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日本六古窯の1つ、常滑で生まれた「INAX(現LIXIL)」のミュージアム
この常滑で代々続く、常滑焼の名工の家に生まれた四代・伊奈長三郎の長男・初之烝と、その息子・長太郎は、帝国ホテル二代目本館(ライト館)の煉瓦やテラコッタを製作する「帝国ホテル煉瓦製作所」に技術顧問として招かれました。彼らは建築家フランク・ロイド・ライトの厳しい要求に応えて国内外で高く評価され、その後「伊奈製陶」を創立。これが後の「INAX」となりました。現在は、「LIXIL」の水まわり製品を中心としたブランドとして、国内外に広く知られています。 常滑駅から、道中に展示されている常滑焼の壺やオブジェを撮影しながら歩くと、約25分でINAXライブミュージアムに到着します。 こちらは土と焼き物をテーマに、見て、触れて、学べる、体験・体感型ミュージアムです。 四季折々の花や木々で彩られた敷地には、7つの建物が点在しています。特に、大正時代に建てられた土管工場の窯と建屋、煙突を保存・公開する「窯のある広場・資料館」は、木造の小屋組みや煉瓦造りの窯が見どころです。 まず、窯の中では、土管の窯炊きの様子をプロジェクションマッピングで体感できます。 そして、研究家が常滑市に寄贈した紀元前から近代までの6000点を母体に、7000点以上に及ぶ世界の装飾タイルコレクションから選りすぐられたタイルが国や地域ごとに大別されて壁一面に展示されたり、空間を復元している「世界のタイル博物館」。 ここでは、タイルの前身であるクレイペグという円錐状の焼き物を当時と同じように手作りし、5500年前のメソポタミア地域(ウルク)の装飾壁を再現した展示や、12種類の形と7色のモザイクタイルを組み合わせて再現したイスラームのタイル張りドーム天井の空間などを堪能できます。 さらに、大正から昭和初期の建築用タイルやテラコッタの逸品を展示する「建築陶器のはじまり館」などもあります。常滑焼やタイルに興味がある筆者は、これらの胸躍る展示施設が並ぶ様子に時間を忘れて見入ってしまいました。
日本のトイレの歴史をひもとく「トイレの文化館」がオープン
今回最も楽しみにしていたのは、2025年4月にオープンしたばかりの「トイレの文化館」です。「LIXIL」の水まわり・タイル部門100周年(※)を記念し、7つめの館として開設されました。
「トイレの文化館」外観
芸術品! 美しく染められた明治・昭和初期の古便器
ここでは、明治時代から昭和初期に瀬戸で作られた陶磁器製の染付便器18点が追加展示されています。 大便器の金隠し(※前方に設けられた半球状のカバー)だけでなく、内側や縁にまで細やかな絵付けが施された作品は、粋を感じさせるものばかりで、古便器の世界に一気に引き込まれました。
染付花鳥図(菖蒲に雀)角形大便器(明治後期・瀬戸)
豊富な体験メニューに、トイレにちなんだお土産も!
「INAXライブミュージアム」は見るだけでなく、豊富な体験メニューにも定評があります。筆者は予約不要でいつでも体験できる「タイルdeリース」作りに挑戦しましたが、ほかにも、予約制の「プチトイレ絵付け」や大人気の「光るどろだんごづくり」(60分で1個1200円)など、全7種類が用意されています。 最後にミュージアムショップで、お土産を選びました。さまざまなグッズが並ぶ中で、トイレにちなんだお菓子「トイレの最中(さいちゅう)」を発見。これは、トイレの形をした最中皮に、自分で餡子(あんこ)を詰めていただくものです。そのユニークな見た目だけでなく、常滑の老舗和菓子店「大蔵餅」が手掛ける餡子と最中皮のハーモニーは絶品でした。
日本遺産といっても過言でない、江戸時代からの染付古便器が一堂に集まる新施設は、海外からも脚光を浴びています。「便器は白」という固定観念が覆されるとともに、便器にも美や快適性を求めるという、古き良き日本のおもてなし文化を感じることができました。
※伊奈製陶株式会社は1924年設立
「INAXライブミュージアム」
・住所:愛知県常滑市奥栄町1-130
・TEL:0569-34-8282(体験教室専用電話:0569-34-6858)
・開館時間:10:00~17:00
・休館日:水曜(祝日は開館 ※2025年12月24日(水)は特別開館日)
・入館料:大人1000円、学生800円、中高生500円、小学生250円、シニア(70歳以上900円)
・交通アクセス:常滑駅から徒歩25分、またはタクシーで約6分




























