Q. 安値を更新した銘柄があった場合、どのように“買い”と判断しますか?
「桐谷さんは、年初来安値を毎日確認されているとのことですが、安値を更新した銘柄があった場合、どのような基準で購入されますか?」(山田錦さん/35歳/会社員)A. 「配当と優待があって、総合利回りが4%程度あるというのが、一つの目安でしょうか」(桐谷さん)
毎日株価を確認しているわけではありませんが、投資歴41年の経験から言えるのは、“とにかく安いときに買うのがいい”ということです。ただし、いくら株価が安くても、会社四季報に「会社継続に重大な疑義あり」などと、記載があるような会社の株は避けます。そうではなく、普通に安くなった株であれば、買いの対象になります。とはいえ、たとえ安くても配当がなかったり、株主優待がない銘柄は、保有する楽しみがないので私は買いません。ですから、配当と優待の両方がある銘柄が、悪材料などで値下がりしたときに狙うようにしています。
それと、私がいつも心がけているのは、配当と優待を合わせた「総合利回りが4%以上あること」が、合格ライン(投資判断の基準)ということです。
普段の生活リズムとしては、大体お昼過ぎに起きて、大引け前に株価をチェックします。そのときに、私が利用しているネット証券では、その日に年初来安値を付けた銘柄の一覧が表示されます。それをざっと見て、保有していない優待株が年初来安値を更新していたら、総合利回りを確認して「これはいいな」と思えば買う、という感じですね。
もちろん、翌日に株価がさらに下がることもよくあります。というのも、株というのは下落に勢いがついていると、さらに下がりますし、逆に上昇している銘柄はもっと上がるという傾向があります。でも、もし翌日に下がったとしても、「私より前に買った人はもっと損しているから、まあいいや」と割り切るようにしています。
実際、底値で買うのは難しいですね。私の優待仲間には、業績を非常に重視する人がいます。業績が悪いから株価が下がっている、だからまだ買えないと言うんですね。でも、業績の悪さが気になってしまうと、なかなか手が出せないものです。
なので私は、業績はあまり見ません。株価が安いということは“バーゲン”と思って買うんです。結果的に1~2年後には「買ってよかった」と思うことが多いですね。
2024年8月5日の暴落時も、多くの人が慌てて売って、「明日はもっと下がるかも」と不安になっていました。でも私は、「前に買った人より安く買えるならいいじゃないか」と考えて決断し、18銘柄を購入しました。その中には、同じ銘柄を複数回購入したものもあります。
一時は、購入した全銘柄が含み益となっていましたが、その後調子が悪くなり、値下がりしてきたものもあります。ただ、私は中長期で保有するのが基本なので、あまり悲観していません。「安く買って、戻ったときに売ればよかったかな」と思う銘柄もありますが、今は資金的にも余裕があるので、あまり焦らないようにしています。
昔は本当にギリギリの資金でやっていて、信用取引も多用していました。下がると真っ青になっていましたが、今はそういうこともなく、ゆったり構えています。その方が結果的にいいようですね。
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教えてくれたのは……桐谷広人さん
1949年広島県出身。将棋棋士・投資家。日本テレビ系バラエティ番組『月曜から夜ふかし』に出演し、現金を使わない「株主優待生活」が話題になった。現在はテレビや講演会、雑誌などで幅広く活躍。『日経マネー』(日経BPマーケティング)、『ダイヤモンドZAi(ザイ)』(ダイヤモンド社)で連載中。
※紹介している内容は、2025年1月8日に収録した動画から、一部抜粋して編集したものになります。