Q:63歳非正規勤務で障害者手帳を申請中。年内に退職し、失業保険と障害厚生年金の申請を検討しています。現在は特別支給の老齢厚生年金を受給中ですが、失業保険と年金の併給は可能ですか?
「63歳で現在、障害者手帳の申請手続き中です。非正規で働いており、『特別支給の老齢厚生年金』を受給していますが、今後は『障害等級3級の障害厚生年金』の申請も予定しています。年内には非正規の仕事を退職する見込みで、失業保険の受給も検討中です。そこで、以下の点について悩んでいます。
在職中は『障害厚生年金』を受けると、『特別支給の老齢厚生年金』は併給できないと聞いていますが、退職して失業保険を受給する場合、『障害厚生年金』は同時に受け取れるのでしょうか? 失業保険を受け取っている間に65歳を迎える可能性があります。この場合、65歳以降も失業保険と老齢年金の両方を同時に受給できるのでしょうか?
一人暮らしのため、生活のためにも再就職して働き続ける必要があります。しかし、障害年金・老齢年金・失業保険が関わるこの時期は制度が非常に複雑で、整理が難しいと感じています。どうかアドバイスをお願いいたします」(ふぅさん)

退職して失業保険を受給する場合、「障害厚生年金」は同時に受け取れる?(画像:PIXTA)
A:退職後に失業保険を受給する場合、「障害厚生年金」とは併給できます。一方、「特別支給の老齢厚生年金」は、失業保険と同様に生活支援を目的としているため、支給が停止されます
ふぅさん、こんにちは。「制度ってどう使えばいいの?」──そんな疑問に応えるため、障害年金・老齢年金・失業保険(正式には雇用保険の基本手当(失業等給付)といいます)の重なりと選び方のポイントをまとめました。
■ポイント1:在職中の「障害厚生年金」と「特別支給の老齢厚生年金」は併給できない
在職中に「障害等級3級の障害厚生年金」を受給すると、「特別支給の老齢厚生年金」は支給停止になります。同じ厚生年金制度から複数の給付を同時に受け取ることはできないため、制度上、どちらか一方を選ぶ形になります。
■ポイント2:退職後は「障害厚生年金」と「失業保険」の併給が可能
退職後にハローワークで「求職の申込み」をすると、失業保険(基本手当)を受給できます。この期間は、「障害厚生年金」との併給が可能です。
障害年金は生活支援、失業保険は再就職支援と目的が異なるため、両方受け取れます。
一方、「特別支給の老齢厚生年金」と失業保険は併給できません。制度上、老齢年金は生活保障、失業保険は再就職支援と位置づけられていますが、失業保険も実質的に生活費の支えとなるため、重複して受け取ることはできません。
選択にあたっては、金額だけでなく「障害年金は非課税」「老齢年金は課税対象」といった違いも踏まえ、手取り額で比較することが大切です。生活設計に沿った納得の選択を心掛けましょう。
■ポイント3:65歳以降は「老齢年金」と「高年齢求職者給付金」の併給が可能
65歳を迎えると、失業保険は「基本手当」ではなく、「高年齢求職者給付金(原則一括支給)」に切り替わります。この給付金は、老齢年金と同時に受け取っても減額されることはありません。
■ポイント4:65歳以降に再就職する場合の「高年齢雇用継続給付」と年金の支給停止
65歳以降に再就職し、雇用保険に再加入すると、「高年齢雇用継続給付」の対象になる可能性があります(賃金が60歳時の75%未満の場合)。退職後1年以内であれば、以前の雇用保険期間と通算して、別の勤務先でも受給可能です。
ただし注意点として、失業保険を受けると継続給付は受けられないため、再就職の可能性や収入見通しに応じて、どちらを選ぶかを見極めることが重要です。
また、再就職後は在職老齢年金の支給停止対象となり、継続給付の受給によって停止額がさらに増える場合もあるため、年金との関係にも注意が必要です。
制度の重なりを整理し、自分に合った選択を
ふぅさんのように、複数の制度の狭間で選択を迫られる方にとっては、それぞれの制度の役割やタイミングを整理することが大切です。「何を受け取るか」だけでなく、「いつ・どう受け取るか」「何を優先するか」を見極めることで、自分に合った選択肢が見えてきます。
一人暮らしで働き続ける必要がある場合、制度の選択は暮らしに直結します。不安を減らすためにも、制度の重なりを見渡し、無理のない選び方を心掛けましょう。
詳細や手続きのタイミングは、年金事務所やハローワークで事前に確認しておくと安心です。
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