最も変化が見られるのが夏号。玄人投資家は秋号に注目
渡部さん:「会社四季報」は、年間4回発行の季刊誌ですが、それぞれ特徴や注目ポイントが異なります。年4回の内訳は、新春号(12月)、春号(3月)、夏号(6月)、秋号(9月)です。それぞれ表紙の色が決まっていて、新春号は縁起のよい色とされる赤、春号は新緑の緑、夏号は海や空を表す青、秋号は紅葉のオレンジとなっています。そして、4冊の中でも最も大きな変化が見られるのが夏号です。日本の上場企業の約7割が3月もしくは2月に本決算を迎えますが、これらの決算が反映され、新しい期の業績予想やコメントが掲載されることになるからです。本来であれば、4冊とも読むべきだと思いますが、どれか1冊に絞るというのであれば、夏号がいいでしょう。
一方、玄人投資家に評価されているのが、3月期決算企業の第1四半期の決算が反映されている秋号(9月)です。競馬に例えるなら、第1四半期は第1コーナーを回ったところ。第1四半期ではまだ、決算説明会を行なっていない企業もあり、公になっている情報量が少ないシーズンです。そんな中で、会社四季報の記者は個別に全ての上場会社の取材を行なって記事を書いていますので、非常に価値が高いと評価されています。

四季報徹底読破を28年間続けている複眼経済塾・塾長の渡部清二さん
なかには、早くも「上振れ」という見出しが躍る企業もあります。「上振れ」は、通期業績が期初の予想を上回って着地しそうなケースで使われる見出しです。前述したように、第1四半期決算は競馬でいうところの第1コーナーですので、この時点でゴールである通期業績の上振れを予想するのは、よほどの自信の表れと言っていいでしょう。ちなみに、会社四季報の元編集長で、「伝説の編集長」と呼ばれる山本隆行氏は、この秋号に最も注目しているそうです。
一方、12月に発売される新春号ですが、この号では、今期に加えて、来期を見据えたコメントが掲載されることになります。株式市場は常に会社の将来性を反映して動きますので要注目です。3月に発売される春号は、数週間後に本決算が発表されることもあり、来期の数字に注目するといいでしょう。
(文:三枝 裕介/写真:佐坂 和也)
教えてくれたのは……渡部 清二さん(わたなべ・せいじ)
1967年生まれ。筑波大学卒業後、野村證券に入社。野村証券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。28年以上の継続中で、2024年12月発売の新春号をもって、計109冊を読破。2013年に野村証券を退社し、四季リサーチ株式会社を設立、代表取締役に。2016年に複眼経済観測所(現・複眼経済塾)を設立。「会社四季報オンライン」では、コラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一『四季報』を愛する男」と紹介された。
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