Q:一人暮らしの場合、月12万円の年金から天引きされるお金はいくら?
●今回は編集部が設定した以下のケースに専門家が回答します。「65歳で一人暮らし、月12万円の年金から天引きされるお金はいくら?」
月額12万円の年金から天引きされるお金はいくらぐらい?
A:国民健康保険料(約1640円)と介護保険料(4290円)の合計約5930円が、年金から天引きされます
老齢年金を受け取ると、次のような税金や社会保険料が年金から天引きされることになります。年額18万円以上の年金を受け取れる人が対象です。【1】所得税・復興特別所得税
【2】住民税
【3】国民健康保険料(75歳まで)
【4】後期高齢者医療保険料(75歳以降)
【5】介護保険料
今回は、75歳未満のケースで、いくら年金から天引きされるか考えます。この場合、【1】【2】【3】【5】が天引きされる可能性があります。それぞれ算出してみます。
【1】所得税・復興特別所得税
老齢年金受給額は、課税対象(所得税・復興特別所得税)になります。所得税額を計算する時には、公的年金等控除額を控除して算出することができます。
令和6年度の公的年金等控除額は、65歳未満が60万円、65歳以上が110万円です。その他に全員が一律で基礎控除(48万円)を受けることができます。65歳で月額12万円(年間144万円)の年金のみを受け取る場合の所得税の計算は、以下の通りです。
144万円-110万円(公的年金等控除額)-48万円(基礎控除)=▲14万円……課税所得金額は0円
そのため所得税はかかりません。
【2】住民税
日本国民が負担する住民税には、一律に負担する「均等割」と、その人の所得金額に応じて負担する「所得割」があります。住民税額は、住んでいる自治体により異なります。また、自治体ごとに、住民税が課税されない一定の基準が設けられています。
東京都新宿区を例とすると、令和6年度現在、単身者の場合、前年中の合計所得金額が45万円以下の人は住民税がかかりません。この45万円のことを住民税非課税限度額といいます。そのため、65歳以上で年金が月額12万円(年間144万円)の場合、公的年金等控除額が110万円適用されるため、住民税はかからないということになります。
144万円-110万円(公的年金等控除額)-45万円(住民税の非課税限度額)=▲11万円……課税所得金額は0円
【3】国民健康保険料
国民健康保険料も住んでいる自治体によって異なります。例としてですが、このケースの場合、新宿区の国民健康保険料は、基礎賦課額(医療分)と後期高齢者支援金等賦課額(支援金分)と介護納付金賦課額(介護分)があり、それぞれに均等割額と所得割額があります。これら全てを合わせて国民健康保険料としています。
新宿区ホームページで「令和6年度 国民健康保険料 概算早見表(給与/年金のみの場合)」を見ることができます。このケースでは144万円の年金収入のみですので、1カ月の国民健康保険料は5467円になります。
新宿区の均等割額には、世帯主と被保険者全員の、前年中の総所得金額が一定の基準以下を対象に、軽減措置が設けられています。
このケースでは一人暮らしで、前年も同じ総所得額と仮定すると、7割減(第1号減)の適用を受けることができます。均等割額が7割減になる条件は、43万円+(給与または年金所得者の合計数-1)×10万円です。
43万円+(1-1)×10万円=43万円
よって、均等割額=5467円×0.7≒3827円(月額)が免除となり、国民健康保険料は5467円-3827円=月額1640円、年額で約1万9680円になります。
国民健康保険料の月額:1640円……(※a)
【5】介護保険料
介護保険料も住んでいる自治体によって異なり、新宿区在住ですと、上記で計算したとおり住民税が非課税で、年金を月額12万円(年間144万円)受給しますので、新宿区が設定している保険料段階の第3段階『本人の課税年金収入金額とその他の合計所得金額を合わせて、120万円超』に該当します。したがって、計算式は以下のとおりです。
基準額の年額7万9200円×0.65=5万1480円(介護保険料の年額)
介護保険料の月額:4290円……(※b)
▼月12万円の年金から天引きされる金額は?
したがって新宿居住と仮定した場合、65歳以降、月額12万円の年金から天引きされるのは「国民健康保険料」と「介護保険料」となり、その金額は5930円となります。
国民健康保険料1640円(※a)+介護保険料4290円(※b)=5930円
今回の試算はあくまでも概算です。詳細は住んでいる自治体へ確認しましょう。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)