本記事では「国家公務員給与等実態調査」をもとに国家公務員の年収を紹介します。
最新!国家公務員の平均年収
人事院の「国家公務員給与等実態調査」によると、2019年から2023年の国家公務員の平均給与月額は次のようになっています。 41万7000円台から41万2000円台へと多少の減少はありますが、月収はほとんど変わっていません。これは、国家公務員の給与は法令によって定められているためです。一般企業とは異なり、コロナ禍など社会情勢の給与への影響は小さく、収入は安定していると言えます。なお、総務省の「令和4年地方公務員給与の実態」によると、2022年度の地方公務員の平均給与月額は32万5991円であり、国家公務員の方が10万円ほど高いことになります。2022年の国家公務員(管理職を除く行政職職員)のボーナスは約123万6900円だったため、先ほどの月収の12カ月分と合計すると、2022年の平均年収は約619万3600円になります。
職種によって年収が違う?
国家公務員というと霞ヶ関に通い、省庁の職員として働く、いわゆる「官僚」のイメージが強いですが、実は、国家公務員には多種多様な職種があります。職種ごとに「俸給表」と呼ばれる給与を定めた表があり、それにしたがって全職員の給与が決められています。主な職種の平均年収を表にまとめました。 表の一番上の「一般行政職員」がいわゆる「官僚」にあたり、年収は約664万円です。その他、特許庁の審査官や航空管制官など、専門的な知識や技術を必要とする業務に携わる職員は、平均年収が少し上がり700万円台となっています。また、国の機関に所属する医師や、各府省のトップの役職である事務次官は年収が1000万円を突破します。従業員1000人以上の大手民間企業の部長職の平均年収が約1222万円(※)であることをふまえると、かなりの高額年収と言えるでしょう。※参考:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」、「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出
手当が手厚い点も国家公務員の特徴です。「行政職俸給表(一)」が適用される職員(一般行政職員)のうち、霞ヶ関で勤務している職員は27.8%で、約70%の職員が地方整備局や地方法務局など、各都道府県にある機関で働いています。そうした職員を対象に広域異動手当、特地勤務手当、寒冷地手当など幅広い手当が支給されています。
年収は年功序列で上がっていく?
公務員と言えば給料が年功序列で上がっていくイメージがありますが、国家公務員も同じくその傾向があります。 表は「行政職俸給表(一)」(一般行政職員)における年齢階層別、学歴別の平均給与月額をまとめたものです。当然ながら高校卒、大学卒、修士課程修了等と学歴が上がっていくにつれ、月収も上がっていきます。また、高校卒、大学卒、修士課程修了等いずれにおいても60歳まで徐々に月収が上がり続けているのがわかります。近年、民間企業においては年功序列による給与制度を改めようというトレンドがあり、成果を出せば若手のうちから給料が上がりやすくなっている一方、40代後半から50代にかけては頭打ちになりやすいと言われています。一方、国家公務員は各年代における給料の上昇幅は大きくありませんが、勤続年数が上がるにつれ給料も確実に上がっていき、その安定性が魅力とされています。
なお、国家公務員の定年年齢は2023年4月より段階的な引き上げが行われており、2031年に65歳となります。長く働けるようになる一方で役職定年制などの導入も行われ、60歳以降は給料が下がるようです。
民間企業の会社員や地方公務員と比較して、高く安定した年収を得られる国家公務員。しかし見方を変えれば、責任の大きな仕事に携わり、苦労が多いからこその高収入とも言えるかもしれません。安定したライフプランを描きつつ、国や人々のために働きたいという使命感を持った人に向いている職業でしょう。
(監修:酒井富士子/経済ジャーナリスト・オールアバウトマネーガイド)