男のこだわりグッズ

ゼブラの人気商品「マイルドライナー」に“香り付き”が限定登場!「大人向けマーカーペン」の開発秘話

ゼブラの「マイルドライナー」は、マーカーペンの色をマイルドにすることで見やすくしようという発想から2009年に誕生。その後さまざまな色展開をしてロングセラーとなっていますが、今回、そこに香り付きのインクを搭載したモデルが登場。その開発の背景を伺いました。

納富 廉邦

納富 廉邦

男のこだわりグッズ ガイド

「おとなのOFF」「日経トレンディ」「グッとくる文房具」「GetNavi」「夕刊フジ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな媒体で、文具などのグッズ選びや、いまおすすめのモノについて執筆。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方をお伝えします。

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マイルドライナーフレグランス商品写真

ゼブラ「マイルドライナー フレグランスシリーズ」1本198円(税込)、6色セット1188円(税込)。色と香りの組み合わせは、写真上から、「マイルドダスティピンク/フラワーブーケの香り」「マイルドベージュ/ウッドの香り」「マイルドクールグレー/ホワイトブルームの香り」「マイルドシャーベットイエロー/シトラスの香り」「マイルドオリーブ/グリーンの香り」「マイルドソーダブルー/コットンの香り」

ゼブラの「マイルドライナー フレグランスシリーズ」は、2009年の発売以来のロングセラー商品「マイルドライナー」初の、香り付きインクを搭載した限定モデルです。香り付きのインクを搭載したボールペンは、かなり古くからあって、それこそ1980年代くらいに一度軽く流行したのですが、マーカーペンのインクに香りを付けた製品は、かなり珍しいのです。

それは、香り成分が基本的に揮発性で、水性インクだと香りが消えやすいという事情もあったのでしょうし、マーカーペンが、学習などの用途で使われることが多かったということもあったと思われます。

このところマーカーペンの使用シーンに広がりが

マイルドライナー40色

マイルドライナーの定番色は、現在40色。まだ世間に白軸のペンが浸透する前から、シンプルな白軸を採用し、大人の女性にアピールするなど、発売当初から先進性の高いマーカーペンだった

「もともと『マイルドライナー』が発売された2009年頃は、マーカーペンはまだ事務用の筆記具として書類の強調したい部分に引いたり、学生が大事なところに線を引くという使われ方が主流でした。その中で、目がチカチカしないものをという、他製品との差別化で生まれてきたのが『マイルドライナー』でした」と、「マイルドライナー フレグランスシリーズ」の開発を担当されたゼブラのプロダクト&マーケティング本部、島田留依さん。

ところが、このところ、マーカーペンの使われ方も広がりが出てきたのだそうです。

「もっと個人的な用途、例えば手帳の装飾だったり、ノートをちょっとかわいくするとか、見やすくしたいとか、そういう使い方をする人がとても多いんです。テンションを上げるためなど、情緒的な使い方に変わってきていると思います」と島田さん。

そういう使われ方の変化の中で、社会人向きに何か面白いアイデアはないかと出てきたのが、「香り付きのインク」だったといいます。

水性のマーカーペンに淡い香りを付けるという発想

軸のデザイン

従来のマイルドライナーのデザインを損なわないように、最小限の意匠の追加で、香り付きをアピールしたさりげない軸のデザインにも注目

「マイルドライナーはずっと“色”を大事にしているシリーズで、アイテム追加などの展開をしているのですが、それとはまた少し違った形で楽しんでもらえるようなものを作りたいと思って。ゼブラには、香り付きインクを作ってきた歴史があることもあって、『マイルドライナーのインクに香りが付けられますか?』とインクの担当部署に聞いてみたら、できるということで企画を考えたんです」と島田さん。

水性インクに香りを付けるのは、技術的にはかなり難しかったそうですが、そこがクリアできたのは、ずっと香り付きのインクを扱ってきたメーカーならではなのでしょう。
筆跡の写真

色はこんな感じ。香りがお伝えできないのが残念

製品のラインアップは、「マイルドダスティピンク/フラワーブーケの香り」「マイルドベージュ/ウッドの香り」「マイルドクールグレー/ホワイトブルームの香り」「マイルドシャーベットイエロー/シトラスの香り」「マイルドオリーブ/グリーンの香り」「マイルドソーダブルー/コットンの香り」の6種類。

色は、マイルドライナーで人気の6色を選択。淡い色の微妙な色調が人気の製品なので、色を損なわない香りを選定していったそうです。

とにかく、たくさんの香料サンプルを嗅ぎ続けることで香りを決めていく

島田留依さん

「マイルドライナー フレグランスシリーズ」の企画・開発を担当されたゼブラの島田留依さん

「巷(ちまた)の香水サンプルをたくさん集めてきて嗅ぎ比べたり、他部署の女性社員の皆さんに、『今使っている香水は何ですか?』と聞いてそれを持ってきてもらったりするなど、実地調査を行うように流行りの香りを探り続け、どの匂いにするか決めていったんです。私は香りについての知見がなかったので、とにかく実際にいろいろ嗅ぎながら、色に合う香りを模索しました。例えば『フラワーブーケの香り』は、お花の香りなのですが、嗅いでみてダスティピンクぽいと想像したりなど、香りとイメージのつながりも重要視しながら進めていきました」と島田さん。

とにかく、基準のない世界だけに、部署内で話し合うにしても、最終的には島田さんの感覚勝負になる。また、いろいろな人の意見を聞いているうちに、花の香りやグリーンの香りといった、植物系の香りが人気のようだと気が付いたそうです。

「香水売り場でもお花や植物の香りが前面に出ていることがかなり多くて、今の流行りはこんな感じなのだなと気付きました」と島田さん。

今回、フラワーブーケの香り、ウッドの香り、ホワイトブルームの香り、グリーンの香りの4種類が植物系の香りなのは、調査結果と流行を取り入れた結果なのでしょう。実際、植物系の香り同士だと、合わせて使ったときに香りが混ざっても気にならないどころか、心地よさが増すような気がしました。特に、個人的には、ウッドの香りとフラワーブーケの香りが重なる感じが好きです。

「使用シーンとしては、就寝前に手帳に一日のことを書いて、そこに線を引いたりして、今日も疲れたな、いい香りだな、いい色だななどと思って、手帳を閉じて寝る、といった社会人を想像していました。なので、きつい匂いになりすぎないような濃度に調整するなどして製品開発を進めていました。そういう意味では結果的に、ルームフレグランス的な、暗がりの部屋をイメージできるような香りになったのかな」と島田さん。

目に優しいマイルドライナーだからこそ、香りの濃度には気を使って調整

島田さんの試し書き

開発中に島田さんが書いていた試し書きの一部。さまざまなシチュエーションを想定して試されていたことが分かる

このペンの魅力は、普段使いもできる絶妙な香りの濃度だと思うのですが、そのあたりは、島田さんもとても気を付けて調整していました。

「インクの中に香料を混ぜているのですが、その香料を数%単位で刻んだサンプルをたくさん研究部に作ってもらい、それを私が嗅いだり、書いたり。もしも試してみて香りが強いと感じたら、もう少し和らげてもらったりといったやりとりを何度もやって、この6色に行き着いたんです」

6色合わせて使ったときに不快な匂いにならないよう、社内のスタッフや他部署の人などにも試してもらって、香りの濃さを決めていったそうです。香りを重ねる使い方も面白いと思ったのですが、そこは、そもそも筆記具であるということで、あまり意識しなかったとのことでした。
什器

香り付きの製品だということが分かりやすいように什器(じゅうき)も工夫。試し書きの用紙が、香水のサンプルのようなデザインになっていたりも

筆者が気になったのは、開発中、いろいろな香りを嗅ぎ比べる際に、嗅覚をリセットする方法でした。伺うと、「コーヒーを飲むと、リセットされるんです」と島田さん。香水売り場などでは、コーヒー豆の香りでリセットすることが一般的だそうで、それをまねしたのだそうです。「コーヒー好きなので、これ幸いと、豆を嗅ぐのではなく、コーヒーを飲んでいました」と笑っていました。

実際に使ってみると、その色味に合った淡い香りが、ほんの少し香る感じが心地よく、装飾的に使う場合だけでなく、昔流行した、香り付きの便せんではありませんが、メモなどを渡すときに、内容を強調すると同時に、少しいい香りがするというのはいいなと思いました。

ただ、マイルドライナー自体がシンプルなデザインの軸で、それを損なわないように、「マイルドライナー フレグランスシリーズ」も、少しだけ軸に要素を足しているだけなので、これが「香り付き」だと伝わりにくいかもしれないことを、島田さんも心配されていました。確かに、大人向けマーカーペンのインクに香りが付いているのは珍しいため、店頭では気が付きにくいかもしれません。6色セットのパッケージが、フレグランス製品のような紙のパッケージになっているのは、そのあたりを考えてのことなのでしょう。

冒険的な製品ということもあり、今回は、限定商品という形での販売です。結構たくさん作ったということでしたが、なるべく早めにゲットすることをおすすめします。ペン先をくんくんするだけでも、なかなか心地よかったりします。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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