Q:今年63歳になる男です。年金はもらわないで70歳まで厚生年金に入って働きますが、繰り下げをすると増額しますか?
「今年63歳になる男です。年金はもらわないで70歳まで厚生年金に入って働くつもりですが、この場合繰り下げで増額しますか? 何割かは年金が増えると期待してるのですが」(Dさん)
年金をもらわず70歳まで厚生年金に加入して働くと、年金は繰り下げで増額しますか?(画像出典:PIXTA)
A:年金をもらわなくても、給与収入によっては、本来支給されるはずの年金が在職老齢年金制度によって支給停止される可能性があります。支給停止になった年金は繰り下げても増額しません
まず、相談者「D」さんは今年63歳、つまり1962年(昭和37年)生まれの男性になります。老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)が支給されるのは65歳からになります。65歳以降、老齢年金の年金請求をしなければ、年金は繰り下げになり、繰り下げすることで1カ月当たり0.7%年金が増額します。
ただし60歳以降、老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金含む)を受け取りながら、厚生年金に加入して働く場合は、「在職老齢年金制度」に注意が必要です。
老齢厚生年金の基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)と、総報酬月額相当額(毎月の給与収入と直近1年間の賞与の1/12を足したもの)の合計が、支給停止の基準額である51万円(令和7年度)を超えると、老齢厚生年金や特別支給の老齢厚生年金の受給額の一部もしくは全額が支給停止になります。
相談者は老齢年金をもらわないで(繰り下げして)厚生年金に加入するとのことですが、繰り下げしている期間の老齢厚生年金も在職老齢年金制度の対象になります。
つまり、実際に老齢厚生年金を受け取っていない場合でも、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円を超えてしまうと、老齢厚生年金が支給停止されることになります。支給停止された老齢厚生年金は、繰り下げによる増額はされません。
一方で老齢基礎年金は在職老齢年金の対象ではありませんので、繰り下げをすれば増額の対象になります。
「何割かは年金が増える」と書かれていますが、年金が増額するかどうかは、最寄りの年金事務所で確認してみるといいでしょう。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)