かかりつけの歯医者さんからの要望がヒントになった
「『Nothing』はとても気に入っていて、あまりカバンを持たない私ですが、どこに行くにも持ち歩いていたんです。それでかかりつけの歯医者さんにも持っていったら、そこの先生と、その息子さん、歯科助手さんまでとてもカバンを褒めてくださって。ただ、先生は女性で細身の方だからか、『これがもう少し小さくて縦型だったら良かったのに』とか『肩から提げられるといいなあ』といった要望を出されたんですね。そういうニーズもあると思った私は、すぐにトライオンさんに連絡して、『Nothing』の続きを作ることになりました」と秋田さんは、縦型トートの製作が始まった経緯を教えてくれました。 そうして出来た「Nothing トート縦型」は、A4サイズの書類が入る大きさだとは思えないほどにコンパクトに見えます。縦型なのに、身長が高くなくても普通に使えるサイズなのです。 「紙袋みたいなものをイメージしました。デパートのショッパーのようなものを、そのまま革にしたらというのは、当初から変わらないコンセプトです。ただ、よくある『まるで紙の袋みたいに見える』というのは狙っていませんでした。紙のピンと張った感じで、2枚の壁が立っているというイメージでスケッチを描いたんです」と秋田さん。確かに、紙バッグには見えないどころか、堂々たる革鞄です。ただ、革自体が薄いこともあって、軽快な印象を受けます。
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