加入期間や報酬額をもとに年金額が再計算され、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受け取る形に切り替わります。特別支給の老齢厚生年金がそのまま上乗せされるわけではありませんが、制度上、金額が大きく変わらないよう調整されているケースが多いのが特徴です。
不安がある場合は、誕生日が近づいたタイミングで年金事務所に確認すると、より具体的な金額を把握できるでしょう。
※専門家に取り上げてほしい質問がある人はこちらから応募するか、コメント欄への書き込みをお願いします。
監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)






