離婚

過去最高を記録した「熟年離婚」に後悔の声も…専門家が指摘する3つのデメリットと回避方法

「熟年離婚」が統計史上過去最高を記録。熟年離婚に踏み切った男女の事例を交えながら、後悔する人も多い「3つのデメリット」と効果的な回避策を離婚カウンセラーの岡野あつこが解説します。

岡野 あつこ

執筆者:岡野 あつこ

離婚ガイド

熟年離婚に潜む、3つのデメリットとは? 離婚経験者からの声をもとに解説

熟年離婚に潜む、3つのデメリットとは? 離婚経験者からの声をもとに解説

「熟年離婚が過去最高の割合に」というニュースを耳にした人も多いのではないでしょうか。実際、厚生労働省の発表によれば、2022年に離婚した夫婦のうち一緒に住んでいた期間が20年以上になる熟年夫婦が離婚した割合は統計史上トップになっています。
<目次>

「熟年離婚」のメリット・デメリット

熟年離婚に踏み切った人たちからは、「長年の結婚生活のストレスから解放された」「ようやく自分らしく生きていけることに幸せを感じる」「独立した子どもたちにも新しい人生を応援されている」「大人ならではの恋愛を楽しみたい」などとポジティブな声も聞こえてきます。

その一方で、熟年離婚にはデメリットがあるのも事実。たとえば、「妻」「夫」「子ども」から見た熟年離婚のデメリットとして、次のようなケース(※筆者註:プライバシーに配慮し、実際の事例を一部変更・再構成)もあります。

事例1.「財産分与」の落とし穴にはまった妻(55歳)

「離婚したら夫から財産をもらえると思い込んでいたのに、いざ離婚をする段階になって、想像以上に少ない額しかもらえないことに愕然としました」と話すのはA子さん(55歳)。

A子さんが5歳年上の夫と結婚したのは21年前、ふたりに子どもはいません。

結婚して仕事を辞め、専業主婦となったA子さんが価値観の違いから「夫と別れたい」と真剣に考えるようになったのが数年前。そこからA子さんは近所の回転寿司店でパートをはじめ、「離婚後の生活費のために」コツコツと自分名義でお金を貯めていました。

「夫の定年退職の時期が迫り、私の貯金も目標金額に達したので」と熟年離婚の相談に訪れたAさんは、お金の話で大きな衝撃を受けたといいます。

「結婚後、夫の収入をやりくりして貯めたお金は夫婦の共有財産。離婚後、基本的に専業主婦の私も半分は財産分与としてもらえるはず。それとは別に、私が自分でパートをしながら稼いだお金も、夫婦の共有財産になるなんて知りませんでした。私の名義で貯金をしているにもかかわらず、夫にも半分を渡さなければならないなんて……」
現在、Aさんは財産分与や年金受給額、裁判費用を含め、離婚後の生活についてお金のことで詳細に計算しているところです。

「はたして熟年離婚することが、私にとって本当に得なことなのかをしっかり見極めたいと思います」

事例2.「離婚ぼっち」を後悔する夫(56歳)

「熟年離婚したら、もっと幸せな人生が待っていると思っていたのですが……」と肩を落とすのはB太さん(56歳)。

経営者として成功しているB太さんは、自分の浮気が原因で1年前に離婚。別れる際は、「奥さんと息子にはマンションと十分なお金を遺した」と羽振りのよさを見せていました。

ところが、熟年離婚の原因となった浮気相手の女性は「まさか本当に別れるとは思わなかった」と、B太さんをあっさり捨てて別の男性と結婚。あてがはずれたB太さんは現在もひとり暮らしだといいます。
 
「同じ世代の友人から『週末は夫婦でゴルフを楽しんでいる』『今年の夏休みは久しぶりに夫婦で海外旅行に行ってきた』と夫婦単位で生活を謳歌している話を聞くたびに、今さら離婚しなくてもよかったのかもしれないと思うときがあります。もちろん、自分が浮気をしたのが悪いのですが。もしもこの先病気になっても、このままだと誰も看病してくれる人がいない……」

ひとりぼっちの寂しさに焦ったB太さんは現在、マッチングアプリで再婚相手を探しているそうです。

事例3.「両親の熟年離婚」を嘆く娘(24歳)

「確かに、母には残りの人生を後悔しないように生きてほしいとは思ったけれど、ここまで面倒なことがあるとは想像していませんでした」と、ため息をつくのは半年前に両親が熟年離婚をしたC美さん(24歳)。

C美さんいわく「私が物心ついた頃から両親の夫婦関係は冷え込んでいました。父は完全にモラハラ夫。そんな父に母がずっと耐え続けてきたのは、私が独立するまでは頑張ろうという思いがあったのだと思います」。

「二度とあなたの顔は見たくない」と言って家を出ていったC美さんの母親は、今はC美さんの近所に犬を飼って心穏やかに暮らしているとのこと。C美さんの実家には、父親がひとりで住んでいるといいます。
 
現在のC美さんの悩みは、自身の結婚のことだと打ち明けます。

「近いうちに彼と結婚式を挙げたいのですが、母は『あの人が来るなら私は行かない』と父と参加することを断固拒否しています。父は、そんな母を説得するどころか『俺だって、あんな勝手な女と同席する気はない』と不参加の一点張り。たとえ離婚しても私にとっては大切な両親なので、結婚式にもふたりそろって出てほしいし、孫が生まれたら顔だって見せたいのに……」

C美さんは「もう少し時間をかけて両親にわかってもらえるまで話をしてみるつもりです」と前向きです。

「熟年離婚を回避」するために、今すぐできる2つのこと

熟年離婚を避けるためにおすすめしたいのは次の2つのことです。

①感謝とねぎらいを言葉で伝える
ひとつは、「パートナーに感謝とねぎらいの気持ちを言葉にしてきちんと伝えること」です。

これは一見、簡単なことのように思えますが、結婚生活が長くなるとついおろそかになりがちな習慣です。「食べた食器を洗う」「頼まれてもいない洗濯ものをたたむ」「傷んだ歯ブラシをとりかえておく」など日常生活の小さなことに対しても、ちゃんと「ありがとう」を言うこと。

そして、毎日「おつかれさま」とねぎらいの言葉をかけること。普段からパートナーがしてくれていることが当たり前にならないよう、照れずにきちんと伝えましょう。

②長年の貢献に対して誠意を見せる
もうひとつは、「財産の一部を先渡しして長年の貢献に対して誠意を見せること」です。

じつはこれは、こじれてしまった熟年夫婦のなかでも「何がなんでも離婚は回避したい」と思う夫におすすめの方法です。まとまったお金をもらった妻は「夫からお金をもらった」という事実以上に、「そのくらい、この人は私のことを評価してくれていたんだ」ととらえ、夫を見直すチャンスにつながるからです。

どちらの方法にも共通しているのは、「相手を思いやる気持ちを形にすること」です。熟年離婚を避けるためには、迷っているヒマはありません。今すぐ行動あるのみです!

<参考>
・「『熟年離婚』の割合が過去最高に 長寿社会、役職定年も背景に」(朝日新聞デジタル)
・「令和4年 人口動態統計(確定数)」(厚生労働省)
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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