男のこだわりグッズ

なぜ? 発売から49年、日本の大定番「キャンパスノート」が書き心地、丈夫さ、低価格を守り続ける理由(4ページ目)

発売から49年たった今でも、多くの人にとって標準的なノートとして愛用され続けているのが、コクヨのキャンパスノートです。その歴史についてはよく語られていますが、では、そのキャンパスノートとはどういうノートなのか。コクヨが考えるノートについて、キャンパスノートの開発、デザインの担当者に聞きました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

男のこだわりグッズガイド

最新型キャンパスノート「キャンパス フラットが気持ちいいノート」開発秘話

「キャンパス フラットが気持ちいいノート」はスマホで撮りやすい

「キャンパス フラットが気持ちいいノート」は、フラットに開くため、スマホなどで写真を撮ったときに、真ん中に影ができず、文字も見やすいのが特徴。普段使いの学習ノートが水平に開くのは、学習効率アップにもつながるのだ

「フラットに開くということを、表紙からでも分かってもらえるように、今回はデザイン面でもチャレンジしました。奥行き感が出るようにパースがかかったようにロゴを変形させています。ロゴのデザインを変えるのは長年やっていなかったので、かなり大きな挑戦となりました。ロゴだけでなく、デザイン全体を、平たく開いたノートを使っている人の側から見たというイメージでまとめています」と中村さん。

この「キャンパス フラットが気持ちいいノート」というのが、実は何気なくもすごい製品だと筆者は感じています。

平たくフラットに開くノートというだけなら、かなり前からコデックス装(背中の綴じ糸をそのまま見せる製本の方法)や糸かがり製本などの製本方法もありますし、無線とじのスタイルでも、いくつもの製品があります。

ただ、それらは、どれも、「特別なノート」として作られていて、それぞれに特長が違っていたりもします。

「キャンパス フラットが気持ちいいノート」は、そういった特別なノートではなく、「キャンパスノート」のブランドから出た、“普段使い用”のノートなのです。だから、キャンパスノートのポイントである、筆記具を選ばない紙と、丈夫さや耐久性を重視した製本、買いやすい価格で手に入れやすいという部分を、しっかり守って作られています。

初めて、このノートを使ったときに何より驚いたのは、その「普通のノートなのに、水平に開く」という点でした。

「耐久性を保ちつつ、フラットに開くというのが一番苦労したポイントでした。社内でも、耐久性について最後まで悩んで議論しました。最終的には、技術担当メンバーのあきらめない努力によって、使っていて紙が外れたり、ページがばらけたり、破れてしまったりということはなく、基準は満たしつつも最大限フラットに開く、というところが実現できました。このノートもキャンパスノートとして販売する以上、書きやすい紙、耐久性、低価格の3つは崩さないように気を付けています」と絵馬さん。
 

量産可能で、かつ1ページ目からフラットに開くことへのこだわり

1ページ目から水平に開く

このように「キャンパス フラットが気持ちいいノート」は1ページ目から水平に開くように作られている

さらに、このノートで驚くのは、表紙を開いた最初のページから平たく開くということ。無線とじに限らず、表紙があるタイプの製本の場合、表紙と最初のページは、他のページよりも糊を深く入れて、しっかりとくっつけることが耐久性に直接影響します。その1ページ目の糊が浅いのに十分な耐久性があるというのは、かなりの驚きでした。

1ページ目は右から始まるし、書きにくいこともあって、ノートは2ページ目から使い始めるという人も多いので、案外、このすごさは見過ごされているかもしれませんね。

「1ページ目は本当にこだわりのポイントなんです。耐久性を考えたら1ページ目はしっかり糊を入れて接着したいのですが、“フラット”と言っているのに1ページ目はふわっと膨らんでいたら、それはなんだかだまされたような気持ちになるのではないかと思って。

これを量産品で実現するのがとにかく大変でした。キャンパス以前に、フラットで開く『ペルパネプ』もありましたが、あちらは作業工程に手作業部分も含まれる製品なので、同じ方法では量産品にはできません」と絵馬さん。
「キャンパス フラットが気持ちいいノート」パック

パック販売が可能なのも、量産品で低価格だから。パック商品の場合は機能をきちんとパッケージで説明できるのが魅力

「キャンパス フラットが気持ちいいノート」は通常のキャンパスノートよりも20円高いです。しかし、従来のキャンパスノートの使い勝手はそのままに、1ページ目からフラットに開く機能を追加して、20円に収めたというのは、コクヨが大企業だからといった理由で片付けられるものではないと思うのです。

それは、表紙デザインやロゴを変えるなどして、苦労してでもユーザーに機能を伝えたい、という想いがあったということでしょう。

>次ページ:学生のニーズに寄り添う「スマートキャンパス」の思いと苦労
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