看護師の年収を詳しく見ていきましょう
そういったなかで看護師の年収はどのような状況にあるのでしょうか。本記事では厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をもとに、看護師の平均年収を詳しく見ていきます。
※本記事の平均年収は、「賃金構造基本統計調査」における「きまって支給する現金給与額」×12カ月に「年間賞与その他特別給与額」を加算して算出しています。また、1万円以下の桁数は適宜四捨五入しています
女性看護師の平均年収は、女性の平均年収より圧倒的に高い!
初めに、看護師の平均年収を見てみましょう。看護師の平均年収
続いて、看護師の年収と「民営事業所の全体(以下、全体と称します)」の年収を比較してみましょう。
看護師と全体の年収比較
この表からもわかる通り、看護師と全体の年収はほとんど同じである一方、男性看護師の年収は男性全体より低く、女性看護師は女性全体より約100万円高いという結果となりました。女性看護師の年収が高い理由には、看護師の8割以上が正社員であることが関係しています。
正社員に限った場合の、全体の年収は男女計545万円、男性597万円、女性441万円となっています。これを見ても、女性看護師の年収(506万円)の高さが際立ちます。
看護師の年収は、20代で400万円超え
次に、年代別に看護師の年収と全体の年収を比べてみましょう。看護師と全体の年齢別年収
一方で、全体の年収は300万円台からスタートし、50代後半で600万円を超えてピークを迎えます。その後(おそらく定年退職となる人が多い)65歳以降に、再び300万円台まで下降します。
このことから看護師の年収は、20代~30代前半と60代以降で全体の年収よりも高いことがわかります。また、20代~70代を通して年収の上下幅が小さく、安定している印象があります。
看護師の年収は、直近7年間でどう推移している?
次に、平成29年~令和5年の看護師の年収と全体の年収の推移を見てみましょう。看護師と全体の年収の推移
令和4年から令和5年にかけての推移は横ばいだったものの、看護師の年収は全体を通して上がっているようです。
また、令和2年に全体の年収は下がっているのに対して、看護師の年収は上がっています。この要因としては、令和2年に発生した新型コロナウイルス感染症の流行が考えられます。「賃金構造基本統計調査」によれば令和2年に医師の年収も上がっているので、医療従事者全体の年収が上がったのだと推測できます。
令和3年からは、看護師の年収も全体の年収も共通して上がっています。
厚生労働省が発表している最低賃金(時給)の全国加重平均は令和2年度902円、令和3年度930円、令和4年度961円、令和5年度1004円、令和6年度1054円と上昇しています 。
社会全体として賃上げが行われており、それに伴っていずれの年収も上昇しているといえるでしょう。
最後に、看護師の労働者数の推移を見てみましょう。
看護師の労働者数推移
看護師の年収に続き、労働者数も令和2年に一段上昇し、22万人以上増えていることがわかります。
これもやはり新型コロナウイルス感染症の拡大が影響していると予測されます。コロナ禍で看護師の人員がひっ迫し、資格を持っているが看護の仕事に就いていない、いわゆる潜在看護師に対して復職の呼びかけや臨時の募集案内がありました。その結果が数字に表れていると考えられます。
看護師の年収は、ここ数年で上がっていることがわかりました。民営事業所の全体と比較すると、特に女性は看護師のほうが年収は高い水準にあるようです。看護師の労働者数も増えていますが、高齢化社会が進むと看護師の人員が不足するという予測もあります。看護師不足が深刻な状況になれば国民の生活にも影響があるでしょう。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)