1:バスは「乗ります!」アピールが必要
日本ではバス停の前で待ってさえいれば、下を向いていようが、友達とおしゃべりしていようが、バスは必ず止まってくれる。でも、韓国はそうはいかない。「私、乗ります!」という何らかのアクションをしないと素通りされてしまう。韓国のバス停は、1つの停留所に10本以上のバスが停車することは珍しくなく、次々と行き先の違うバスがやってくる。運転手も停留所で待っている誰が自分のバスに乗車するのか分からない。だから乗客は、タクシーを止めるときのように片手を挙げて合図したり、一歩前に進んだりして乗車の意思を見せなくてはならない。
また、複数のバスが同時に停まることがよくあるため、停留所の真ん前に目的のバスが止まるとは限らない。その場合は、「乗ります!」アピールをしながら、自分が乗車するバスが止まっているところまで走っていかなくてはならない。
今はこうやって乗ることに慣れっこになってしまい、すっかり現地レベルの技術を身に着けた筆者だが、韓国で暮らし始めて間もない頃は、バスに乗るのにいちいちドキドキしていた。停留所に近づくバスの番号を目を皿のようにして確認し、必死の形相で道に体を乗り出し、手を挙げてアピールした。それでも、アピール力が足りなかったのか、バスの運転手さんの目に留まらず素通りされた経験は数えきれない。韓国では停留所のベンチに座ってスマホなんぞに気を取られていたら、いつまで経ってもバスに乗れないのだ。
2:キッチンバサミが大活躍
調理用のハサミはもちろん日本でも使用されているけれど、ハサミで食材を切ることはあまり多くないのではなかろうか。でも、韓国ではあらゆる料理にハサミを使う。焼き肉店で肉を小さく切り分けるとき、冷麺を切るとき、パジョン(チヂミ)などを切り分けるとき、パンを切るときにも使用する。小さく切り分けて食べる食べ物が出される場合、テーブルには料理と共にキッチンバサミも運ばれてくる。レストランだけではなく、家庭の台所・食卓でも、調理や食事の際には日常的に使用するマストアイテムだ。また、店員がお客さんの前でハサミを使って料理を切り分けたりすることもあるが、これは別に失礼には当たらない。とにかく包丁よりも切りやすい場合はすぐにハサミが登場する。 筆者自身、食材は包丁で切るものと思い込んでいたため、韓国で暮らし始めるまで、調理でもキッチンバサミを使用することはあまりなかった。そのため、ハサミで食材を切ることに今でも若干の違和感は残っている。とはいっても、ハサミは便利だ。切り分けやすいし、包丁だと切りにくいものもきれいに素早く切れる。もうハサミなしで台所作業は不可能になったほど。
ちなみに、キッチンバサミと言っても、切る食材によって使用するタイプにはさまざまなものがあり、スーパーの台所用品のコーナーでは、多種多様なものが販売されている
3:あらゆることがデジタル化されていて合理的
韓国はあらゆることをデジタル化していて、この点非常に便利だ。公的証明書は自宅でパソコン、あるいはスマートフォンから手軽にダウンロードできるし、保険証を持参せずとも名前と生年月日を伝えれば病院の受付けは完了する。診察券を求める病院もない。どこかの機関で突然、家族関係証明書や、戸籍謄本などが必要になったとき、その場でネット照会をし、自分の証明書を表示することができるから便利だ。例えば、病院で過去にどんな予防接種をいつ受けたのか、次に受ける時期はいつなのか、病院側がデータを確認、提示してくれたりもする。こういったことが可能なのは、各人に住民登録番号(外国人は外国人登録番号)が付与されており、医療、金融などあらゆる分野のデータがこの番号に紐づけられているからだ。あらゆる機関での手続きが手軽、かつ迅速に行われるので、利用者としてはとても便利。日本人からすると、個人情報が広い範囲で紐づけられていることに不安や疑問を感じる人がいるかもしれないが、韓国ではこの点を気にする人はさほどいない。この住民登録番号のシステムが採用されていることで、社会が合理的に機能していることは確かだ。
また、韓国でも多くの飲食店、商業施設でポイント制が採用されているが、もはやポイントを積算してもらうためのポイントカードは存在しない。例えばカフェやレストランなら、カウンターに設置された機械に携帯電話の番号を入力することでポイントを貯められるし、書店や文具店などでは口頭で電話番号を告げるだけでポイントの照会から積算までしてもらえる。ポイントカードがないので、財布がいろいろな種類のカードでパンパンに膨らむこともない。
その他、懸賞やイベントの応募なども一般的にネットが利用されていて、ハガキに応募券を貼ったり、何か書類に記入して送付するということがない。 IT大国らしいシステムが浸透している。
4:何でも注文可能、そして最速で届く宅配物
インターネットで注文できないものはなく、しかもそれが非常に早く手元に届く韓国。その早さの基準たるや、かなりシビアだ。注文した翌日、翌々日には注文者の元に届くのが基本。だからショッピングモールは素早く商品を発送し、宅配業者はそれを可能な限りの早さで届ける。商品注文から受け取りまでに4~5日かかると、「宅配が遅い」という悪評価の対象となってしまうほどだ。 当日宅配をうたったショッピングモールも少なくなく、そのおかげで急きょ必要になった物があっても何とかできてしまう。 これまで筆者も、この素早い宅配システムのおかげで「なんとか間に合った! ホッ」っということが何度もあった。日々の生活に欠かせない食料品も、ネット注文して宅配してもらうというスタイルはすでに浸透している。大型スーパーは、独自の宅配サービスを展開しており、自社のホームページを通して、スーパーに並んでいるあらゆる商品をネット注文できるようにしている。また、ネット専門の生鮮食品モールも多くあり、早朝に届けてもらえるということで人気だ。
韓国のアパートや住宅街では、こうして配達された食材入りの大きな袋やボックスが置かれているのを見ることができる。筆者もここ数年、実際にスーパーに足を運ぶ回数は激減しており、食材の買い物は基本的にネット注文の宅配サービスを利用しているが、この便利さには日々感謝だ。
が、その便利さの裏では、宅配業者の過酷な労働環境が問題となっている。だからこの状況を単純に「便利で良い!」と消費者側からだけの感想を述べて終えることはできないのだけれど。
5:まるで弾丸、タクシーがとにかく速く走る
韓国は非常に速いスピードで走るタクシーが多い。都市部でも運転手は隙を見ては、追い越し、追い抜きしつつ、ぐんぐん進む。ちょっと広い道路に出ると、加速度はさらに増す。カーナビの速度規制を告げるランプが赤く点滅しながらピコンピコンと音を立てる。そんな状況に、乗客が「運転手さん、交通違反で捕まらないかしら」と心配になることも。済州島のように交通量の少ない広い道路となると、もはや爆走。日本から来た友人と一緒に済州島でタクシーを利用した際、そのスピードに友人は青ざめ、思わず座席上部にあるアシストグリップを握りしめていた。
昨日筆者が乗ったタクシーも、かなりのスピードで走行していて、後部座席に座りながらも、「ちょっとシートベルトを締めた方がいいかしら……」となったのだが、こんな具合でスピードを出すタクシーが非常に多く、このタクシーの弾丸並みのスピードぶりには、未だに緊張させられる。が、そのスピードのおかげで絶対に間に合わないと思っていたKTX(日本の新幹線に相当)の乗車時間に奇跡的に間に合ったこともあるが……。