日韓家庭として韓国で暮らすということ
Aさんには男の子の保護者だからこその心配事がある。それは、韓国には徴兵制があり、成人男性には兵役義務があるということだ。子どもが韓国籍を有しており、一定期間韓国で暮らしていれば、満18歳になると徴兵検査の対象者となる。「長男は韓国の国籍離脱をしているので義務はありませんが、次男は韓国籍を残したまま。今後も韓国で暮らすと決めているのでいつかは兵役に行くことになります」
韓国社会では、兵役を遂行したか否かがその人の社会的評価に関わってくる。たとえ国際結婚家庭でも、兵役の問題は避けられない。
「親としてはそこは胸が痛いですね」とAさんは複雑な心境を教えてくれた。
ただ、「韓国で暮らす上で、いつも壁を作らないように生活しています」と話すのはBさん。韓国の友人たちを招いてたこ焼きパーティーを開いたりと、普段から現地の人たちと積極的に交流している。
「下の子を連れて公園に行ったりすると、そこでもいろいろな人が子どもを構ってくれます。心を開いて壁を作らないようにしています」
韓国は人と人の距離が良い意味で近い。特に小さな子どもに対しては、比較的寛容な社会といえそうだ。筆者も韓国で子育てをしながら、周囲の人たちに助けられてきた。
例えば電車ではよく子どもに席を譲ってもらったし、子どもが泣くと近くにいる乗客が一緒にあやしてくれた。通りすがりの学生が子どもに笑みを向けてくれることはよくあることだ。些細なことかもしれないが、子育てをする母親の立場としては子どもを取りまく温かい視線はありがたい。
また、子どもの教育という部分では、日本とは違う面も多くあり、その中から学ぶこともある。
1つ例を挙げると、韓国の保護者は子どもを褒めるべきシーンでは、それがたとえ人前であってもしっかりと褒める。 筆者は過度に謙遜してしまうきらいがあるので、そこは韓国の保護者たちを参考に改善しようと目下努力中である。
Bさんが話すように、韓国に限らず海外で子育てをする上で、「心を開いて壁を作らない」ように生活するかそうでないかで、暮らしや子育ての在り方も随分変わってくるはず。
AさんにもBさんにも共通するのは、 悩みや葛藤を抱えつつも、現地の文化を受け入れ、前向きに生活し子育てをしていることだ。子どもたちは、そんな両親の姿からも、きっと多くのことを学んでいるだろう。