「金持ち喧嘩せずって本当? お金持ちほど平和主義者というデータはありますか?」
今回は、この質問にお答えします。
金持ち喧嘩せずって本当?
個人個人の話としては「人による」と中原は思います。とはいえ、全体的な傾向として「金持ち喧嘩せず」は事実なのでしょうか。これは中原も気になります。そこで本記事では、「金持ち喧嘩せず」が本当に正しいのか、政府が開示している資料から考えてみます。
喧嘩の最たる例が「裁判」です。裁判には2つの種類があります。
1つは刑事裁判です。刑事裁判は国が被疑者をさばくもので「有罪」か「無罪」か争います。もう1つは民事裁判です。民事裁判は個人同士で権利や義務の有無を争います。
質問者さんが気になっているのは「個人同士の争い」だと思います。
お金持ちの間でも裁判はあります。代表的なものが「相続争い」で、相続される遺産が増えるほどトラブルが増える可能性があります(争って取り分を増やせるなら、そうしたほうが経済合理的だからです)。
ほかにも、そもそも裁判にはお金がかかるため、お金持ちのほうが「裁判をするだけの余裕がある」特性があります。「喧嘩はお金持ちの特権で、金持ち喧嘩せずの逆が正しいんじゃないか?」と言われたら、それはそれで筋が通ります。
どっちが答えなのでしょうか?
以降では、お金持ちな人ほど「金持ち喧嘩せず」で民事訴訟に関わりにくいか? それとも「金持ち喧嘩せず」が事実誤認で、むしろ金持ちな人のほうが民事訴訟に関わりやすいか?で定量的に調べます。
借金が少なく、純資産が多い世帯が多い地域ほど、喧嘩が少ない?
まず、e-Stat(政府統計の総合窓口)から以下の資料を入手しました。・2019年度の「全国家計構造調査」で分かった純金融資産の世帯平均(都道府県別)
・2022年度の「社会・人口統計体系」データから分かった民事事件件数(都道府県別)
・2022年度の「社会・人口統計体系」データから分かった人口(都道府県別)
この3つの資料を元に、「世帯あたりの純金融資産が多い地域と、人口あたりの民事時事件数が多い地域に、相関があるか?」を調べました。
調べた結果は、次のグラフの通りです。
事前にお断りしておくと、この集計方法には大きな弱点があります。
このデータはあくまで「地域別のデータ」であって、実際に裁判を起こした、もしくは、起こされた人の金融純資産ではありません。裁判に参加している人が「その地域の平均的な世帯に属する人と似ている」ことを前提にしています。だから、この前提が間違っていた場合は、以下の結論も妥当性に欠けてしまいますので、ご注意ください。
この弱点に目をつぶったうえでグラフを見ると、わずかではありますが世帯あたり金融純資産と民事事件総数には負の相関があるように感じます。借金が少なく、純資産が多い世帯が多い地域ほど、喧嘩が少ないようです。
いちおうは「金持ち喧嘩せず」と言えるんじゃないでしょうか。