今回は、生活保護制度のこと、生活扶助が500円引き上げになった背景などを分かりやすく解説します。
生活保護制度とは?
生活保護とは、病気やケガ、失業、高齢などの理由で生活に困窮し、自分の力では生活を維持できない人を対象に、国が最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。日本国憲法第25条「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づき設けられています。
対象になるのは、例えば以下のような場合です。
・働くことが難しい高齢者や障害者
・失業や病気により収入が激減した人
・ひとり親家庭で収入が不足している人
・預貯金や不動産などの資産がなく、生活に困っている人
など
生活保護を受けるには、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することが前提となっています。それでも「自分の持っている資産・収入では生活できない」という状況である場合、原則として世帯単位で申請を行います。
生活保護の支援内容は?
生活保護には、状況に応じて次のような8つの扶助(支援)が用意されています。・生活扶助:食費・被服費・光熱費など日常生活に必要な費用を支給
・住宅扶助:定められた範囲内のアパートなどの家賃代を実費で支給
・医療扶助:医療費用を直接医療機関へ支払います(本人負担なし)
・介護扶助:介護費用を直接医療機関へ支払います(本人負担なし)
・教育扶助:定められた基準額の義務教育に必要な学費を支給
・出産扶助:定められた範囲内の出産費用を実費で支給
・葬祭扶助:定められた範囲内の葬祭費用を実費で支給
・生業扶助:定められた範囲内の就労に必要な技能の修得などにかかる費用を実費で支給
この中でも、生活の基本となる支援が「生活扶助」です。
今回引き上げの対象となる生活扶助とは?
「生活扶助」とは、日常生活に必要な費用(食費、光熱費、衣類費など)を賄うために支給されるものです。支給額は、年齢・世帯人数・地域ごとに細かく設定されています。2025年10月から、この生活扶助が「月額1500円」に引き上げられることになりました。これは、2024年度までの特例加算(1000円)に2025年度から2年間、さらに500円を上乗せとなります。
●引き上げの背景
今回、生活扶助の支給額が引き上げられる背景には、さまざまな要因があります。
まず、近年は食料品や光熱費などを中心に物価が大きく上昇しており、日常生活にかかるコストが高くなっています。さらに、賃金水準も上がりつつあることから、一般的な生活費そのものが増加している状況です。
こうした背景を踏まえ、暮らしにかかる負担を少しでも軽減し、生活保護受給者の実質的な生活水準を維持することを目的として、今回の引き上げが決定されたのです。
生活保護を受けるには?申請方法も紹介
生活保護を受けたい場合は、まず「お住まいの地域の福祉事務所」へ相談・申請が必要です。生活保護申請の流れは以下のとおりです。【生活保護申請の流れ】
・福祉事務所で生活相談
・申請書を提出
・職員が家庭訪問、資産・収入・扶養義務者の有無などを調査
生活保護の支給の可否が決定するまで、しばらくの期間がかかります。
生活保護の可否が決定するポイントは、「生活に困っている」ことを証明する必要がある点。また、資産がある人、家族から援助を受けられる人には支給が認められないこともあります。
参照:生活保護制度|厚生労働省
困ったときは、早めに相談を
生活保護制度は、全ての人に「最低限度の生活」を保障するための大切な制度です。今回の生活扶助引き上げも、困っている人が安心して生活できるようサポートを厚くするためのもの。
困ったときは、「相談すること」から始めましょう。1人で悩まず、早めに地域の福祉事務所に相談することが大切です。