今回はクリニックを開業予定の医師が、どういった保険の戦略をもって備えていくべきか?ということを記載していきます。
勤務医は「開業資金」をどうするべき?
留学後即の開業や、医師免許を持ちながら別の職業(一般事業会社)などで仕事をして、突然開業するなどは珍しいため、開業予定の医師はどこかの病院等などの勤務医である確率が非常に高いといえます。勤務医で開業を見据えている場合、「開業資金をどうするか」という問題があります。それに対して「自己資金を貯めたほうが良いのかどうか?」という質問を必ずと言っていいほどいただきます。しかし私は基本的に「現状の経済状況においては、あまり開業資金としての自己資金は貯めなくていいと思います」とお話ししています。
最強の職業とも言われる医師が借り入れを起こすことは、非常に容易です。事実、投資用不動産業者がこぞって医師を狙いに行くのは、医師が銀行借り入れがしやすいからです。
現在は低金利の状況下ですから、クリニックの開業という事業利回り(IRR)が高い商売に対して、低金利で借り入れることは経済合理性としては非常に理にかなっています。簡単に言い換えると「できるだけ借りまくって開業しましょう」ということです。
現在は高くても金利3~4%以内で事業資金を借り入れ、その資金を使ってもっと高い利回りになる(20%以上にもなりうる)クリニックの開業を行うのですから、自己資金で開業をする必要はあまりないでしょう。
保険や資産運用をどう考える?
では、保険や資産運用その他をどうするべきでしょうか。開業を確実にしようと考えている場合、保険については借入額に対しての保障(もしお金を借りた後で医師の死亡など万が一のことが起きたら、遺族に借金が残ってしまう)を考える必要があります。銀行での借り入れなどでは団信がつくこともあるため、保険で用意しなくてもいい場合もあります。
しかし、リース会社からの借り入れや銀行で団信が付かない場合などは、開業前後で自ら保障を用意することが必須となります。中には借り入れの条件で、保険に加入し質権設定(借入金の担保)するように銀行から指示されることもあります。
また保障については、開業後も順調に推移して医療法人化したときのことを視野に入れて、考えたほうが良いでしょう。例えば、
- 法人で経費計上できる保険に変換していけるかどうか
- その際に保険期間の延長をして、退職金積み立てまで対応できる内容に切り替えられる保険会社かどうか
しかし、実際には個人保険しか扱ったことがない営業や、医師の保険に詳しくない営業から勧められた保険に加入して、医療法人化を見据えた段階で大幅な見直しが必要になるというケースも多く見られます。後悔しないように、保険会社や保険代理店の担当が医療業界のプロフェッショナルかどうかは、あらかじめしっかり見極めるべきかと思います。