Q:月20万円程度の年金を75歳まで繰り下げたら、いくらもらえますか?
「65歳から受給開始するはずの年金を75歳から受け取ったら、繰り下げでいくら増えますか? 私の年金は、厚生年金と国民年金あわせて月20万円程度です」(60歳・男性)年金の受け取りを10年繰り下げたらどうなる?
A:年金額は184%増えますので、月額36万8000円がもらえます
老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は本来、65歳から受け取れますが、65歳で請求せず、66歳以降最長75歳まで(昭和27年4月2日以降に生まれた人が対象※)に繰り下げて請求し、受け取りを開始することができます。繰り下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金のいずれかを一方だけを繰り下げることもできますし、同時に繰り下げることも選択できます。※昭和27年4月1日以前に生まれた人は70歳までしか繰り下げできません。
年金の受け取りを繰り下げると、繰り下げ月数に応じて1カ月あたり0.7%増額され、その増額率は生涯変わらず適用されます。
繰り下げた場合の増額率は、以下の計算式を使って計算します。
増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数)×0.007
今回は月額20万円の年金を受け取れる相談者が、65歳から75歳までの、10年間(120カ月)受給開始を遅らせると、どれくらい年金が増えるか計算してみます。
1カ月あたりプラス0.7%増えますので、120カ月遅らせると、120カ月×0.007=84%、増えることになります。
よって20万円の184%、つまり月額36万8000円の年金を一生涯受け取れます。老齢基礎年金、老齢厚生年金の、いずれかを一方だけを繰り下げることもできますし、同時に繰り下げることも選択できます。
ただし老齢厚生年金を繰り下げ受給する場合は注意が必要です。
たとえば、もし相談者の厚生年金加入期間が20年以上あり、65歳になったときに、65歳未満の配偶者(前年の収入が850万円未満など要件を満たしている場合)の生計を維持していると、本来であれば配偶者加給年金額が受け取れます。しかし、老齢厚生年金の繰り下げをしてしまうと、老齢厚生年金の繰り下げ期間中は、配偶者加給年金額は支給されません。
配偶者加給年金額は、年下の配偶者が65歳になり、配偶者自身の年金を受け取れるようになると、支給停止になります。老齢厚生年金の繰り下げをしている間に、配偶者が65歳になってしまうと、全く配偶者加給年金額をもらえないことにもなりかねません。
そうしないためには、老齢基礎年金のみを繰り下げて、65歳から老齢厚生年金は受け取れるようにするといいでしょう。この場合、65歳から老齢厚生年金と配偶者加給年金額を受け取ることもでき、老齢基礎年金を繰り下げ受給で増やすこともできます。
配偶者加給年金額は、特に配偶者との年齢差のある人はもらえる金額が多くなりますので、厚生年金の加入者で、老齢厚生年金の繰り下げを検討している場合は注意しましょう。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)