箱根の観光・旅行

京町家リノベーションの匠による、箱根の新境地。期待の新旅館「Nazuna 箱根 宮ノ下」の全貌

京都の伝統的な町家をリノベーションし、よみがえらせてきた宿ブランド「Nazuna」が2025年5月、箱根にオープン。京町家の建築意匠や食文化×箱根の自然や名湯、食文化がどんな化学変化をもたらしたのか? 早速、体感してきました。

塩田 典子

塩田 典子

一人旅 ガイド

トラベルライターとして、旅行誌、女性誌、一般誌、web媒体、企業のPR誌にて取材・執筆を行う。多い時で月10日は旅の空の下。これまで訪れた土地は350カ所以上。近年は宿・ホテルの取材、各地の食材・料理取材を多く手がける。関心が高いのは、特産品を生かした料理やスイーツ、地酒、工芸品、温泉やスパなど。

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京都の伝統的な町家をリノベーション、よみがえらせてきた宿ブランド「Nazuna」は、京都市内中心部に4軒のスモールラグジュアリー旅館を展開。昨年筆者は「Nazuna 京都 東本願寺」に試泊、その魅力をお伝えしましたが、2025年5月ついに関東に初進出を果たしました。

場所は神奈川県箱根町宮ノ下。既存の宿は町家の歴史や建具を受け継ぎ、古都の街並みに溶け込む趣ある宿に再生されましたが、箱根の宿は土地の歴史も環境も全く異なるエリア。どんな宿が完成したのか? 期待を胸に試泊してきました。

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築100年超の京町家は、どうモダンによみがえったのか。匠の技が随所に残る「Nazuna 京都 東本願寺」
<目次>

京町家のリノベを手掛けた宿ブランドが「箱根」に作った宿とは?

「Nazuna 箱根 宮ノ下」は箱根登山鉄道宮ノ下駅から徒歩15分。国道1号宮ノ下交差点から約400m、国道138号から坂を登った高台に佇みます。企業の保養所、温泉旅館を経て、5月15日に開業しました。
アプローチ

箱根・早川から切り出した石も配されるアプローチ

飛び石を配したアプローチの周囲には箱根の早川から切り出された銘石と玉砂利が配され、京都の龍安寺垣が植栽を囲い、京都の寺院の石庭のような造り。かなたには箱根連山が映え、豊かな自然を肌で感じられます。
エントランス

床に石が埋め込まれたエントランス

アプローチから続いてエントランスにも玉砂利の中央に飛び石が埋め込まれた廊下が続き、まるで京都の路地に迷い込んだかのようで気分が高揚します。
箱根の主要道をモチーフにした装飾

フロント内の壁には箱根の主要道をモチーフにした装飾が

フロント内の壁を飾るのは、箱根の主要道(国道1・138号)をモチーフにしたアート。箱根山は三重の複式火山であり、土地へのリスペクトを込めて火の要素を取り入れたいと、金属の表面にバーナー加工を施したアートを製作、展示しているのだそう。
煎りたてのほうじ茶

ウェルカムドリンクでは、煎りたてのほうじ茶とわらび餅を用意

まずはウェルカムドリンクとスイーツをいただきながらチェックイン。食事処でスタッフ自ら、京都「矢野園」の煎茶・幸せ緑茶を炒り、お手製のほうじ茶を淹れてくれます。なんてぜいたくなんでしょう!
ほうじ茶とわらび餅

煎りたてのほうじ茶とわらび餅で一服

香ばしい香りに旅の疲れが抜けていきます。福岡「廣八堂」のわらび餅とともにいただきました。
フリードリンク&フード

食事処では17時までフリードリンク&フードのサービスが

17時まで食事処でフリードリンク&フードのサービスも。ソフトドリンクのほか、小田原みかんわいん、京都「佐々木酒造」の日本酒、スパークリングワインなどのアルコールも用意され、つい手が伸びます。小田原産の蒲鉾ピンチョス、温泉卵チップス、八ツ橋、京都のナッツと、フードも箱根と京都のいいものを。
小田原みかんワインと蒲鉾ピンチョス

小田原みかんワインと蒲鉾ピンチョスをいただく

こちらのコーナーでは13~17時に寄木細工体験も開催。寄木のピースを自由に組み合わせコースターなどを作ることができます(有料)。箱根旅の思い出作りが滞在中にできるので時間を有効に使えます。
寄木細工の製作体験も

自由な発想で寄木細工の小物製作に挑戦!(有料)

客室は7タイプ・9室。全室に趣の異なる露天風呂付き

宿泊したラグジュアリーツイン「松原」はひとり泊可能。ソファセットが配されたリビングルームとダブルベッドが2つ置かれた和室、広々とした洗面室とシャワーブースからなるゆとりの広さ。
ラグジュアリーツイン「松原」のリビングルーム

ラグジュアリーツイン「松原」のリビングルーム

ベッドの壁際にはアンティークの欄間と竹製の格子が設えてあり、雅な気分に浸れます。
ラグジュアリーツイン「松原」のベッドルーム

ラグジュアリーツイン「松原」のベッドルーム

そして極め付きは露天風呂。全室に天然温泉の露天風呂が付いています。箱根の早川から切り出された石組みの湯船には絶えず源泉が注がれています。石灯籠や金閣寺垣が古都の風情を醸し出し、目の前を覆う木々の緑に癒されます。
ラグジュアリーツイン「松原」の露天風呂

ラグジュアリーツイン「松原」の露天風呂

露天風呂にはブランコが付く遊び心も。足湯を楽しみながらお酒をいただくのもいいでしょう。木賀温泉からの引湯はアルカリ性単純温泉。柔らかな肌当たりで浴後は肌がツルツルに。湯船の横にはソファもあり湯上りに休むことも。モミジの木々が秋には真っ赤に色づき、冬には落葉樹の奥に山陵が浮かび、四季折々に異なる風景が目を楽しませてくれます。
冷蔵庫内のドリンクは全てフリードリンク

冷蔵庫内の日本酒、ビール、ワイン、ソフトドリンクなどは全てフリードリンク

冷蔵庫内はフリードリンク。地ビールや地酒、小田原みかんサイダーなど、箱根や小田原のご当地ドリンクを存分に楽しんで。

こちらのタイプのほか、4名まで宿泊可能なデラックスツイン「三条」、ひとり泊も可能なキング「四条」も見学させていただきました。
デラックスツイン「三条」の露天風呂

デラックスツイン「三条」の露天風呂は、広々サイズの檜造り

「三条」は檜造りのワイドな露天風呂の魅力もさることながら、京都の路地を思わせる廊下の設えもすてき。床に飛び石を配し、天井から華やかな提灯が下がり、客室にいながらに旅気分が味わえます。
デラックスツイン「三条」の廊下

デラックスツイン「三条」には、京都の路地に見立てた廊下も

和室には早川で採取した石を転がして描いたという掛け軸が掛かっています。
デラックスツイン「三条」の和室

デラックスツイン「三条」の茶室をモチーフにした和室

一方、キング「四条」はやや高い位置に檜造りの露天風呂を配し、緑の息吹が間近に感じられます。
キング「四条」の露天風呂

キング「四条」の露天風呂 

キング「四条」のベッドルームと露天風呂

キング「四条」のベッドルームと露天風呂

囲炉裏カウンターでいただく朝食で箱根と京都の美味を味わう

2食付きプランなら夕食に相州牛と箱根山麓豚を使用した出汁を用いたしゃぶしゃぶが提供されますが、今晩は外で済ませ翌朝食は囲炉裏での朝食をいただくことに。

カウンター奥の囲炉裏でスタッフが焼き立てを提供します。まずは湯葉、小田原「山安」の鯖のみそ煮、「鈴廣」の海のスフレ、小松菜のお浸し、麩饅頭がテーブルに並び、つや姫のご飯としじみのみそ汁が供されます。
朝食例

朝食例。小田原「山安」の鯖のみそ煮、湯葉、鈴廣の海のスフレ、麩饅頭

炭火焼のメインは肉か魚を選択。今回は相州牛のモモ肉に。朝からガッツリお肉もたまにはいいですね。表面を香ばしく焼き上げ、中はレア。一口サイズに切ってくれて食べやすいです。
南足柄産の相州牛もも肉の炭火焼

南足柄産の相州牛モモ肉を、好みの焼き加減で焼いてくれる

相州牛のモモ肉の炭火焼

相州牛のモモ肉を好みの焼き加減で炭火焼

食後には京都「利休園」の抹茶アイスと小田原「スズアコーヒー」のコーヒーで締めくくり。食事も箱根、小田原、京都の厳選食材がバランスよくチョイスされ、既存の箱根の宿にない個性の光る内容でした。

チェックアウトの11時まで部屋にこもって、心ゆくまで温泉を楽しみました。「Nazuna 京都 東本願寺」で体感した風雅な建築意匠やスタッフの気配り、京都の食材を使った料理に、箱根の自然や大地の恵み、名湯、箱根・小田原の食材がうまく融合し、居心地よく過ごせました。似ていないようでどこか似ている2つのエリアの親和性を強く感じました。

Nazuna 箱根 宮ノ下
・住所:神奈川県足柄下郡箱根町木賀1013-63
・電話番号:0460-83-3915
・アクセス:箱根登山鉄道宮ノ下駅から徒歩15分
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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