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LINEの怪しいグループの正体は?「投資型詐欺」でカモにされる日本人

2024年の新NISAのスタートを控え、「貯蓄から投資へ」の流れが本格化しようとしています。このような状況下で、自分も何かしないと……という焦りや不安感が新たな投資系の詐欺被害につながっています。

執筆者:All About 編集部

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LINEの怪しいグループの正体は?

2024年の新NISAのスタートを控え、「貯蓄から投資へ」の流れが本格化しようとしています。このような状況下で、「自分も何かしないと……という焦りや不安感が新たな投資系の詐欺被害につながっている」と話すのは、NPO法人CHARMS代表理事の新川てるえさん(59)です。国際ロマンス詐欺の被害者支援に取り組む新川さんに、「投資型」と呼ばれる国際ロマンス詐欺の最近の手口や動向について聞きました。

「短期間」に「高額」をだまし取る傾向に変化

「日本人はなぜ投資しないの? 僕が投資の手法を教えようか」

40代の女性Aさんは、SNSを通じて知り合ったアジア系外国人の男性から、ある日、投資話を持ちかけられました。

男性は豪華なレストランで食事を取り、高級車を運転するなど、リッチな生活ぶりを写真付きでSNSに投稿していました。

Aさんは、男性から「投資をやっているから余裕のある生活ができるんだ」と聞かされ、まずは少額投資を勧められました。数万円を投資すると、その投資で儲けが出たかたちで引き出すことができました。

しかし、これが罠の始まりでした。お金を引き出せたことですっかり信用したAさんは、男性から「次はもっと大きいキャンペーンがあるから、大きい額を投資しないか?」と促されます。

取引に指定された投資サイトやアプリは、本物の金融機関のサイトのように巧妙に作られており、本当にお金が増えているように見えるので、Aさんは投資額を増やしていきました。そして投資額が数千万円まで増えたときに、お金を引き出そうとしても、引き出せなくなってしまったのです。

LINEの「投資の勉強会」はやっぱり詐欺?

上記は、「投資型」と呼ばれる国際ロマンス詐欺の新しい手口の一例です。CHARMS代表理事の新川さんによれば、「従来の国際ロマンス詐欺は、時間をかけて恋愛感情を引き出して金銭をだまし取るものだったが、短期間であっという間に高額をだまし取られる国際ロマンス詐欺が増えている」といいます。

被害相談が増える中、手口に加えて犯人像にも変化が起きています。以前は主犯がナイジェリアやガーナなどアフリカ圏にいるケースが多かったのですが、最近はアジア圏からのアプローチが増えています。アジア圏内で詐欺グループの拠点が広がっているからです。

先ほどのAさんのケースでは、サイトに記載されているカスタマーサービスの電話番号に問い合わせると、「巨額の税金や手数料などが必要だ」と言われることもあるそうです。しかし仮にこれらを支払ったとしても投資したお金は戻ってこないといいます。

最近では、「投資の勉強会」などと称したLINEグループに勝手に追加されてお金をだまし取られるケースもあります。新川さんは「リスクなく儲かる投資話なんてあり得ません。投資には必ずリスクが伴うということを理解しましょう」と警鐘を鳴らします。

被害額250万円……自らの経験から支援の道に

7年前から国際ロマンス詐欺の被害者支援に取り組む新川さんですが、実は自身も国際ロマンス詐欺の被害に遭った経験があるといいます。

きっかけは2015年、アメリカ軍でアフガニスタンに勤務するという男性とFacebookを通じて知り合ったことでした。英会話を学びたいという気軽な気持ちでやり取りするうちに「お金を貸してほしい」と言われ、いったんは断りました。

しかしその後、「シングルファーザーとして頑張っている彼の力になれれば」と思い送金してしまい、結果的に総額250万円を失ってしまったのです。当時、日本ではまだ国際ロマンス詐欺という言葉も普及しておらず、ネットの掲示板で被害者が自身の体験をレポートしている程度でした。

被害者の中にシングルマザーが多いということを知った新川さん。自身も当時シングルマザーだったことから、「同じ立場の方がこれ以上被害に遭わないよう注意喚起しよう」と思い、支援活動を始めたのでした。

被害の相談件数は右肩上がり

新川さんは、「国際ロマンス詐欺は昔からあるものの、ようやく相談ができるように社会が変わった」と話します。

新川さんが詐欺被害に遭った頃、被害者の多くは「警察に相談しても理解されないし報告しても無駄だ」と思い、泣き寝入りすることがほとんどだったといいます。

しかし、国際ロマンス詐欺がメディアで取り上げられるようになり、コロナ禍においてネット上で被害に関する報告も増え、「自分も被害に遭っている」と相談する人が増えてきました。

NPO法人 CHARMSを立ち上げた当初、国際ロマンス詐欺に関する被害の相談は月10件に満たなかったのが、徐々に増え、現在は月30件以上相談を受けている状況だといいます。

新川さんは「アジア圏からのアプローチが増えているように、最近は詐欺師の手口やストーリーが多様化しています。誰もがターゲットになる可能性がありますので、多様な手口の実態に注意を払っていただきたいと思います」と呼びかけています。

<取材・文/秋山志緒>

教えてくれたのは……新川 てるえさん
作家・コメンテーター・家族問題カウンセラー
1964年、東京都生まれ。10代でアイドルグループのメンバーとして芸能界にデビュー。離婚経験を生かし1997年12月にインターネット上でシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を主宰。2023年に国際ロマンス詐欺被害者支援のためのNPO法人CHARMSを設立、代表理事に就任。シングルマザーコメンテーター・家族問題カウンセラーとして雑誌、テレビなどに多数出演。著書に『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版)、『被害額4500万円! 国際ロマンス詐欺の卑劣な手口』(インプレス)などがある。

秋山 志緒
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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