年金・老後のお金クリニック

昭和36年生まれの中小企業経営者。65歳から、月の報酬50万円だったら年金11万円は満額受給できる?

老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、中小企業経営者の方からの在職老齢年金制度についての質問です。専門家に質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。※サムネイル画像:PIXTA

京極 佐和野

京極 佐和野

50代から考えるライフプラン ガイド

日本FP協会認定 CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタント、JCDA認定CDAを保有し、マネープランと働き方の両面からアドバイス。人生100年時代の「自分らしく輝くセカンドライフ」実現にむけて、総合的な支援に従事。FP相談は20年以上の実績、研修・講演など活動は多岐に及ぶ。

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老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、中小企業経営者の方からの在職老齢年金制度についての質問です。専門家に質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。

Q:昭和36年8月生まれの中小企業経営者です。65歳から年金(月11万円)を受給予定です。報酬を月50万円にしても支給停止されませんか?

「昭和36年8月生まれの中小企業経営者です。65歳から老齢厚生年金(月11万円)を受け取ろうと考えています。会社役員として働き続け、役員報酬は自分で設定できます。在職老齢年金制度で年金が減額されないようにするには、役員報酬を月額50万円程度にしても問題ないでしょうか? 支給停止にならない『年金と報酬の合計額』はどのくらいですか?」(Fe工藤さん)
在職老齢年金制度で支給停止されない報酬とは?(画像:PIXTA)

在職老齢年金制度で支給停止されない報酬とは?(画像:PIXTA)

A:65歳以降の年金と報酬の兼ね合いを考える際は、標準報酬月額と賞与の扱い、報酬設計のタイミング(4~6月)を押さえることがカギ。在職定時改定とあわせて、制度を生かした働き方が重要です

昭和36年8月生まれのFe工藤さんは来年8月に65歳を迎えられ、9月から老齢厚生年金(月11万円)の受給が始まりますね。在職老齢年金という制度があることはすでにご存じかと思いますが、ここではその仕組みと、報酬をいくらまで設定すれば支給停止にならないかという点に絞ってお伝えします。

在職老齢年金制度による支給停止の仕組みとは

65歳以上で老齢厚生年金を受けながら働くと、「在職老齢年金制度」により、年金が一部または全額停止されることがあります。年金と給与の合計が一定額を超えると、超過分の半額が年金から差し引かれる仕組みです。

2025年度の支給停止基準額は月51万円です。2026年4月以降は、在職老齢年金の支給停止基準額が月62万円に引き上げられます。年金月額が11万円の場合、報酬は最大51万円まで設定しても支給停止にはなりません。

報酬額が48万5000~51万4999円の範囲であれば、標準報酬月額は50万円となり、年金は満額受給できます。この範囲内で報酬を設計することで、制度上の支給停止を避けることが可能です。

標準報酬月額と賞与の扱い

支給停止の判定は、実際の報酬額ではなく「標準報酬月額」と「過去1年間の標準賞与額の合計÷12」の合算で行われます。今回の試算は、役員賞与がない前提でお伝えしています。賞与がある場合はその分も加味されるため、支給停止の可能性が高まります。

標準報酬月額は、毎年4~6月の報酬をもとに決まり、9月から翌年8月まで適用されます。つまり、2026年4~6月の報酬が48万5000~51万4999円の範囲に収まっていれば、標準報酬月額は50万円となり、9月以降の支給停止を避けられる設計になります。

詳しくは標準報酬月額表(日本年金機構)をご確認ください。

在職定時改定の仕組み

65歳以降も厚生年金に加入して働くと、年金額は毎年見直されます。これが「在職定時改定」です。前年9月~当年8月までの加入実績が反映され、10月分(12月受取分)から年金額が増額されます。例えば標準報酬月額50万円で1年間働くと、年額で約3万3000円の増額が見込めます。詳しい計算方法は年金額の計算方法(日本年金機構)をご確認ください。

在職定時改定の基準日は9月1日です。この時点で厚生年金に加入しているかどうかが、年金額の改定に反映されるかの判定基準となります。

ただし、支給停止の回避や標準報酬月額の調整を目的とするなら、4~6月の報酬が基準となるため、報酬の見直しは4月から始めるのが効果的です。

Fe工藤さんの場合、2026年春の報酬設計がその後の年金受給と増額に直結します。制度の仕組みと反映時期を踏まえた報酬設計が、損をしない働き方につながります。

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