Q. 安全性を維持しつつも、インフレに負けない投資方法はありますか?
「独身で定年まで5年を切った状況なので、今後の収入が先細りすると思うと不安が強いです。資産を残す必要もないので、大きなリスクを背負って投資するつもりはなく、比較的値動きが激しくない商品を中心に投資しています。ただ、最近の物価高騰を考えると、運用を見直すか悩んでいます。安全性を保ちつつ、インフレに負けない投資方法を教えていただきたいです」(たまごおじいさん/男性/56歳/正社員)<世帯年収>600万円
<家族構成>父(85)、母(78)
<金融資産>現金預金1000万円/リスク資産3000万円
低リスクで物価上昇に負けない運用方法とは
A. 「資産全体でどれくらいリターンがあれば、物価上昇をカバーできるかを考えてみてください」(深野さん)
預金とリスク資産の割合が1:3になっています。金融資産に占めるリスク資産の割合が75%を占めており、ご年齢を考えるとリスクが高いといえます。インフレに負けない投資を考える上で、物価の上昇率をどの程度にするかが、難しいところです。例えば、昨年の物価上昇率は3.2%でしたが、今年は3%を割るといわれています。ですので、ここでは考えやすいように、物価上昇率は2.5%になると仮定しましょう。
現在、ご相談者の資産は4000万円になります。このうち、リスク資産と現金の割合を5:5(2000万円ずつ)にして、一度考えてみましょう。半々くらいの割合にするほうが、過度にリスクを取らずに済みますので。
現金預金2000万円を定期預金や個人向け国債など債券でも運用し、0.5%の利回りが得られると仮定します。そして、リスク資産2000万円を4%の利回りで運用したとしましょう。そうすると、資産全体のリターンは2.25%になります。
【計算方法】
1. 各資産の利回りを計算
- 現預金:2000万円×0.005=10万円
- リスク資産:2000万円×0.04=80万円
- 10万円÷4000万円×100=0.25%
- 80万円÷4000万円×100=2%
- 0.25%+2%=2.25%
物価上昇率が2.5%の場合、資産全体のリターンが2.25%だと、物価上昇率をカバーすることはできません。つまり、物価上昇率を上回るには、資産全体で2.5~3%のリターンを目指すように運用する必要があるわけですね。
ですので、ご相談者の場合、安全性を保ちつつ物価上昇に負けない運用を考えるのであれば、安全資産(定期預金や個人向け資産)とリスク資産の割合を2:3くらいにすると良いのではないでしょうか。
安全資産でのリターンが高ければ、リスク資産の割合を減らせますので、リスクは軽減できます。もし、リスク資産に回す金額が多くなるようであれば、低リスクの運用をすればよいと思います。このように資産全体でリターンを計算し、資産運用を行なってみてください。
【動画】深野先生の他の相談もご視聴いただけます!ぜひ併せてご覧ください。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など