男のこだわりグッズ

思わず「WOW!」と驚くこと間違いなし。ぺんてるが7年かけて開発した新ボールペン「FLOATUNE」の秘密(2ページ目)

ぺんてるの「FLOATUNE」は、油性ボールペンなのにドバドバとインキが出て、滑るように書ける個性的なボールペンです。この新しい書き味を実現するために、専門の開発チームを作って完成には7年の月日がかかっています。その開発の経緯をお聞きしました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

「WOW!」を生んだ試作インキ「ヌル3」

アメリカの社員から「WOW」が発せられた瞬間

アメリカの社員が「ヌル3」を試しているときの写真。何度か行ったモニター調査の中で、本当に「WOW!」という言葉が実際に発せられたという。

さまざまな『WOW!』を探っていく中で、この通称「ヌル3」と呼ばれるインキの試作品ができて、それを試したアメリカ人が、本当に「WOW!」と言ったというのは、公式サイトなどでも書かれているエピソードです。

「でも、この『ヌル3』にたどりつくまでに、方向性自体も違うサンプルを多数作っています。とにかく、『書いた瞬間に皆さんが驚く』ということを大事にしていたので、ずっと『驚きって何だろう』というところを探していった感じなんです」と、インキの開発に携わった研究開発本部 技術研究所の山崎あかりさん。

「インキも水性、ゲル、油性を全部試作で作って、それぞれに油性っぽいチップや水性用のようなチップなどを全て組み合わせて、その結果、一番驚きがあったのが『ヌル3』という油性インキとゲル用のようなチップの組み合わせでした」と、チップの開発に携わった研究開発本部 開発部の太田直樹さん。

「ヌル3」という名前も、3番目に出来たという意味ではなく、何百という試作を重ねたうえで3番目に最終候補に残ったインキという意味だそうです。そして、外国人が本当に「WOW! WOW!」と言ったことで、この方向は間違っていないという地点にたどりつきました。
 

低粘度インキでたっぷりインキを出すことの困難

インク別、摩擦の大きさの実験

ボールベアリングに左から従来の油性インキ、低粘度油性インキ、FLOATUNEインキ模擬液体を塗って同時に回したところの写真。従来の油性インキが止まって、低粘度油性インキも止まりかけているが、FLOATUNEインキのものは書かれた文字が見えないくらいの勢いで回り続けている

「インキがドバドバ出るという方向が良さそうだというのは、『ヌル3』のころにはすでにつかんでいて、『ヌル3』はかなり粘度が低くて、実際の量産化仕様に比べると、インキが出る量も多かったんです。ただ、それだと使っていて、最初はいいのですが、書き続けているとインキがボールにうまく絡まなくなるといいますか、最後まで摩擦の少ない状態が持続しないんです。そこで、ボールの小口とボール部分の摩擦がインキを止めてしまうのではないかと思い、その間に入るものを考えていった結果、『クッション成分配合インキ』が生まれました」と山崎さん。

インキをたくさん出すための低粘度インキを実現するには、インキとボール部分をつなぐ成分が必要だということなのでしょう。

そして、当然ですが、クッション成分のような新しい成分を入れると、その分、粘度が上がってしまったりもします。また、低い粘度のインキを大量に流すと、従来のチップではインキの特性が引き出せずに、かえって書き味が悪くなってしまうということになります。
インクとチップの構造イメージ図

FLOATUNEのインキとチップの構造をイメージ化した図。チップに低粘度のインキをしっかりとまとわせるための工夫が重ねられてたどりついた構造だ

「結局、チップも新しいものを作ることになりました。なめらかさ、摩擦の少なさを維持するには、単に粘度が低いインキなら良いということはなくて、ボールとチップの間にあるインキの膜をいかに切れないようにするかというのが課題になっていました。『ヌル3』系列のインキは、クッション成分を使っても、この膜が切れやすい性質でしたから。

インキの膜が切れやすいと、全然、書き味が悪くなるんですよ。ある程度ドバドバとインキを出した状態で書くほうが良さが出るインキなんです。そういうことも、試作しては試して、また試作してを繰り返していて分かったことなんです」と太田さん。

>次ページ:インキ開発はアクセルを踏んで、チップ開発はブレーキを作る
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