Q:特別支給の老齢厚生年金って、60歳から前倒しで受け取る年金と同じですか?
「今年(2025年)の4月で59歳になった男性です。記事で『特別支給の老齢厚生年金』について知りました。これは、いわゆる『60歳から前倒しで受け取れる年金』と同じものなのでしょうか? 名前が似ていて混乱してしまいまして……教えていただけたら助かります」(まーかすさん)
特別支給の老齢厚生と、60歳から前倒しでもらえる年金は違うもの?(画像出典:PIXTA)
A:「特別支給の老齢厚生年金」と「60歳から前倒しで受け取る年金」は別の制度です
質問者「まーかす」さんの疑問はごもっともで、2つの制度は似たような言葉が使われるため混同しやすいですが、まったく別の制度です。それぞれの制度の違いを以下に分かりやすく整理します。
■特別支給の老齢厚生年金とは
この制度は、年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられたことに伴い、段階的に支給年齢を引き上げる過渡期の措置として設けられたものです。一定の生年月日の人に限って、60~64歳の間に年金を受け取れる制度です。
■特別支給の老齢厚生年金の対象になる人の条件
- 男性:昭和36年4月1日以前生まれ
- 女性:昭和41年4月1日以前生まれ
- 厚生年金に1年以上加入している
- 老齢基礎年金の受給資格がある
- 生年月日や性別に応じた受給開始年齢に達している
まーかすさんの場合は、昭和41年4月以降生まれの男性でいらっしゃるため、この制度の対象外となります。つまり、「特別支給の老齢厚生年金」は受けられず、老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)の受給は原則として65歳からとなります。
「60歳から前倒しでもらえる年金」とは、繰り上げ受給のこと
一方、「60歳から前倒しで年金を受け取れる制度」として知られるのは、老齢年金の「繰り上げ受給」のことを指します。これは、原則65歳から支給される老齢基礎年金と老齢厚生年金を、60歳から自分の希望で早めてもらえる制度です。希望すれば誰でも選択できますが、いくつか重要な注意点があります。
■繰り上げ受給の注意点
- 1カ月繰り上げるごとに0.4%ずつ年金額が減額される(※昭和37年4月1日以前の生まれの方は0.5%)
- 減額は一生涯続く。例:60歳で繰り上げた場合→約24%減額され続ける
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げが必要(片方だけの繰り上げは不可)
- 一度繰り上げを選択すると、取り消しや変更はできない
このように、繰り上げ受給にはメリットだけでなく、一生にわたる影響があるデメリットもあります。
まーかすさんの場合、特別支給の老齢厚生年金は年齢的に該当しない制度のため、年金の受給は原則65歳からとなります。
ただし、早めに年金を受け取りたい場合は、「繰り上げ受給」を選ぶことも可能です。その場合は、一生涯減額された金額を受け取り続けることになるため、慎重な判断が求められます。
将来の受給見込額や、繰り上げによる年金額のシミュレーションは、「ねんきんネット」や最寄りの年金事務所で確認できますので、活用してみてください。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)