モラハラ(モラルハラスメント)という深い闇の中から、徐々に人間らしい優しさを取り戻した夫たちのケースには、ある共通点が見られました。
今回は、長年のカウンセリングの中で見えてきた「モラハラ夫が変わった2つのポイント」をご紹介します。離婚に踏み切る前に、「それでも一度だけ、できることをやってみようかな」と思えたら、ぜひ実践してみてください。
<目次>
モラハラを続ける理由は「自信のなさ」
まずお伝えしたいのは、「モラハラ夫は基本的に変わらない」という現実です。これは、筆者がこれまでに受けた数多くの相談を振り返っても、例外はほとんどありません。モラハラ夫は、なぜ変わらないのでしょう。その背景には「自信のなさ」があるようです。
一見、強気で自信満々に見えるモラハラ夫ほど、実は心の奥に深い劣等感を抱えています。自分に自信がないからこそ、妻を支配し、そのことで安心感を得ようとするのです。まさに“弱い犬ほどよく吠える”ということわざに通じる構図です。
ほかにも、「子どものころから親の怒鳴り合いを見て育った」「父親が母親にモラハラをしていた家庭環境だった」という場合、自分もモラハラ夫になってしまっているケースも少なくありません。「家庭は、どんな自分でも受け入れてもらえる場所だ」という誤った思い込みが刷り込まれているため、妻への甘えや攻撃が止められなくなっていくのです。
そして、モラハラ夫に共通しているのは、「自分がモラハラをしている自覚がない」という点です。暴言を吐いても、「これはアドバイスだ」「教育してあげている」と本気で信じていることも多いもの。妻が「あなたの言葉に傷ついている」と訴えても、ピンとこないどころか逆ギレしてしまうことも珍しくないのです。
では、そんな彼らが「気付き」「変わる」ことがあるとすれば、それはどのような時なのでしょうか。奇跡のような変化を生んだ「モラハラ夫が改善する2つのポイント」をお伝えします。
「モラハラ夫」改善ポイント1|第三者を間に入れる
モラハラ夫を改善するためには、第三者の介入が効果的です。モラハラは、夫婦だけでは解決できないことがほとんどだからです。特に、感情と感情のぶつかり合いが起こっている夫婦間では、冷静な判断も現実的な対話もできません。実際に筆者が関わったケースでも、モラハラ夫が変化したケースの多くは夫婦問題の専門家が間に入り、戦略的に関係修復を試みた時でした。
さらに効果的な方法としては、公正証書を作成することが挙げられます。「もし再びモラハラ行為があれば、この条件で離婚します」といった内容を、法的な文書として明確に残しておくのです。
この時、妻の側には専門家(夫婦問題の専門家や弁護士、公証人など)が寄り添い、モラハラ夫に現実をつきつけるようにします。「あなたの行為は社会的にモラハラとみなされます」と客観的に示された時にはじめて、“自分が加害者である”という事実に気付く夫もいるのです。
それまで「自分は悪くない」と思っていた人が、公的な場で現実を知った瞬間、そこでようやくこれまで妻をどれだけ傷つけてきたかに気付き、反省の言葉を口にするようになります。この瞬間を迎えられた夫だけが、モラハラから抜け出す可能性を持てるといっていいでしょう。
第三者を入れることは、怖いことではありません。むしろ、関係修復への唯一の入り口なのです。
「モラハラ夫」改善ポイント2|感情的に話さない
モラハラ夫に対しては、感情的に話さないことも重要なポイントです。妻が勇気を出して「あなたの言葉に傷ついている」と伝えた時、多くのモラハラ夫は“責められた”と感じ、防御反応を起こします。「そんなつもりはない」「被害妄想だ」と逆上し、話が成り立たなくなるのです。
モラハラをやめさせるためには、感情ではなく事実で伝えることが必要です。例えば、「昨日『そんなことも分からないのか』と言われた時、とても悲しい気持ちになった」「あの発言以来、あなたと話すのが怖くなっている」といったように、淡々と“起きたこと”と“自分への影響”を伝えるのです。
ここでの目的は、夫を責めることではなく、事実の共有と自分の気持ちを明確に伝えること。怒りではなく、静かな言葉で事実を述べると、相手の心にわずかでも届く瞬間があります。
感情的にならず、冷静に話すことは難しいかもしれません。しかし、それこそが「夫が自分の言動を見つめ直す、数少ないチャンス」なのです。
「相手を変える」より「自分を守る」を優先する
モラハラ夫が変わる確率は、決して高くはありません。しかしながらゼロではありません。変化を引き出すカギは2つ。1. 第三者を間に入れて現実を“見せる”こと
2. 感情ではなく事実で“伝える”こと
これに尽きるのです。そしてもうひとつだけ、覚えておいてほしいことがあります。「相手を変えること」よりも大切なのは、「自分を守ること」を優先してほしい、ということです。どんなに頑張っても相手が変わらない時、離れる決断もまた「自分を大切にする行動」です。
本当の強さとは、相手を傷つけることではなく、自分の弱さを受け入れたうえで、人と向き合うこと。モラハラの渦中にいても、「まだ話し合う余地があるかもしれない」と感じたなら、焦らずに勇気を出して信頼できる第三者の力を借りてください。
離婚はいつでも、最終手段とすることができます。それより前にできることを、ひとつでも試してみませんか。それが、未来を切り拓く奇跡の第一歩になるかもしれません。








