山崎エマ監督が1年間にわたり公立小学校でカメラを回したドキュメンタリー映画『小学校 ~それは小さな社会~』は、韓国でも高く評価され第21回EBS国際ドキュメンタリー映画祭審査員特別賞を受賞している。韓国の人はこの作品のどのようなところが印象的だったのだろうか。そしてそれはなぜだろうか。韓国の学校文化を知ると、その答えが見つかるかもしれない。
韓国でも話題になったドキュメンタリー作品
韓国の友人が「ねえ、日本の小学校ってどこもああいう感じなの?」と尋ねてきた。山崎エマ監督の映画『小学校 ~それは小さな社会~』を鑑賞してのことだった。第97回アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた作品で、日本のある公立小学校に通う子どもたちと教師の1年間を記録したもの(ノミネートされたのは映画の短縮版『Instruments of a Beating Heart』)。韓国では、第21回EBS国際ドキュメンタリー映画祭審査員特別賞を受賞しており、現在EBS国際ドキュメンタリー映画専用サイトにて視聴できる(有料)。その友人は、「すごく日本的な繊細さを感じた」と述べながら、そこで見た日本の小学校の様子と、彼女が持つ日本人のイメージがぴったりリンクしたと話してくれた。
彼女にとって特に印象的だったのは、何度も練習を繰り返して皆で完成させる行事の在り方、そして毎日の教室の掃除だったという。韓国の学校ではあまり行われない事柄であるだけに新鮮に感じたようだ。
筆者もEBS媒体で公開されてすぐ視聴しており、彼女が特に印象深かったと語った場面は、同じように胸打たれた。小学生のとき、筆者も毎日、毎年繰り返してきたこと。けれど、大人になって海外で暮らす者の視点で改めて日本の小学校を見つめたとき、新しい発見と感動を持って胸に迫ってくるものがあったのだ。
一緒に見ていたわが家の子どもたちは、日韓両方の学校に通った経験があることから、「そうそう、日本の学校ではこうなの。ここは韓国と全然違うんだよね」などと、時に懐かしそうに、それぞれの国での学校生活の違いを話してくれたりもした。子どもたちの視点を通して再発見できたことも多い。
日本の学校と韓国の学校は似ているのか
さて、冒頭で登場した韓国の友人が、筆者に日本のことを尋ねるように、日本の友人からは韓国の学校について聞かれることがある。そもそも韓国は日本による統治期があったため、教育制度や学校の在り方にもそのことが大きな影響を及ぼした。そのため現代でも日韓の小学校では似通った部分が少なくない。6-3制や、履修科目などの基本的な制度だけでなく、集団としての風紀・秩序を重視する点などにおいても共通点は多い。時代の変化とともに、個人を尊重する風潮になってきた点も似ているかもしれない。しかし、当然多くの違いもある。
いずれの国でも、それぞれの理由と事情で現在の教育スタイルが採用されているわけであるから、優劣をつけるものではないことを述べたうえで、韓国の学校の様子、特に日本とは異なる点をいくつか列記してみようと思う。お隣の学校の様子を知ることで、海外では当たり前ではない、日本ならではの文化や風習が自ずと見えてくるかもしれない。
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