
Yahoo!ファイナンスの「株主優待人気ランキング」の中から、日本株に詳しい金融文筆家の田代昌之さんに「特に注目したほうがいい」という銘柄を厳選・紹介いただくシリーズ、今回は10月権利確定銘柄を3つ、取り上げます。
1: 神戸物産<3038>
最初に紹介するのは、業務用食品スーパー「業務スーパー」を全国展開している神戸物産<3038>です。都道府県全てに業務スーパーを展開するだけでなく、国内27拠点に食品加工工場を持ち、海外に約500社の協力工場があるなど、自社アイテムと海外直輸入アイテムの販売にも力を入れています。また「神戸クック・ワールドビュッフェ」や「馳走菜」などの外食・中食事業にも参入しています。
同社の優待は、業務スーパーで利用できる電子マネー「Gyomucaカード」。100株以上の保有で、保有株数に応じた電子マネー額を年1回受け取れます。長期保有者には、電子マネーの増額という特典もあります。なお、「Gyomucaカード」を同額相当の「VJAギフトカード」あるいは同社の「商品詰め合わせ」と交換することも可能です。 田代さんによると、神戸物産は「自社グループで原材料調達から製造・物流・販売までを担う『製販一体』のビジネスモデルを特徴とし、低価格・大容量の商品を安定的に供給している」といいます。そのため「PB商品(プライベートブランド)の強化によって価格競争力を確保しているほか、フランチャイズ方式で出店を拡大し、安定した収益構造を構築。足元では、週末のまとめ買い需要に対応した冷凍食品や惣菜分野が業績のけん引役となっています」と評価しています。
業績については「好調に推移しており、2025年10月期予想を含めると上場以来、26期連続での増収が見込まれている」そうで、「米国による関税政策で行き場を失った輸出品が同社に集まり、業績に寄与するといった思惑を背景に5月には上場来高値(分割等考慮)4,922円をつけました。その後、利益確定売りが強まっていましたが、4,000円水準で下げ止まりました。増収増益見込みという好業績期待が背景にありますので、株価の下値余地は限定的と考えます。押し目を狙いたいところです」と教えてくださいました。
2:リネットジャパングループ<3556>
次に紹介するのは、ネットリユース事業、ネットリサイクル事業を展開するリネットジャパングループ<3556>です。宅配買取の「ネットオフ」やパソコン無料回収の「リネットジャパン」を運営するほか、障害者の雇用創出事業や、カンボジアで自動車整備士などを育てて日本での就労をサポートする海外HR事業にも力を入れています。
同社の優待は「ネットオフ」で使えるクーポンと買い物券。100株以上の保有で、保有期間に応じたクーポンや買い物券を年2回受け取れます。さらに1,000株以上保有している場合は、年2回1万5,000円分のデジタルギフト(QUOカードPayなど)も受け取れます。また、25周年記念優待として「300株以上の保有者に3万円分のデジタルギフト贈呈」なども現在実施中です。 同社の業績について田代さんは、「前期の2024年9月期は、売上拡大と裏腹に人件費増加などが影響し収益性が悪化。財務体質の弱体化に対応するため、不採算事業の整理と成長事業への集中など構造改革を実施しました。前期は大幅な赤字を計上しましたが、構造改革が奏功し、今期は黒字転換を見込んでいます」とのこと。
そのため、「黒字転換という大きな業績の変化を材料に、株価は4月の年初来安値210円から上昇し、8月下旬には年初来高値943円をつけました。4倍強の高騰となったのは構造改革への期待感が非常に大きいことの表れだと考えます」としています。
なお、同社は「環境省・経済産業省から認定を受けた小型家電リサイクル法の認定事業者で、全国の自治体や大手家電量販店などと提携し、家庭で不要になったパソコンや小型家電を宅配回収する仕組みを提供」しているといい、「資源有効利用促進法や家電リサイクル法でビジネスを展開していることで、大きな法改正がない限り、堅調な業績は今後も見込めるでしょう。目先は2019年以来の1,000円台回復を意識したいところです」と教えてくださいました。
3:正栄食品工業<8079>
最後に紹介するのは、製菓・製パンを中心とした食品業界向けに原材料の供給を行う正栄食品工業<8079>です。同社は乳製品、ナッツ、ドライフルーツ、栗製品、油脂類などの食品商社で、国内7工場、海外3工場で製品の加工製造も手掛けています。また米国ではクルミなどの農園も経営し、中国にも進出中です。
同社の優待は、同社製品詰め合わせ。100株以上の保有で年2回受け取れます。
同社の優待制度を利用したAll Aboutの読者からは、「優待民、みんな大好きお菓子詰め合わせセット。秋に届くのは『サク山チョコ次郎』が入っているので特にいいですね(※)。サラダに振りかけるクラッシュナッツなど、自分で買ったことがないけど使ってみたらよかった製品もあり、こういうのは優待ならではの発見でうれしいです」(女性・39歳・新潟県)といったコメントをいただきました。
※編注:商品詰め合わせの内容はその時々で変更があります 同社の特徴について、田代さんは「製菓・製パン向けの業務用原材料供給に強みを持ち、大手製菓メーカーやベーカリーへの安定供給網を確立している点が大きな特徴です。また、自社ブランド商品『正栄デリシィ』や『正栄食品』の名で一般消費者向け商品も展開し、知名度を高めている」としています。
強みについても「世界各国からナッツやドライフルーツを直接仕入れる体制を持ち、品質とコスト競争力を確保している点と、製造から販売までの一貫体制により、業務用と家庭用の両市場に柔軟に対応できる点です。足元では、健康志向や嗜好の多様化に応じ、チョコレートとナッツを組み合わせた機能性・付加価値型製品の展開にも注力しています」と教えてくださいました。
業績については「今期は、米国関係会社などでの労働訴訟に基づく損害賠償金に関わる特別損失の計上を受けて、純利益見通しの下方修正を発表しました。ただ、価格引き上げが奏功し、売上高、営業利益、経常利益は上方修正しています。あくまで特損による影響ですので、来期以降に対する業績の影響は限定的と考えます。株価も年初来高値水準で推移していることから、悲観的に見る必要はないでしょう」とのことです。
田代昌之(金融文筆家)
新光証券(現みずほ証券)やシティバンクなどを経て金融情報会社に入社。アナリスト業務やコンプライアンス業務、グループの暗号資産交換業者や証券会社の取締役に従事し、2024年よりフリー。ラジオNIKKEIでパーソナリティを務めている。
※株主優待に関する情報は、記事執筆時点のものになります。詳細につきましては、各社が発表している株主優待内容をご確認ください。
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